《裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚》356話

パーティーが終わる間際にサーシャから魔族の參加者の話をされたが、サーシャに頼んでいたことをすっかり忘れていたから何の話をしているのか一瞬わからなかった。そのせいでわざわざ急いで確認してきたサーシャにショックをけさせちまったってことがあったりもしたが、カリンたちの歓迎會自は無事に終わり、片付けは子どもたちに任せて解散となった。

カリンはほぼ最後までローウィンスたちに捕まっていたからわからんが、他のメンバーは途中からは普通にパーティーを楽しめていたように見えた。ラスケルがセリナに告白してから上機嫌になって、それに他のやつらが引っ張られたってのもあったのかもだが。

それにしてもよくあんな場で告白とか出來るよな。それ自驚きではあったが、ラスケルの告白のときにセリナが余計なことをいったせいで、俺まで勝負を挑まれたのは予想外だった。

本人は「いつかはリキさんを越えたいと思っているので、リキさんとの実力差を知っておきたいんです。」とかいっていたが、タイミングからしてセリナが俺みたいに強いやつが好きとかいったからだろ。

まぁ橫山がるカリンパーティーの実力を知っておきたいとは思っていたからパーティーでの模擬戦ならいいと答えたら、とりあえずカリンパーティーと模擬戦をすることになった。

その模擬戦で勝てればタイマンしてやるっていっておいたけど、スキルで実力を隠してるとかでもない限り、カリンパーティーじゃ俺には勝てないだろう。

パーティーですら勝てないだろうにタイマンとか勝負にすらならねぇよ。

それにしてもラスケルは俺には勝てないと思っているのになんでセリナには勝てると思っているんだろうな。武有りの純粋な戦闘力なら既にセリナの方が上だと思うのに。

明日になれば嫌でも現実を知ることになるから、今日くらいは純粋にパーティーを楽しめるように黙っておいてやったけど。

明日はセリナとラスケルの模擬戦をしたあとに俺とカリンパーティーでの模擬戦をやって、そのあとは教えながら晝まで模擬戦を繰り返すってなったが、あいつらは模擬戦を繰り返せるほど力あるのかね。

まぁ実際にやってみて決めればいいか。俺は最初からしっかり計畫を立ててやるってタイプでもないしな。ある程度の流れはなんとなく考えてるから十分だろう。そもそもセリナにボロ負けしたラスケルに気力が殘ってるかもわからんしな。

カリンたちが午後から學校があるってことで、明日は日が昇り始めるくらいに出発して、朝飯も向こうで食べるって話だったから、寢る準備を早めに済ました。

そんでベッドにろうとしたところでドアがノックされた。

誰が來たのか気配で探ろうとして気づいたが、晝間の覚のまま気配察知を発させっぱにしていたみたいだ。ただ、今の俺では常時発させてる程度の度では壁や扉があるとその先の気配がわからないから、部屋に人が近づいてきていたことに気づくことが出來なかったみたいだが。

意識を向ければドアのすぐ向こうくらいならわかるみたいだから、このまま使い続けていればセリナみたいな異常な気配察知が出來るようになるかもな。

って、今はスキルの気配察知の可能を考えるんではなく、こんな時間に1人で俺の部屋に來たカリンの対応をしてやるべきか。

「どうした?……あぁ、っていいぞ。」

とりあえず用件を聞こうと扉の向こう側にいるカリンの気配に向かって聲をかけたんだが、返事がなかった。そこで室許可を求めてるのかもしれないと思い、許可を出した。

「……失禮します。」

どうやら室許可を求めてたって解釈で合っていたみたいだ。

カリンは部屋にってきて、扉を閉めようとしたところで一度止まり、確認するように俺を見てから、扉を見て、數秒考えてから微妙に扉を開けたままこっちに來ようとした。

「いや、閉めろよ。」

「え?…あ、はい。ごめんなさい。」

なぜかカリンは驚いた顔で固まったが、俺が訝しんだ顔を向けたら慌てて扉を閉めた。

何がしたかったんだ?

