《チートスキルはやっぱり反則っぽい!?》番外編_召喚された勇者ではないお話5
「初めまして、私はスノーと言います。冒険者でシローの妻です」
ぺこりと可らしく一禮をするスノーに男勇者の視線が釘付けになる。
この世のものとは思えないほどのしさを持つスノーを見ればこうなるのも仕方がない。
「私はジーナだ。シローのパーティーメンバーだ。よろしくな」
「アズハです。ご主人様の奴隷です。宜しくお願いします」
ジーナとアズハの挨拶はスノーのようなパンチ力はない。
男勇者の視線がスノーに釘付けだからだ。
「お前たちは6人ずつの2パーティーに分かれてもらう。ちょうど男とで6人ずついるから男で別れろ」
スノーに男の視線が向くのはいつものことなので無視して指示を與える。
「組はスノーたち3人が引率する。男の方は俺だ」
この言葉に男勇者からは「えーーーー」と非難の聲があがる。
しかしどう考えても男勇者の方をスノーが引率するわけがない。
シローがそんなことを許すわけがないのだ。
「きょ、教。質問があります!」
手を上げて口を開いたのはミヅキ・ヤマダだ。
勇者であまり目立たないクラスメートだった。
「何だ?」
「スノーさんたちは強いのですか?」
「そうだな、三人いれば魔王を倒せる程度には強いな」
この説明に「おおおーーーー」と聲があがる。
そして勇者たちは思う。
魔王を単獨で倒せるシローがおり、3人で魔王を倒せるスノーたちがいる。
勇者召喚なんてする必要はないだろうと。
それは正しいだろう。
しかし、國の政策や人々の恐怖心はそういったことが分かっていても、また違った力をむこともある。
伝説の勇者を勇者召喚するということは、シローやスノーたちでは與えられない安心を人々に與えるのだ。
勇者という言葉はそれだけで人々の希となっている。
エスペノ王國の王都の近くには2つのダンジョンがある。
シローは出てくる魔のランクが低いダンジョンへった。
別にランクが低い魔が出てくるから魔討伐の初心者である勇者に丁度良いと思ったわけではない。
出てくる魔がゴブリン、コボルト、オーク、オーガのように人型だからこちらのダンジョンを選んだのだ。
「魔王やその配下の魔人族は人型が多い。今のうちに人型との戦闘に慣れろ」
シローの思とは裏腹に勇者たちは人型の魔を躊躇なく倒していく。
考えてみたら、散々ブルーに食われているし、何度も死の間際までいった。
手足を食いちぎられ何度も死にそうになっているのだ、グロ耐は普通についているし、今更戦闘を厭う者はいなかった。
普段はお淑やかで優しいハナヅキでさえ躊躇なく人型の魔を倒していく。
全員が前衛であり、全員が後衛である勇者たちに足りないのは連攜した、組織だったきだけだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「久しいの、息災だったか?」
「おかげをもちまして健康に過ごしております。陛下」
國王の執務室の中、國王とゲール、そしてカリンが3人だけで面會をしていた。
「それで々の話とは何か?」
ゲールよりの話があるとカリンと共にフェリペ三世と面談を申し込んだ。
「我が妹ソフィアに関することでございます」
「……ソフィア……とな?」
カリンにはソフィアという妹がいた。
そのソフィアは18年前に他界しているが、フェリペ三世は懐かしい名を聞き目を細める。
「ソフィアには子がおります」
「なっ!?」
フェリペ三世は思わず立ち上がる。
フェリペ三世の記憶ではソフィアに子はなかった。
元々宮廷魔師として城勤めをしていたソフィアは他界する半年ほど前に急に職を辭している。
調が優れずに療養するために職を辭したのだとフェリペ三世は考えていたのだ。
「まさか……」
「はい、陛下のお子に座います」
「……」
カリンの言葉は衝撃的だった。
