《チートスキルはやっぱり反則っぽい!?》チート! 019 旅の途中でとある新迷宮1
「ご主人様、あのような命令をしてもし彼らが失敗でもしたらご主人様が罪人になってしまわないでしょうか?」
スノーはシローが『隷屬の楔』により下僕とした者たちの事を思う。
彼らが失敗してシローの名前が表に出てしまったらシローが殺人を命じた事が見するのではないかと。
「俺は俺を殺せと命じた者を殺せと命じただけだよ。つまり正當防衛であり、仮に彼らが捕まったところで俺が罰せられる事はないよ」
拡大解釈にはなるが、問題ないだろう。
この世界の賞罰は神の定めた法によって決められている。
鑑定系のスキルを持っている者によってステータスを確認したり、ギルドカードのような分証の賞罰欄を確認すれば犯罪者なのか分かるのだ。
神は犯罪を犯した者にその罪を刻み、裁きは人に任せているのだ。
そしてその神が定めた法では正當防衛は罪にならないのだ。
今回の場合、シローは命を狙われており、実行犯を撃退したは良いがシローを殺すように命じた主犯は拘束もされていない。
この世界では命を狙われた者が反撃して命を狙った相手を殺しても罪にはならない。
そして何より犯罪者を殺しても罪にはならないのだ。
更にエスペノ王國を始め、どのような國でも貴族であろうと國王であろうと冒険者を勝手に裁く事はできない。
冒険者を裁くのは冒険者ギルドの権限であり権利なのだから。
それを侵せば敵対行をしたとして冒険者ギルドから制裁が課せられる事になる。
冒険者ギルドは商業ギルドと並び世界最大の組織であり、各國に冒険者ギルドの主権を認めさせている。
そんな冒険者ギルドと敵対した國は無事ではいられないだろう。
実際の話、過去に冒険者ギルドと敵対した大國があったが、その大國に対して冒険者ギルドはギルド員全員に略奪を許可をした上で侵攻を急依頼として指示したのだ。
これにより大國は全ての冒険者から攻撃をけ滅び、その後、冒険者が新しい國を立させた経緯がある。
そして冒険者はギルドカードの賞罰欄に犯罪歴が表示されるので、その賞罰欄に何も表示されていなければ基本的に無罪放免となる。
但し、賞罰欄は全能ではないのでギルドカードの賞罰欄に犯罪歴がなくても訴えがあれば調査が行われる事もあるが、その為には証拠が必要でありその証拠がなければ罪には問われない。
そして今回の場合は主犯を殺せと命じたのがシローだと彼らから分かったとしても冒険者ギルドにその証拠である彼らを引き渡さなければならないのだが、そんな事をすれば主犯の罪が暴かれる可能もあるのでそんな事はしないだろう。
「つまり、俺を罪に問おうとすれば自分の罪を認める事になるので表立って俺を斷罪もできないんだよ」
つまり貴族だからと言って冒険者を殺すように命じた者は罪人であり、自分から罪人だと名乗り出る者はいないのだ。
「確かにそうなのでしょうが・・・」
「それよりもこれ何だと思う?」
「え?」
シローたちの前には小高い巖山があり、その巖にポッカリと口を開けた窟が存在した。
窟の前にいるシローたちからは奧まで確認はできないが、かなり深そうな窟だと思われた。
「これって・・・迷宮?」
「だよねぇ~」
スノーは困気味な表だが、シローは嬉しそうな顔でスノーを見る。
そんなシローを見てスノーはシローが何を考えているか分かってしまった。
「この迷宮はギルドの見張りも居ませんので新しく出來たばかりの迷宮の可能が高いと思われます。もしそうなら危険度が分からないので下手にるのは危険です!」
「何でも最初はあるものだよ。それに危険なら直ぐに逃げれば良いしね」
シローは自分には【時空魔法】の『転移』があるからと続けようか迷い、今回は何も言わずにおく事にした。
「しかし・・・」
尚も食い下がるスノーだが、シローは火がついた好奇心を抑える事ができないのだ。
「スノーの魔法も上達したし大丈夫だよ!」
スノーは止めるのを諦め、シローの後について迷宮にっていくのだった。
それは奴隷として主人に口答えができない事もあるが、ここまでの道のりでシローの格が分かってきたのもある。
(ご主人様は好奇心旺盛ですから・・・)
迷宮の中は普通に窟だと言われれば一點を除き納得する巖むき出しの無骨なものだった。
ではその一點とは何かと言えば、僅かに巖が発し多の視界が確保されている事だった。
「初めて迷宮にったけど確かに魔素が濃いね」
「はい、地上よりも濃い魔素をじます」
迷宮とは魔素溜まりと言われる場所に現れる不思議な現象を総じて言う。
この迷宮の共通點として、人為的とも思えるような魔の発生でも有名であり、何故か金銀財寶に珍しいマジックアイテムが時おり見つかる事があるというものだ。
(この迷宮がどの程度の難易度かは分からないけど、やっぱ異世界といったら迷宮だよね!)