「フォーリンミリヤではドアは開けとくのが普通なのか?」

「え?あ、いえ、こんな時間に部屋で2人きりになったら、リキさんが誤解されて迷になってしまうかなと思ったので…こういうときはドアをし開けておくといいって前に教わったことを思い出したのでしだけ開けたんですけど、余計なことだったようでごめんなさい。」

「夜中に2人きりが迷だと思うならそもそも來んなよ。それでもこんな時間に來たってことは他のやつらに聞かれたくないことがあったからなんだろ?なら、扉を開けてたら意味ねぇと思うぞ。」

俺の言葉で今さら気づいたといわんばかりの顔をした。

「そ、そうですね。ありがとうございます。」

「そもそもカリンのジョブが巫である限りは潔白を証明できるから問題ねぇだろ。」

「なぜですか?」

カリンは本當に意味がわからないのか、不思議そうな顔で首を傾げた。

「なぜって、やったらなくなるジョブなんだから、なくなってないならやってないってことじゃねぇか。」

「?…………えっ!?あ、あの、いきなりそんなことは考えていませんでした。だっ、だってそれってお付き合いしてから何度も一緒の時間を過ごして、気持ちを通じ合わせて、言葉を重ねて、結婚を決めてから、そ、その…そ、そういったことを行うんじゃないんですか?だ、だから私とリキさんがお付き合いしていると誤解されたら申し訳ないって思っていたのですけど……え?そ、そういう誤解をされるのが普通なんですか?」

「まぁ誤解する側の覚次第だが、室に男2人でいたことでされる誤解といったらやったかどうかだろ。」

「そ、そうなんですね。」

カリンは恥ずかしそうに耳を赤くして俯いた。

1人で男の部屋に來るくらいだからそういった危機とか恥心とかないのかと思ったが、反応からして男に襲われるとか考えてなかっただけで、可能があると知れば恥ずかしいと思う程度の知識はあるんだな。

ただ、反応が恥ずかしがってるだけで後悔してるじがないから危機は足りてないみたいだが。まぁ俺がカリンに手を出す可能はないから認識としては正しいのかもしれないが。

でもたしかクルルにわれたことがあるって話じゃなかったっけか?それでも危機を持ってないってのは問題ある気がしなくもないけどな。

「そういう勘違いをされて困るのはどっちかっていうと男よりの方なんだから、カリンも今後は気をつけた方がいいぞ。相手によっては誤解ですまなくなる場合もあるしな。」

「…はい。」

「まぁ俺はカリンとやる気はねぇし、ここではそんな勘違いをするやつはいないだろうからいいけど。そもそもこの屋敷のどこで會話してもセリナには聞こえているだろうから、紛らわしいことをしなきゃ誤解なんてされようがないだろうしな。もしかしたらラスケルにも聞こえてるんじゃねぇか?」

「…え?そんなに壁が薄いんですか?」

「いや、あいつらには普通の壁なんてあってないようなもんだろ?」

「え?」

カリンは本當に意味がわかっていないような顔をした。

「あれ?違うのか?セリナが異常ってのはあるだろうから普通はさすがに數軒先の家の中の聲を聞いたりとかは無理だろうが、獣人はこの程度の屋敷なら音も匂いも把握できるだろ?」

「え?…ちゃんと確認したことはないですけど、ラスケルくんはそこまでではないと思います。たぶん隣の部屋の話し聲くらいなら聞こうと思えば聞けるくらいだと思いますよ。」

「そうなのか?じゃあセリナのことも俺が勝手にそう思ってるだけなのかもしれねぇな。ちゃんと確認したわけではねぇし。というか、立たせっぱなしで悪いな。話があるんだろ?そっちの席で話すか。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

俺がベッドから立ち上がって4人掛けのテーブルの席に座ると、カリンが迷いながらテーブルを挾んだ俺の前に座った。

「本気で誰にも聞かれたくない話なら念話で話すか?もしくはアリアに以心伝心の加護付きアクセサリーを借りてくるでもいいし。」

「…いえ、そこまで気を使ってもらえるのは嬉しいですが、大丈夫です。他の人にはあまり話したくないとは思いますが、ラスケルくんとパトラちゃんは知ってますから。ただ、2人にはこれ以上心配かけたくなくて……。」

ん?俺なら心配かけてもいいと思ってんのか?それとも俺の格的に話を聞いてもどうせ心配するような優しさなんてないだろうからちょうどいいと思ったとかか?

