《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第31話 〜世界最強〜
アメリアは、思いのほかよくいた。
王族だからてっきり悲鳴をあげて逃げうと思っていたのだが、俺はどうもアメリアをなめていたらしい。
「アメリア、そっちに三匹行ったぞ」
「ん。問題ない。『グラビティ』」
重力魔法で三匹をまとめて押しつぶした。
大きなネズミのような魔は三匹仲良くぐちゃっと潰れた。
グロい。
「味しくなさそうだったから」
「いや、別に怒ってないぞ」
俺の視線に、目を逸らして口を尖らせたアメリアは俺の一言で表が輝く。
相も変わらず分かりやすくて何よりだ。
「今、何階層くらい?」
「六十二だな。今日で七十は行きたいが、流石にキツイか」
「私とアキラなら行ける。最強コンビ」
どこからそんな自信が出てくるのやら。
俺は黙ってアメリアの頭をでた。
こうすると、アメリアは途端に機嫌が良くなる。
しだけ頬も赤くなるのだが、俺は自意識過剰ではないから勘違いはしない。
きっと、迷宮が暑いのだろう。
「さて、水分補給はしたか?」
「うん。……何でこまめに水をとるの?」
「水癥狀になったら困るからな。まあ、こんな迷宮の中は水癥狀よりは魔の方を警戒しないといけいが。気をつけとくに越したことはないだろう」
「だっすい……しょ?」
この世界に熱中癥の概念はないようだ。
醫療関係の技も進んでいないらしい。
「暑くて水を飲んでいない時、合が悪くなったりしないか?」
「……する」
「それが熱中癥って言うんだよ。下手したら死ぬぞ」
「暑い日に若いエルフ達が突然合が悪くなってそのまま死ぬことがあったけど、流行病じゃなくて、だっすいしょーじょーだったんだ」
納得してくれたようだ。
俺も一度、バイトが忙しくて水分補給を怠ったから熱中癥になりかけたからな。
あれはキツかった。
俺にベッタリだった妹はずっと泣きぶし、母に家事を全部させてしまったし。
あれから自分の調管理には人一倍こだわるようになったのだ。
「分かったらこまめに水を飲んどけ」
「分かった」
俺は暗を投げる。
遠くの曲がり角から顔を出した魔の額に命中した。
スキルレベルもプレイヤーレベルも順調に上がっている。
目標達するのが早いか、迷宮攻略が早いかだな。
「アキラのいた世界……と言うか、國?に似た國知ってる」
「へえ?俺達の前に召喚された勇者が國でも興したか?」
「そう。確か、人族のエルフ族領側にある國だった」
アメリアから聞くと、どうやら江戸時代位の日本がそのままあるような國が人族にあるらしい。
「國の名前は、〝大和〟(やまと)。アキラが食べたいって言ってたお米が主食の國」
「よし、迷宮から出たらそこに行こう」
「ん。アキラならそう言うと思った」
米食べたい。
パンもう嫌だ。
日本人は米と味噌でできているのだ。
俺は米がなければ生きていけない。
米ラブ。
ゲフンゲフン、めていた思いが発したようだ。
あぶないあぶない。
「人気の“おんせん”があるらしいから一緒に行こ?本當は男別らしいけど“こんよく”っていうのがある」
「アメリアさん、混浴の意味知ってて言ってるか?」
「一緒にでお湯に浸かること?」
「……」
いや、ダメでしょう。
フツメンの俺にはアメリア程のと混浴なんてハードルが高すぎる。
それに、周りの視線が辛い。
それに、この子、自分がエルフだということを忘れてないかな。
だが、アメリアは本當に楽しみにしているようだ。
「と、とりあえず保留で」
「迷宮を出るまでに答えを聞かせて」
「ぜ、善処する」
迷宮がずっと続けば良いのに。
そんな會話をしながらも、俺達は確実に魔を屠っている。
「……今まで、人族がたどり著いた迷宮の最下層は二十階層。しかもレイドを組んでだったから、アキラの戦闘力は人族の比じゃない」
突然何を言うのかと俺はアメリアの顔を見た。
アメリアは真剣な顔でこちらを見ている。
俺は、その真剣さに促されてクラスメイトにさえも言っていないことをアメリアに告げた。
「……何でかは分からないが、俺のステータスは明らかに勇者よりも強いんだよ」
アメリアは察していたのか、し頷いただけであまり反応を示さない。
そして、言いにくそうに重々しく口を開く。
「アキラ、四種族最強の魔族でさえ、一般人の基本攻撃力は九〇〇が限界。先代の魔王の攻撃力が一〇〇〇〇くらいだった。間違いなく、アキラはこの世界最強」
「……そうかもな。『世界眼』を使わなくても、俺がおかしいことくらい分かってるよ。それに、俺はある人との約束でレベルを一〇〇まで上げるために迷宮に潛っているんだ。外に出た時、間違いなく俺は歩く破壊神のようなものになるかもしれない」
「一〇〇まで上げたらどうなるの?」
「さあな。俺も正確には分からない。でも、俺のむことが起きるのは確かだと思う」
前の世界なら、きっと即殺許可が降りるだろう。
危険人として実験モルモットになるかもしれない。
すると、アメリアはぎゅっと俺の手を握った。
「世界がアキラを化けだって言っても、私はそばにいるよ」
「ありがとう」
しだけ、アメリアに救われた気がした。
そう言えば、前にこんな事があったな。
俺はアメリアの位置だが。
元気かな、京介きょうすけ。
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