《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》23話
一度は目的地に向かって歩き出したのだが、エルフが臭かったから戻って川に放り込んだ。
エルフはいきなり摑んで川に放り込まれて、わけがわからないという顔をしていた。
いきなりの行にアリアとセリナも驚いていた。
「そのまま服を洗え。そしたらお前の家まで送ってってやる。」
「え?あ、うん。」
やっと理解したのか、自分の服を著たまま洗い始めた。しばらくこすってから、ローブのシミがあった部分の匂いを嗅ぎ、川から上がってきた。
「送ってくれるの?」
「ああ、代わりにそれなりの謝禮はもらうがな。」
「ありがとう!」
「だから大人しくついてこい。」
それからしばらく歩いているのだが、このエルフはうるさい。
これが本來の子どもの態度なんだろうが、アリアは靜かなやつだったし、セリナもあまり話さないから、余計にうるさくじる。
面倒だから30分もしないうちにセリナに任せた。
これからアリアの世話をさせるつもりだからな。その練習だ。
これでうるさいのはマシになったが、このエルフは歩くのが遅い。
普段の徒歩で16時頃に到著予定なのに、この速度じゃ20時超えるんじゃねぇか?
ダンジョンに行けなくなるどころか、途中で夜になっちまうじゃねぇか。
「セリナ。俺と靴を換しろ。」
「え?あ、はい。」
疑問に思いつつも、駿足の靴をいで俺の前に置いた。
俺は長の靴をいで履き替え、セリナに渡して履かせる。
「セリナ。これから訓練の2段階目にはいる。いいか?」
「はい。」
やっとローブが乾いたエルフとアリアを両側に抱える。
ファーストジョブを冒険者に戻しておく。
「俺についてこい。ただし、PPが5分の1を切ったらすぐにいえ。」
「はい。」
セリナの返事を聞いてから、目的地に向けて走り出した。
軽量の加護があるとはいっても、両脇に子どもを抱えたらそこそこの重さはじるし、走りづらい。
それでも駿足の加護のおかげでけっこうな速度で走っているのだが、セリナはちゃんとついてきている。
まぁセリナも軽量の加護は付いてるしな。
あとはPP消費軽減を持ってないセリナがどこまで頑張れるかだな。
アリアの魔力が盡きるのが先か、到著するのが先かだな。
「…あれがダンジョンです。」
1時間くらい走ったところで、アリアが説明してきた。
草原の中にどかっとダンジョンの一階部分がある。
周りは本當に何もない。
ここのダンジョンでも、り口で冒険者が何かを売ってるみたいだ。
ただ、あっという間に通り過ぎてしまったので、よくは見てない。
まぁこのペースで走ってれば、今日中にダンジョンに寄る時間も作れるだろうから、あとで見れればいいしな。
チラリと後ろを見ると、セリナはちゃんとついてきているようだ。
最初は必死についてきているというじだったのが、今ではし余裕がありそうだ。
PPの減る速度もあからさまに遅くなったしな。
もしかしたらなんか新しいスキルでも得たのかもしれない。
あとで確認しよう。
それにしてもセリナは凄い。獣人がそもそも運に特化してるのかもしれないが、よくこんなに走ってられるな。
俺はそろそろ腕と足が限界に近い。
PPはアリアが回復してくれるけど、部分的な疲労はPPとは違うみたいだ。
でもここまで走ったのなら、最後まで走りたい。そうすれば12時くらいにはダンジョンに行ける。
多休んでからでも十分な時間が取れるしな。
「…やっと著いた。」
もう腕が限界だったから、エルフを落として、アリアを立たせた。
アリアはあんな雑な運搬で1時間半も運ばれたのに平気そうだが、エルフはぐったりしてる。
セリナはなんとか最後までついてきたが、止まった瞬間、大の字に寢そべった。PPはちょいちょい回復しているから半分以上あるが、息が荒く、見るからに疲労が溜まってるようだ。
だが、休ませてやるほど俺は優しくない。
セリナのぐらを摑んで持ち上げる。
急に持ち上げられたセリナはかなり驚いたあと、怒られると思ったのか怯えている。
「この疲労に耐えるのも訓練だ。だからまだ寢るな。」
「ごめんなさい!」
セリナは咄嗟に謝って、自分の足で立った。
怯えているのか疲労のせいなのかいまいちわからないが、足がプルプルしている。
ここで無駄に時間を使いたくないからな。
だからうつ伏せに突っ伏しているエルフの背中あたりを摑んで持ち上げる。
「いつまで寢てんだ?森まで送ってやったんだから、早く案しろ。」
「気持ち悪い…。」
「アリア。」
『ヒーリング』
二日酔いにも効いたんだから、多は楽になるだろう。
「ここ知らないよ。」
「は?」
噓だろ?無駄足だったのか?
困ったときのアリアさん。
「…エルフの里は森の奧にあるという噂があります。だから、子どもは森の奧以外を知らないのかもしれないです。」
「可能はあるな。ならし奧まで行ってみるか。知ってる場所になったらいえ。」
「うん。」
エルフを離して自分で歩かせる。
しばらく歩くと、木が大きくなってきた気がする。
いや、もともと大きかったのだが、さらにだ。間隔狹く立ち並んでるせいもあるが、てっぺんが見えないくらいデカい。
「あっ!」
エルフが何かを見つけたのか、急に走り出した。
そして消えた。
「は?」
辺りを見ると、エルフが消えたところとはちょっとズレたところに観察眼が反応している。
一歩踏み出した。
「リキ様!ダメです!」
違和に近づこうとする俺にセリナが制止をかけた。
「なぜだ?」
「その先に敵意をじます。危険です。」
「拠は?」
「ありません。ですが…」
獣の勘ってやつか?
だが観察眼は反応してないぞ?
使えるかわからないが、鑑定を使ってみた。
『古代魔法を使用した結界』
空間にも使用できたが、聞いたことない言葉が出てきた。
「古代魔法?」
「…はるか昔に使われていたとされている強力な魔法です。現在ではエルフくらいしか使える者がほとんどいないそうです。」
「ってことはこれが仲間の命の恩人に対するエルフの対応ってことか?」
「…エルフは人族を敵視しています。すぐに攻撃をしかけてこないというのがエルフなりの最大限の譲歩の可能が高いです。」
なんだそれ?
イライラするな。
ここまで送ってやったのは俺たちが勝手にやったことだが、結果的には命を救ってやったのにこの対応か…それに命を救われた本人も無言で消えやがったし、糞悪いな。
「キャンテコック!恩を仇で返したお前の対応は許さねえ!エルフども全てが今から俺の敵だ!今後俺に會うエルフはお前のせいで死んでいくと思え。」
結界の向こう側まで聞こえているかはわからないが、宣戦布告をした。
すぐに攻撃をしかけてくるかと思ったが、何も起こらない。
イライラがおさまらねぇ。
「ダンジョンに行くぞ。ストレスが限界だ。」
「「…はい。」」
アリアとセリナを抱えて、さっきの疲労が抜けていないということも忘れて全速力でダンジョンに向かった。
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