後者なら間違ってはないかもしれねぇが失禮極まりないな。

「そこでなんで俺なんだ?」

「孤児院と仲違いしてしまってから気づいたのですが、私って孤児院以外だとこういった話を出來る知り合いがパーティーメンバーとリキさんしかいなかったんですよね…ハハハ……。でもリーダーの私がパーティーメンバーにあまり気を使わせるのはよくないと思って……。」

俺もこの世界で深い話が出來るような知り合いはこの村のやつらを除くといないかもしれないが、この世界で15年生きてるのにそれはなかなかだな。孤児院出だとそんなもんなのか?

だとしてもそこに5日程度しか関わってない俺が含まれてるのはなかなかヤバいと思うが。

というか、悩みの相談はリーダーとか関係なくパーティーで解決した方がいいと思うけどな。まぁどうするか決めるためにも誰かに話して心の整理をしたいってところか?

べつに聞いてやるくらいはかまわねぇけど。

「アドバイスは期待するなよ。俺はいいたいことしかいえないからな。それで、何があったんだ?」

「えっと…実は今回のリキさんに會うための旅に出ることを孤児院に伝えたら反対されてしまったんです。」

ん?俺に會うための旅?旅のついでじゃなくて俺に會うことが主目的だったのか?意味がわからん。

さっきの話をできる相手にもなぜか俺が含まれていたし、カリンにとっての俺ってどんな立ち位置になってんだ?

「もちろん旅に出る前に數ヶ月の孤児院の運営費になるくらいの寄付はしましたし、他の神教信者の方々からの寄付もありますからお金については問題ないと思っていたんです。それなのになんで反対されるのかがわからなくて確認したら、町の外は危ないから私が旅の途中で何かがあるかもしれないことを心配してくれていたんです。」

カリンの話し方のせいなのかはわからんが、何をいいたいのかがイマイチわからん。今のところ孤児院と仲違いするような容ではないし、それとは別の相談か?

とりあえずまだ話が続きそうだから、相槌を打ちながら続きを促した。

「心配かけてしまっているのは申し訳ないと思いながら、心配してくれていることが嬉しかったんです。だから、ちゃんとレベルも上げたし訓練もしたから心配しないで大丈夫って伝えたんです。そしたら、「お前が死んだら寄付金が減るから困る。他の町で結婚なんてしたらどうやって寄付するつもりなんだ。他の町の教會に寄付をしてもここの寄付金にはならないんだぞ。誰がそこまで育ててやったと思っているんだ。お前はこの町で働いてお金をれる義務がある」っていわれたんです。最初は私を心配するようないい方をしてくれていたんですけど、途中からはお金の話だけで、15年も一緒に生活していたのにお金を生み出すモノとしてしか私を見ていなかったんだなと思ったら悲しくて何もいえませんでした。」

それでカリンはショックをけて孤児院のやつらと距離を置いたって話か?

そういった相談だとしたら困るな。

今まで費やした分の見返りを求める気持ちはわかるというか、俺自がそっち側の人間だからなんともいえねぇし。

でも、孤児院で勤めてるってことは仕事じゃねぇのか?だとしたら孤児に見返りを求めるのはおかしい気もするけどな。対価は雇ってる側に求めろよ。

「でも、人になるまで育ててもらったことには本當に謝しているので、そういった生活も悪くないと思ったんです。もともと稼ぎの一部は寄付していましたし。そのとき既にパーティーを組んでいたラスケルくんとパトラちゃんには申し訳ないと思いましたが、恩は返すべきだと思ったので…。でも2人まで町に縛りつけるのは悪いと思ったからパーティーを解散してソロで日々の生活費と寄付分を稼ぐ生活をしようと思ったんです。」

