《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》20話 第2形態

20話

靜かになって、二秒。

空白の時間が流れて、ユンドラは目を閉じた。

からからに渇いた口。

をひねりだして、に送ろうとするが失敗。

ざらざらとしたに降り注ぐ、形だけの日差し。

熱を持たない風が、無人の差點を駆けていく。

――センの問いかけに、ユンドラは答える。

「……もちろん、違う」

一度、息を整えてから、まっすぐに、センの目を見て、そう言った。

センは、驚きの表などは一切見せずに、続きを促す。

「さっきの第1形態なら、ワタシでも倒せた」

(ま、だろうな)

センは心の中でそうつぶやく。

このエリアに足を踏みれた瞬間から、彼の存在値は見えていた。

(ユンドラ・エルドラド。存在値1050……)

ありえない存在値を持つ者が、ここにもいた。

『いったい、どうなっているのか』と首をかしげながらも、センは平靜を裝った。

(アダムには劣るが、信じられないほどの凄まじい力……)

ユンドラ・エルドラドは、何もかもが異質。

ゆえに、センは思う。

(ユンドラが、さっきの駄犬に負ける訳がない。となると――)

「問題なのは――」

影がうごめいていた。

ユラユラと、無がカタチを作っていく。

金屬の裂け目みたいな歪みが空間に出現。

黃金の電流が走り、黒いが渦を巻く。

一瞬だけ、水を打ったように靜まり返ったが、その直後――

その奧から、『アレ』はやってきた。

渦の向こうから、這い出てくる。

人型に進化した、サイコウイング・ケルベロスゼロ・タナトス(決戦仕様)。

ドサっと地に落ちて、

「ブハァ……ハぁ、ハぁ……」

ゆっくりと、を起きあがらせる。

最初は生まれたての子馬のように震えていたが、ある瞬間にピタっと止まる。

サイケル(人型)は、妙な粘にまみれていた。

一度、全をチェックして、ブルブルっとをふるわし、粘を飛ばしてから、サイケルは、ギロっとアダムを睨みつける。

怒りにそまった表のサイケルは、宙に浮かんでいるアダムを指さして、

「……テキ……殺ス」

宣言した直後、サイケルの姿が消えた。

人の目ではとらえきれない速度でアダムとの距離をつめると、そのまま、アダムの顔面に拳を叩きこむ。

「――っ!」

ギリギリのところで回避するアダム。

しかし、避けたところへ、膝が飛んできた。

みぞおちに直撃。

がくの字に曲がった。

苦悶の表

醜い顔。

さらには、

ゴフっと吐きだしてしまった。

はしたない!!

アダムは、こめかみに青筋を浮かべて、

「ぐぅ……てめぇええ!! 主上様の前で、恥をかかせやがってぇえええええ!!」

歪んだ顔で吐という、主には絶対に見られたくない姿。

そのあまりの恥ずかしさから、聲が大きくなる。

「――【オーラドール】!!」

両手で複雑な印を結び、周囲に、五つの球を召喚する。

アダムによって召喚された五つの球は、

グニグニとうごめいて、次第に、人型へと変わっていく。

したのは、子供サイズのアダムが五人。

「オーダーッッ!! 五凰!!」

「「「「「あいあいさー」」」」」

命じられた五人の小アダム達は、背中に、輝くの翼を生やしてフワリと舞い上がると、統率されたフォーメーションで、サイケルに特攻をしかける。

――その様子を見ていたセンは、渋い表を浮かべて、

(アダムのやつ……相手がグーを出してんのに、後出しでチョキ出しやがった……ばかがぁ)

の小アダムは、高速飛行の中に転移をまじえながら、最短でサイケルに近づいていく――その途中、

「玄牢呪縛、ランク32!!」

全てが、サイケルによって生み出された『時空の狹間』で捕獲され、

「連繋機雷羅、ランク33!!」

「「「「「うきゃぁあああ!!」」」」」

「くぁあああ!!」

の小アダムが発すると、遠く離れていたアダムの右腕も同時に発して吹っ飛んだ。

が散り、片が飛ぶ。

「ぐぬぅ……私の腕を……く、くぅ……醜い……こんな無様な……こ、この、カスがぁ……」

腕を失ったアダムは、より怒りを発させて、

「――【修羅の彼方】!!」

右腕を回復魔法で止しながら、自己強化のF魔法を発させる。

アダムの全管がググっと浮かびあがり、白眼が黒く染まった。

「畜生風大しやがって……分を弁えさせてやる」

「ぐカ……殺ス、殺ス、殺ス」

アダムを迎え撃つ、ラリったように走った目のサイケル。

膨大な魔力とオーラをぶつけあう、みどろの殺し合い。

そんな二人の闘いを、冷めた目で見つめているユンドラがいた。

「無駄。彼は強いけれど、アレには勝てない」

ユンドラの悲観は的をていた。

アダムとサイケルの闘いを分析しおえたセンは、苦い顔で、

「……うーわ、笑えねぇ……あの犬、ガチで、アダムより強ぇじゃねぇか……いやいやいや」

頭をぽりぽりとかきながら、素で絶句していた。

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