シローのワクワクは急上昇であるが、スノーは不安の方が勝っている。
そんな2人は徐々に地下に潛って行く事が分かる緩やかな坂を下りる。
無骨な巖の窟が続いていたが、ドーム狀の広場に出る2人だった。
そしてシローとスノーは目の前に存在する初めて出會った魔を見て暫し立ち盡くす。
(何これ? いきなりラスボス? 今の俺には問題ないけど・・・低ランク冒険者には無理ゲー的な?)
「で・・・デザートアリゲーター・・・」
「・・・それって強いよね?」
真っ青な顔をしたスノーはギギギと錆び付いたネジとナットがれたような音が鳴りそうなじで首をシローの方に向ける。
「ら、ランクはたしか・・・Bだったと思いますが、Aに近いBだったはずです」
シローは「ふ~ん」とそれほど驚きはしなかった。
それもそうで、シローは既に【解析眼】で目の前のワニの化けであるデザートアリゲーターのステータスを確認していたのだ。
その容からあの森で出遭った王クマのクィンとそんなに変りはない事でシローとしてはそれほど脅威ではないと考えていた。
「取り敢えず、スノーは後方に下がってね。俺はこいつを殺っちゃうから」
「や、殺るってデザートアリゲーターですよ!?」
「大した事じゃないさ」
デザートアリゲーターは地球で言うところのワニだ。
違いといえばその大きさが半端無いのと足が6本ある事だろうか。
大きさは高だけで2メートルほどもあり、尾を含めた全長は15メートルはあるだろう。
シローとしてはこのデザートアリゲーターが劣化竜だと言われても納得するだろう。
しかもつい今しがたまで戦闘をしていたようでデザートアリゲーターの足元には4人の冒険者と思われる者たちが橫たわっており更にやや離れた場所に2人が橫たわっていた。
もっと言うなら足元に橫たわっている4人の2人は上半が喰いちぎられており下半しか殘っていないし、デザートアリゲーターは今も尚咀嚼を続けている。
デザートアリゲーターはシローがゆっくり歩く姿を嫌悪するかのように咆哮をあげる。
何の耐もない者であれば今の咆哮をうけ萎し數秒から數十秒はけなかっただろうが、シローに対してはデザートアリゲーターがむ効果はなかった。
そんなデザートアリゲーターに向かいゆっくり歩くシローは腰に攜えている猛牛の暗刀あんとうをスルスルっと抜き放つ。
猛牛の暗刀あんとうはデリンボが鍛えた漆黒の刀である。
その刀はまるで糊をべたりとつけた妖刀のようにも見える不気味さを持っており、もし普通の者が見たならばシローを妖刀に取り込まれた冒険者と勘違いしたかも知れない。
猛牛の暗刀あんとうを正眼に構えるとシローは歩行を摺り足に変える。
『グワォォォォン』
デザートアリゲーターは苛立ったように唸り聲をあげシローへ向って6本の足を進める。
デザートアリゲーターが1歩歩みを進めるだけで地響きがし、その振はシローの足の裏にも伝わってくる。
(流石にデカイな。あの口なら俺なんかひと飲みだろうな。だがっ!)
シローは速度を上げたデザートアリゲーターの突進を左橫に飛び退き躱すと猛牛の暗刀あんとうを突き出す。
しかし猛牛の暗刀あんとうはデザートアリゲーターのい皮に阻まれ深く刺さる事はない。
(いな。しかしこの程度なら何とでもなる!)