そこでれようと思ったのか……俺とは考え方が違いすぎるな。

まだカリンの相談容がイマイチわからないが、間違いなく相談相手は間違えてると思うぞ。

「だから、まずは自分勝手に町から出ると決めてしまったことを謝ろうと思って、日を改めて孤児院に行ったんです。そしたら出迎えてくれたのは敵意を向けてくる子どもたちでした。どうやら孤児院長たちが「みんながご飯を満足に食べられないのはカリントナのせいだった。カリントナのせいでこれからはさらに辛い生活になる」って子どもたちに伝えていたみたいで、実際にその生活を強いられていた子どもたちに酷く責められました。言葉だけでなく石や木材で攻撃もされました。食事も満足に出來ていない子どもたちの攻撃ではレベルを上げて防も著ている私には怪我どころかたいした痛みもなかったのですが、ただただ悲しかったです。しの間旅に出るという話をしただけで今まで一緒に生活してきた子どもたちにここまでされることなのかということが悲しかったのはもちろんですが、孤児院が私を町に居続けさせるためにこんなことまでするということが悲しかったです。同時に怖かったです。リキさんが帰ったあとに旅に出ると決めてから、頑張ってギルドの依頼を毎日こなして金貨5枚も寄付したんですよ?私が孤児院にいた頃は薬草とかを集めるのが一杯だったので月に銀貨30枚もお金をれられなかったのですが、今は私の生活にかかっていたお金の負擔がなくなって、そのうえ金貨5枚も寄付金が増えたのになんで子どもたちの生活が貧しくなるんですか?なんで私がそんなに恨まれなければいけないんですか?私が孤児だからお金をれなければ無価値どころか害悪ってことですか?そんなことを考えてしまって、數日は何も出來なくなってしまったんですが、ラスケルくんとパトラちゃんのおかげで立ち直ることが出來ました。そして、ラスケルくんとパトラちゃんが間に立ってくれて、孤児院と話し合いをしたんですが……その結果、孤児院とは縁を切ることになり、私は神教を名乗るのをじられることになりました。ラスケルくんとパトラちゃんはこれでいいって、私が気にすることじゃない、あそこの孤児院が良くないところだったんだっていってくれましたが、本當にこれでよかったのかわからないんです。私はどうするべきだったのか、これからどうすればいいのかわからないんです。私はリーダーだから、元気な姿でいないといけないと思って、ここまではもともと予定を立てていたのでなんとかなりましたが、これからどうすればいいのかわからないんです。私はどうしたらいいのでしょうか?……自分がどうしたらいいかわかってないのにカナデちゃんをパーティーにうなんて悪いことしちゃったな…。」

カリンにとっては今まで仲間だったやつらに裏切られて悲しいんだろうが、育ててやったやつから恩返しを期待するっていう教會側の気持ちはわからなくねぇんだよな。ただ取り立てのやり方に関しては馬鹿すぎるとは思うが。

俺がもし世話になった相手からそんな方法を取られたら謝が殺意に変わってただろうしな。

だからむしろ俺にはカリンの覚がイマイチわからん。育ててくれたことに謝してるんだろうが、十分な恩返しをしたうえでそんな態度を取られたのにまだ恩返しがしたいって思ってんのか?それとも仲直りしたいとかか?そんな悪意を向けられてんのに仲直りしたいって思ってんだとしたら、俺には理解できねぇわ。というか話し合いで縁を切るって決まったんだから、仲直りしたいってことはさすがにねぇか。

「どうしたらいいかっていわれても俺にはわからねぇよ。橫山に関しては橫山がカリンパーティーにるって決めたんだから気にする必要はねぇし、カリンはカリンで好きに生きたらいいんじゃねぇか?っていうと無責任に聞こえるかもしれないが、せっかく自由のになれたんだから、そんな嫌な思い出は忘れるか心の奧にでもしまって、これからは楽しめばいいと思うけどな。縁が切られるようなことをしたのは向こうなんだし、自業自得だろ。」

「……自由…ですか?」

「そうだろ?カリンは孤児院に世話になったのに恩を返せないのは悪いことだって思ってんのかもしれないが、さっきの話を聞く限りカリンを育ててたのはカリンを思ってじゃなくて金のためにやってるんだから、金貨5枚も払ったなら十分だろ。もともとそんなやつらが無償でやってたわけがねぇんだから、給料に上乗せ金貨5枚ならなかなかだろ?元王族の奴隷が買える値段だぞ。」

「…え?元王族の奴隷?」

「あぁ、いや、気にすんな。とりあえずカリンはもう好きに生きていいはずだって話だ。どんな相手にでも謝の気持ちを持ち続けられるってのは素晴らしいことなのかもしれないが、恩返しをしなきゃならないなんて強迫観念に縛られるのはおかしいからな。」

「……。」

とりあえず俺の場合ならってじのアドバイスをしてみたが、お気に召さなかったようでカリンは黙っちまった。

まぁ相談なんてのはだいたいが自分が思ってることに共してほしいだけだろうから、俺の意見なんて最初から聞く気はなかったんだろう。それが無意識にか意識的にかは知らんが。だからといって思ってもいねぇことを答えてやる気はねぇ。そもそも理解できない部分が多すぎて、カリンがしてる答え自がわからねぇんだけどな。

