《暗殺者である俺のステータスが勇者よりも明らかに強いのだが》第49話 〜強さ〜
機にもたれ掛かったまま、王はだるそうに欠をした。
本當に、さっきまでの迫した雰囲気はなんだったんだ・・・。
「さて、・・・説明しようかと思ったけど、そう言えば勝負まだだったよね?」
「え、ここでやるつもり?いや、それに今の流れで説明なしとかないわ。」
再び背筋をばしてキリッとした雰囲気を出す王。
全然ごまかせていない。
が、切り替わりの早さだけは無駄に凄かった。
「説明はしてあげよう。でも、アメリアの事をハッキリさせた後だ。・・・気になることもあるしね。君が勝ったらアメリアを君に任せる。けど、こちらが勝ったらアメリアは置いていってもらう。」
冷たい聲でそう言う父親に、アメリアはびくりとを震わせた。
俺は目を細める。
「で、相手は?」
「もちろんキリカだよ。アメリアがもう言っているかもしれないけど、キリカは冒険者ギルドランク金。この世界に數人しかいない最高ランクの冒険者だ。」
相手にとって不足はないだろう?
そう微笑む王に、俺はニヤリと笑った。
上等だ。
「勝負は五分後。先ほどの広場で待っているよ。怖気付いて來れないなら、アメリアを置いていくから伝言役として使ってくれ。」
やっぱり、この王には悪役が似合うのではないだろうか。
言うだけ言って颯爽とキリカと共に出ていく王の後ろ姿をみて、俺はそう思った。
五分後にしたのは俺に準備をさせないため。
そして、先に出て行ったのは自分たちが準備をするため。
先ほどの広場を指定したのは自分たちがよく知る場所だから。
勝負のことも、俺が警戒を解いた直後に言ったことから言うタイミングを図っていたことがわかる。
確かに、王としてのスキルは兼ね備えている。
が、相手の力量を見誤ったかもな。
「大丈夫、アキラなら勝てるよ。」
「ああ、なあアメリア。」
元気づけてくれるアメリアに、俺はふと言いたいことが出來た。
「何?」
「俺さ、結構アメリアの事好きかもしれない。いや好きだ。」
「・・・・・・・・・・・・??」
アメリアは混したのか、靜かに首を傾げる。
顔や耳、首元まで真っ赤になっているから完全に理解できていない訳ではないようだな。
好都合だ。
「アメリアは、俺の事好き?」
「はぅ・・・。アキラ、急にどうしたの?」
じっと目を見つめると、アメリアは心臓のあたりに手を當てて悶えた。
大丈夫か。
「いや、今言っとかないと、多分これから忙しくなるからな。」
そうは言っても俺自、何言ってんだ俺狀態である。
ただ、今言っておかないと次の機會がないような気がするのは気のせいではないと思う。
じっと待っていると、アメリアがやっと顔を上げた。
「わ、私も・・・す、好きだよ!」
「そっか。ありがとう、元気でた。」
別に照れるわけでもなく、おれはそう言った。
アメリアが俺のこと好きなんて分かっていたからな。
俺はどこかの乙ゲームのヒロインでもないし、鈍系主人公でもない。
よしよしと頭をでると、アメリアは更に顔を赤くする。
かわいいやつめ。
気合がったとこで、俺は手持ちの武を長テーブルの上に出した。
「暗が數本と迷宮で拾った縄、“夜刀神”、投擲用の小さな魔石か。それに影魔法と気配隠蔽を合わせてどう勝つかだよな。・・・まあ、なるようになるだろ。」
再び元の位置に収納して、俺はまだ顔が赤いアメリアと目を合わせた。
「アメリア、別に瞬殺してもいいんだろ?」
誰をとは言わなくてもきちんと分かっている。
「うん、ありがとう。」
「何が?」
「私のために爭ってくれて。」
そう言って、アメリアはふわりと笑った。
いつも真顔なため、たまに出てくるとてもレアな笑顔が眩しい。
こんな時なのに、「私のために爭わないで!!」と言うセリフが浮かんでくる。
よく似た言葉だが、意味合いは全然違った。
アメリアはそこら辺に転がっているヒロイン達よりはよっぽどかわいいし、格もいい。
