《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》17話 無人の大都市

17話

そこは、魔天樓だった。

人は誰もいない。

無音が耳に痛い。

しかし、數え切れないほどの超高層ビルが立ち並んでいる、なんとも不気味な景。

(ほう……)

センは、アスファルトで舗裝された五車線の幅が広い道路を踏みしめる。

南へと、ゆっくり歩を進めながら、周囲を見渡し、

(第一アルファよりも進んだ文明……その無人都市……しだけ、そそるじゃねぇか)

間違いなく、車が走る事を想定して作られている道路。

だが、どこを見渡しても車は存在しない。

大都市という箱があるのみで、生命の気配は常にゼロ。

(……パソコン等もなし……)

センは浮遊の魔法を使い、空をフラフワと漂いながら、窓からビルの中を覗き込む。

ビル部には機やイスなどは置かれていたが、どこに視線を向けて見ても、電子端末などは一つも置かれていなかった。

(これほどの街を作るには、コンピュータによる超高速の演算処理が必要不可欠。そして、そこらに、かつては設置されていたであろう跡はいくつか散見している。あったはずだ。間違いなく。高度な文明が、『計算機』を生み出さない訳がない。電か魔かの違いならあっても、有か無の違いはありえない。だが、部品の一つも見當たらない。それ以外にも……ここが何であるかに繋がる報は一切見當たらない)

窓を割り、ビルの部に侵するセン。

テキトーに機や棚をあさり、報を集めようとする――が、

(何もねぇ……見事に何も……)

引き出しつきの機はあるのに、その中には、書類の一つもっておらず、本棚はあるのに書籍類は一冊もない。

(つまり、排除されたんだろうな……誰が? 何の目的で?)

センは、ビルの外に出て、テキトーに散策しながら、頭を働かせる。

(異常に発展した文明……しかし、完全なる無人……滅んだように見けられるが、しかし、どこも腐食していない。この領域一に保存の魔法がかかっているのだろう……誰もいなくなった街、報を丁寧に削除し、けれど、わざわざ『保存』と『遠視を阻害する高位の魔法』をかける。んー……見えねぇな……何がしたいのか、さっぱり分からねぇ……)

「主上様」

聲をかけられて、センは足をとめた。

アダムに視線を向けると、

「ここは……いったい、なんなのでしょうか……この風景は、なんといいますか、この世界の文明と……あまりにもかけ離れ過ぎていて――」

「そうか?」

「え?」

「確かに時代とは乖離しているが、本質の方は、それほどかけ離れているという訳でもないぞ」

「どういう事でしょうか。わたくしめには、サッパリ――」

「この街に立ち並ぶ建は大きく分けて二種類ある。『紫銀のエンブレム』が掲げられた超高層ビルと、エンブレムがない高層ビルだ」

言われてみて、注視してみると、確かに、その差が見けられた。

「なるほど、確かに……気付きませんでした。しかし、それがいったい?」

「ようするに、かつて、同じ歴史を辿った連中がいたって話だよ」

「……っ……なるほど……」

そこで、アダムは軽く首肯して、

「魔人と人間が、手を取り合い、発展した……しかし、相互の差別意識は、結局、消えなかった……」

「そう考えると、『戒め』として、ここを殘したって線も考えられるが……どうも、そうじゃないような気がするんだよなぁ……そうにしては、あまりにも綺麗に報が掃除されすぎている……執念すらじる、このイカれた徹底ぶり……もっと、明確で、切迫のある、『誰かに何かをさせたい』っていう強い意志をじる……メッセージだとは思うんだが……しかし、誰に対する、どんな……」

(わずかな報から、すでに、いくつもの仮説を導き出し、確かな答えへと近づかれている……流石は主)

そこで、センが、

「……ん?」

立ち止り、警戒の質を変えた。

「どうかなさいましたか?」

「くく……どうやら、無人じゃなかったらしいぜ」

「は?」

アダムは、センの視線の先を追ってみた。

そこには、一人のがいた。

気配はまったくじない。

よく見てみると、そのの周囲が、半徑五十メートルくらいのドーム狀の薄い明なに覆われている。

アダムは、心の中で、

(面妖な……)

と、つぶやく。

五つの道路がわる巨大なスクランブル差點のど真ん中で、宙に浮かんで眠っている二十臺前半くらいの

スリットが激しい純白のチャイナドレスを著た銀髪ツインテール。

健康的な褐だというのに、どこか病的な雰囲気を漂わせている。

スラリと手足が長く、腰も鉄棒みたいに細いのに、だけはか。

センは、

「くく……また、隨分な萌え豚ホイホイじゃねぇか。そんなに俺をブヒらせたいか?」

軽口をたたきながら、注意深く周囲に目を向ける。

(これも、俺一人なら、もうし、無遠慮に踏み込んでいく場面なんだが……ほんと、厄介だねぇ、荷を抱えるってのは)

この面倒くささにだけは飽きる事なく、いつだって新鮮に辟易してしまう。

センは、アダムの盾をしながら、慎重に、そのに近づいていく。

「眠れる無人都市のか……くく……殘念だったな。訪問者が、小綺麗な王子様じゃなくて。俺は、ただの無粋で木っ端なオシャレルーキー。かぼちゃパンツを履きこなし、白タイツで遊んじゃうほどの瀟灑な勇気は持ち合わせちゃいねぇ。……こんな俺でもよかったら、キスさせてもらうけど、どうするよ」

どんな対処でもとれる距離で、周囲を警戒しながら、中のない聲をかけてみた。

キスという単語を耳にしたアダムが、一瞬、目をクワっと開いて、センを見たが、そんなささいな事に構っていられる余裕はない。

センが、もう一度、口を開こうとした、その時、

「……驚いたわ……どうやってってきたの?」

そのは、気だるげに、半分だけ目をあけて、虛空を見つめながらそう言った。

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