「もちろん恩返ししちゃいけないってわけじゃねぇから、そんな扱いされてもまだ恩を返したいと思ってんなら、すりゃあいいじゃねぇか。」

「…え?リキさんは私が孤児院にこれからも関わることに反対しないんですか?」

「さっきいっただろ。カリンはもう自由なんだって。もちろん俺だったら二度と孤児院とは関わらないと思うが、カリンは自分の意思で好きにすればいい。孤児院と縁を切るってことで決著したなら恩返し方法は考えなきゃならねぇが、自分が満足いくまで孤児院に恩返しするかどうかはカリンの自由だろ。」

カリンは俺の言葉の意味がイマイチ理解できていないようで、首を傾げた。

たぶん縁を切った狀態で恩返しをするってのがわかってないんだろう。

俺が恩返しを続けることを否定しなかったから孤児院との関係を戻せるとか勘違いしてたのかもな。

「どんな話し合いをしたのかは俺にはわからねぇが、話し合いで決まったことなら縁を切るのは確定事項だろ。それを覆したいっていうのもまぁ自由っちゃ自由だが、その場でいわずに後になって覆そうとするのはカリンのために行してくれたラスケルやパトラを否定するのと同じだからな。それに俺は話し合いまでして決まったことを守ろうとしねぇようなやつと関わる気はねぇから、そのつもりなら明日の模擬戦以降は二度と俺に関わるなよ。」

「そ、そんなつもりじゃっ!…ないです……。」

「それなら人を使ってカリンの名前は伏せたまま金を孤児院に送ってもらうって方法を使えば今後も恩返しは出來るんじゃねぇか?子どもたちの飯のことも気になるなら半分は食いを送ればさすがに懐にしまわれずに子どもたちに屆くだろう。あとはフォーリンミリヤに帰ったら他の神教のやつに金を渡して寄付してもらうとか?今思いつくのはこんなもんだが、別に直接関わらなくても恩返しは出來るんだからやりたきゃやればいい。」

「……。」

カリンからの返答はなかった。

俺の意見のどれがいいかを悩んでいるといった表ではなく、不満がし混じったような悲しげな顔で俯いた。

たぶんカリンは思っていたのと違っていたからあまり納得いってないんだろう。

無意識に恩返しに対して謝をされたいとか思ってんのかもな。

「恩返しってのは自己満足だ。それで納得できねぇなら恩返しなんて言葉を使うんじゃねぇよ。相手に喜んでもらう以上の反応がしいんなら恩返しじゃなくてその辺の孤児にパンでも配った方がよっぽど満足できると思うぞ。」

「ち、違…………。」

カリンは否定しようとしたのに言葉が出てこなかったのか、泣きそうな顔でじっと俺を見てきた。

「そんな顔すんなよ。俺のいい方のせいで悪いことのように聞こえたんだろうが、いいことして謝されたいって思うのはべつに悪いことじゃねぇからな?むしろ普通のだ。ただ、カリンのまでは俺にはわからねぇから確認してただけだ。金の亡者みたいな孤児院のやつらに今後も本當に恩返しをしたいと思ってるのか、孤児院で一緒に過ごした子どもたちが人まで元気に過ごせる手伝いがしたかったのか、自分と同じ境遇の人のためになることをしたいってだけなのか、援助することで謝してくれる相手がほしいのか、俺にはわからねぇけど、カリンはその辺をちゃんと自分で認識しておいた方がいいぞ。じゃないとカリンの不満や悩みは一生解決できないからな。」

「……。」

たいした人生経験を積んでるわけでもねぇ俺が思ったことをいっただけなのになんなんだよこの空気は。

べつに説教したつもりもなければ責めてるわけでもねぇのに俺が泣かせたみたいなじになってるのが意味わからん。

たしかに途中イラッとしたところはあるし、理解できねぇって思ったところもあるが、俺なりに出來るだけ真面目に答えたつもりなんだけどな。どっかで失敗したみたいだ。

だから人の相談なんかけたくねぇんだよ。

ただまぁ、カリンは俺より年下で、俺みたいに家族に恵まれていたわけでもなく、家族代わりの孤児院のやつとも縁が切れたから頼れる相手がいないんだよな。せめてパーティーリーダーでなければパーティーメンバーに頼れたのかもしれないが、リーダーでありたいと頑張っているせいでプライベートな部分で弱いところを見せたくないみたいだし。そんなカリンが頼ってきたんだから、今日くらいは優しくしてやるか。