俺のような顔面偏差値の低い男と並んでいると、更にアメリアは輝いて見えるだろう。
「どういたしまして。」
キラキラと輝くアメリアから頑張って視線を外し、俺達は広場に向かった。
「逃げずに來たことは褒めて差し上げましょうか?」
「いや、どうせなら勝ってアメリアに褒めてもらうからいい。」
広場には先程はなかった、一辺が五十メートル程の四角い臺があり、その周りには大勢のエルフが押しかけていた。
臺はきっと土魔法師が制作したのだろう。
完全に見世だ。
まあ、國王主催の決闘なんてそうそうないだろうからな。
アメリアを王の傍に促して、俺は一人臺に登る。
「ようやくお姉様に惚れていることを自覚いたしましたの?」
「いや、だいぶ前から気づいていたみたいだ。さっき告白したし、悔いはないな。」
「・・・それはそれは。本當にお姉様はされていますのね。お父様も意地を張らずにお姉様を可がって差し上げれば宜しいのに。」
キリカはそう言ってコロコロと笑い、腰に下げていた細の剣を抜いた。
レイピアくらい細いが、辛うじて剣の形に留まっている。
俺も“夜刀神”を抜いた。
刃を裏に返す。
それを見たキリカは目を細めた。
「殺すつもりはないと?甘いですわね。私は殺す気で行きますわよ?」
「それでいい。俺は殺すつもりなんてさらさらないからな。お前が死んだらアメリアが悲しむ。」
「正式な決闘の場で私わたくしを出さないでもらえますか。」
「それは悪い。が、何を言われようが俺はお前に刃を向けない。」
刃を裏に返したまま、俺は構えた。
キリカはただの見栄だろうと高を括り、の高さで剣を構えた。
突きを最短で放てる構えだが、突きがくるとも限らない。
俺たち二人は互いの事しか見ていなかった。
「では我が娘、アメリアをかけて國王の名においてここに、キリカ・ローズクォーツ、アキラ・オダの決闘を認める。どちらかが戦闘不能または臺から落ちる、降參を宣言するまで決闘は続行される。魔法の使用は今回は認めないことにしよう。スキルと自らの技のみの使用を認める。魔法を使ったと判斷された場合にはその時點で失格だ。」
そこで王はぐるりとあたりを見回した。
なるほど、審判は周りのエルフたちという訳か、
まだキリカの魅了にかかっているためか、恍惚とした表で皆キリカを見ている。
完全にアウェーだな。
だけど、これでいい。
「アキラ、頑張って!」
顔を真っ赤にしながらも周りの喧騒に負けないように言う、この聲さえあれば十分だ。
俺はそちらに頷いて、目を閉じた。
「では、始め!!!」
王の言葉と同時に俺は瞳を開け、地面を蹴った。
「!?」
「・・・ふぅ、こんなもんか。」
俺は知らずのうちに止めていた息を吐き出して、倒れるキリカを片腕でけ止めた。
王やその周りのエルフ達は時が止まったようにそのままの制できを止め、アメリアのみが顔を輝かせて
ぱちぱちと拍手をする。
「おい、判定は?」
「・・・・・・し、勝者、アキラ・オダ。」
促すと、王は顔はそのままで口だけかした。
用なやつだ。
その判定を聞き、エルフ達のざわめきが戻ってくる。
「おい、キリカ様が倒れていらっしゃるぞ。」
「有り得ない。反則したに決まっている。」
「そうだ!我らがキリカ様は不敗の將。負けるはずがない。」
「王よ、判定が甘すぎるのでは?」
不満が言葉となり、形となり、再び広場に喧騒が戻ってくる。
どうやら俺が何をしたのかさえ見ていないらしい。
視力の関係で見えた者がチラホラあることだろうか。
俺はそんな聲を一切無視して王に近づいた。
「アメリアは俺がもらっていく。説明もしてもらうからな。」
「あ、ああ。」
混からまだ抜け出せない王の前にキリカを橫たえた。
がない分、アメリアよりは幾分か軽かったな。
「アキラ、今失禮なこと考えてた?」
「いや、そんな事ないよ。」
「そう、ならいいわ。」
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