突進を躱されたデザートアリゲーターはシローを尾で薙ぎ払おうと尾を振るがデザートアリゲーターの尾は空を切ると同時にデザートアリゲーターに激痛が走る。
振られた尾は遠心力もあって十數メートル離れた場所に飛んで行く。
そう、デザートアリゲーターの尾はシローによって付けから切飛ばされたのだ。
と言うより尾の付けを破壊されたのだ。
「スキルアーツ『連撃』」
スキルの【剣士】には『連撃』というスキルアーツがあるのだが、この『連撃』は複數の刺突攻撃を瞬間的に連続して行うもので回數が多ければ多いほど威力は上がっていく。
そして今回シローが発させた『連撃』は一瞬で実に8回もの刺突攻撃を繰り出しており、その威力はシローのステータスの高さもあり極めて高いものになっていた。
デザートアリゲーターが激痛によりき聲を上げ、その瞳は痛みからか走っており怒りで満ちている。
(やっぱりだめだな。今の俺には戦闘経験が圧倒的にない。【剣士】のスキルがあるおかげで技は高いレベルにあるけど命を掛けた経験に裏打ちされた戦闘のと言うべきものがない。雑魚だけなら力押しで瞬殺できたけど、このワニもそうだが王クマに対してもステータスに表れない戦闘による経験、特に死をかけた戦いの経験があればもっとスマートに戦えたはずだ)
デザートアリゲーターは口を大きく開けシローを噛み砕こうと頭を振りシローに飛び掛る。
ズドーンという大きな著地音が響いたがそれはデザートアリゲーターの死を意味していた。
シローを噛み砕こうとしたデザートアリゲーターは振り向いて地を蹴った瞬間に通常は地面に接しているらかいの皮とを切り裂かれ絶命したのだった。
「凄いです! 圧勝です!」
(経験は積み重ねるものか・・・もっと命の危機をじる戦いをしないと今の俺ではいつか死ねるかも・・・)
「そうでもないぞ、今の俺ではいつか壁にぶち當たるだろう」
スノーはシローの言っている事が理解出來なかった。
たった1人でランクBの魔を圧倒できる程の実力を持っている者などこの広い世界に多く存在しないだろう、と素直にシローの実力をリスペクトしているのだ。
「しかし迷宮にったらいきなりランクBの魔か、この迷宮はかなりヤバイかもね」
そしてデザートアリゲーターに倒されたのであろう6人の中で唯一息がある者に回復魔法をかけてやる。
実を言うとシローは早い段階からこの6人がデザートアリゲーターと戦闘をしている事に気がついていたし、5人が事切れた事も把握していた。
スノーがこの事を知っていたら何故助けなかったのかと詰め寄るだろうが、シローは迷宮の中で他人の為に何かをしようとは思わない。
何故なら、それは6人が冒険者でありここが迷宮であるからである。
それに6人が倒れている広場は迷宮のり口からさほど距離もないので危なければ逃げる事もできた。
それでも戦っていたのだから死んだとしても自業自得であって、シローは態々助けるに値しないと考えている。
冒険者が迷宮にり命をかける換わりに財を得る、これは冒険者であれば當然の事であり無茶をするかしないかは冒険者の判斷によるものだからだ。
さて、ここで問題なのが唯一生き殘った者なのだが、この者の首にはスノーと同じような首が嵌っているのだ。
つまりこの者も奴隷だという事だとシローは直ぐに気が付いたのだ。
目を覚ました奴隷は自分を覗き込む者がいつもの顔ぶれでない事に違和をじつつもゆっくりと上半を起こす。
「ここは・・・あの・・・・・あっ、デザートアリゲーターはっ?!」
首を小まめに振りデザートアリゲーターを探したが、周囲にデザートアリゲーターの影どころか気配もない。
そして目にって來たのは自分と一緒にこの迷宮にっていた者たちの慘たらしい亡骸だった。
自分から迷宮にりたいなどと思った事もなければ魔と戦いたいと思った事もない。
それでも自分は奴隷であり、主人が冒険者であった事で自然と魔と闘うをにつけてしまった。
それは自分が冒険者としてランクCになっている事からも分かる。
自分の主人はランクB+の冒険者であり、パーティーのメンバーもランクBが1人、ランクB-が1人、ランクC+が2人、自分を合わせてもランクBのパーティーでそれなりに有名なパーティーだった。
「ご主人様は・・・死んだのですね・・・」
「誰がお前の主人かは知らんが、この5人の中に居るのであればそのようだな」
シローは5人の死を見つめぶっきら棒に答える。
その死の2は下半しかないのでその2のどちらかが主人であれば判別は下半だけで行わなければならないのだが、どうやらそれは無駄な危懼に終わったようだ。
「・・・貴方が新しいご主人様なのですか?」
「・・・そのようだな・・・」
奴隷の主人が死んだ場合は奴隷を最初に発見した者が主人となるのがこの世界の法である。
この事は多くの者が知っている事ではあるが、だからと言って奴隷しさに他人を殺せばその者は殺人者となってしまい割りにあわないので実行する者はない。
そう、ないだけで居ないわけではないのだ。
そして今回の場合は奴隷の主人が死んだのは自業自得であり、奴隷の目の前に居る黒髪の年の責任ではない事は敢えて言うまでもない事実である。
「綺麗な髪・・・」
自分の髪のはグレーであり、その髪のにコンプレックスをじていた事でつい呟いてしまった。
彼には髪のがグレーである事は悲観的なを呼び起こす。
狼人の中でも彼は黒狼族であり黒狼族は髪のが濃いほど強く、そして気高いとされている為に白に近いくすんだ髪のをもつ彼は一族の中でも底辺の扱いをけていた。
彼が奴隷となったのは農作が不作で更に狩りで獲れる獲までもがなくなった次期があった事で、一族が食料を得るために13歳になったばかりの彼が奴隷商人に売られたのだ。
奴隷として店に並ぶ前には奴隷としての教育を1ヶ月程けたが、その奴隷教育を大雑把に言えばは主人に忠実であれと言うものだ。
主人は奴隷の食住について保証をしなければならないが、武や防もない狀態で主人に魔の群れに突っ込めと言われれば奴隷は従わなければならない。
そして主人にを求められても拒否はできない。
基本的は主人の意思によって奴隷の行は決まり、奴隷には拒否権などないのだと、そのんな事が走馬燈のように頭の中を巡る。
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