俯いて泣いているカリンの隣に移し、カリンの頭に手を置いた。

嫌がる様子はなさそうだから軽くでた。

カリンはそれでもされるがままだったからそのまま數回優しくでたあと、し力をれて顔を上げさせ、強制的に目を合わせた。

「べつにすぐに答えを出す必要はねぇから、じっくり考えてみればいい。……そうだな。カリンはここまで冒険してきたのは楽しかったか?」

「……はい。」

「それなら孤児院のことは一旦考えるのをやめて、このまま冒険者を続けていろんなところに行ってみるのがいいと思うぞ。いろんな町や村に行ってたくさんの人と話をしてみればいい。人によって格も考え方も違うから、いろんな人と接することで、自分の中のを理解できるようになったりするし、これからどうしたいかって目標が見つかったりもするかもしれない。旅をすることでパーティーメンバーとの仲も深まるだろうしな。せっかく気の合うパーティーメンバーに恵まれたんだからさ。」

「……でも、このままだと、きっとみんなに迷をかけてしまいます…。」

「かけていいんだよ。リーダーとして弱いところを見せたくないって気持ちも大切だとは思うが、助け合える関係を築くってのも大事なことだぞ。人っていう字は……いや、1人で出來ることなんてたかが知れてるからな。リーダーだって1人の人間なんだから、迷をかけるのも仕方ないことだし、悩むこともあるんだから、頼っていいんだよ。案外こっちが迷をかけたと思ってても相手にとっては迷と思われてなかったりするし、気にしすぎない方がいい。」

「……リキさんも…迷をかけたりするんですか?」

「當たり前だろ。むしろ面倒なことはほとんどアリアに丸投げだからな。俺がやられたら迷に思うというかブチギレるな。」

「…え?」

「だけど、アリアにとっては頼られるのが嬉しいらしいんだよな。前にアリアに頼りすぎてるから仕事を減らすべきかと思ったら、セリナに止められたし。だからカリンのパーティーメンバーももしかしたらもっと頼ってほしいと思ってるかもしれねぇぞ?」

「……。」

「とりあえず酷い顔になってるし、今日はもう顔洗って寢ろ。急いで答えを出す必要なんてねぇんだから、1人でじっくり考えるにしてもパーティーメンバーと話し合うことにするとしても一度落ち著いてからにした方がいいだろうしな。」

「……の子に向かって酷い顔って酷いですね。」

し無理やり作ったじではあるが、カリンは笑顔を向けてきた。

さっきまで泣いていたカリンが空気を和まそうとしてるんだから、俺も乗ってやるべきか。

「すまんな。お詫びに寢るまで背中ポンポンしてやろうか?」

「……いいんですか?」

……え?冗談を返したつもりなのにカリンの表からしてマジでけ取ってる気がするんだが。

「…………べつにかまわないが、本當にやられたいのか?」

「…はい。孤児院で私はやってもらったことがなかったので、し憧れていたんです。それに明日早いのに今日は1人だといろいろ考えちゃって寢られなさそうなので、リキさんが嫌でないのならお願いしたいです。」

部屋にってきたときは持ってたはずの恥心はどこにいった?

まぁカリンは1つしか歳が離れてないがく見えるし、セリナとかと接するのと気持ち的には大差ないからいいか。

「……わかった。じゃあとりあえず顔を洗ってこい。」

「はい。」

カリンの頭から手をどけて椅子の背もたれを軽く叩いたら、カリンは返事をして洗面所に向かっていった。

俺に対して嫌悪を抱いているじはないし、気まずさもないから、カリンが泣いた原因は俺のいい方のせいではなかったっぽいな。

認めたくない自分のに気づいちまって悲しくなったとか無意識に誤魔化してた自分が恥ずかしくなったとかそんなじか?

予想外な結果にはなったが、今日くらいは優しくしてやるって決めたんだし、まぁいいか。

洗面所から戻ってきたカリンとベッドに橫になり、15歳相手にマジで何やってんだろうなと思いながら背中をポンポンと叩いてやっていたら、カリンは思いのほか早く寢息を立て始めた。

最初はカリンが寢たら俺はソファで寢るつもりだったんだが、移するのが面倒だなと思っているうちに俺も寢落ちしていて、気づいたら朝だった。

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