確かにソフィアとフェリペ三世は両想いだった。とフェリペ三世は思っている。
しかし急にフェリペ三世の前から姿を消し、そして半年後には他界したと聞かされたのだ。
あれから18年。ソフィアはいつも心の片隅にいつもいた。
「我が子は今どこに?」
「……覚えておいででしょうか? 我が子シーロが六年ほど前に行方不明になっております……」
「……まさか?」
「はい、シーロが陛下とソフィアの子です」
天を仰ぐフェリペ三世。
6年も前に拐されたファイフォーレン家の三男が自分の子だった。
「ソフィアに頼まれ我が子として育てておりました……陛下に黙っており申し訳ございません」
「お預かりしていたシーロ様を失い申し訳ありません!」
カリンとゲールは頭を下げる。
フェリペ三世が上げろと言うまで頭を下げ続けた2人。
「今……その話をするということは我が子の、シーロの行方が分かったのか?まさか死んではいまいな?」
「そのお話をする前にお願いの儀が座います」
「……申してみよ」
「は、シーロ、いえ、シーロ様は今は名を変えておいでです」
フェリペ三世は頷き、カリンがゲールの後を引き継ぎ話し出す。
「今のシーロ様は自由に生きておいでです。ですからシーロ様は陛下との謁見をんでおりません」
「……」
謁見後、ゲールとカリンが城から帰宅しようとしたところに、ダンジョンから帰ってきた勇者十二人とシローたちの姿を見つけた。
勇者は皆疲れ果てた顔をしているが、この12人と他の勇者では明らかに強さが違うと2人はじた。
死線を何度も掻い潛ったかのような歴戦の戦士のような雰囲気を醸し出していると想を持ったのだ。
「シロー殿、この後、し話がしたいのだが」
「……了解だ」
ゲールとカリンが二人揃っているのを見て嫌な予はしていた。
話の容はある程度予想ができる。
それがシローにとってはとても重荷だ。
両親との縁を一方的にではあるが切っているのだから仕方がない。
ゲールの執務室でシローは2人と向かい合わせにソファーに座った。
カリンが淹れたお茶の香りが立ち上る中、シローと2人は対峙しているような雰囲気だ。
「話とは?」
「シロー殿の両親の話なのは分かっているだろ?」
ゲールがそう言うと、シローはため息を吐いた。
「続けてくれ」
「この話は私からします」
カリンが話をすると口を開いた。
「貴方の母は私の妹です」
「……」
「ソフィアは貴方を生むとすぐに亡くなりました。だから私たちが引き取って貴方を育てたのです」
「育てた? 閉じ込めたの間違いでは?」
シローはの頃を思い出した。屋敷から外に出してもらえず、両親と思っていて目の前にいる2人ともほとんど會うことはなかった。
「言い訳に聞こえるでしょうが、それにはわけがあったのです」
カリンは悲しそうな表をして話を続けた。
「貴方の父親はとても分の高い方です。その方と妹ソフィアはをして貴方をごもりました」
「……」
「その方には正妻がいましたが、その方がソフィアの妊娠に気がついた節がありましたので、姿を隠して貴方を生んだのです」
つまり、父親の正妻が嫉妬深いだということだと、シローはけ取った。
「貴方がいころ、階段から落ちたことがあると思います。あれはその方の手の者による暗殺未遂でした」
確かに覚えがある。誰かに押されて階段を転げ落ちたのだ。
「あの方に知られないように貴方を隠して育てていましたが、知られてしまったのです」
「知られたのであれば、その後は閉じ込める必要はなかっただろ?」
「いいえ、屋敷の周囲には常にあの方の手の者がいて、貴方を狙っていました。だから、貴方がいなくなった時、私はあの方を疑いましたが、あの方の手の者が貴方を拐したような事実は摑めませんでした」
そう言えば、屋敷からは転移して外に出たんだったな。まさかそんな方法で外に出るとは誰も思っていなかったというわけか。
「その後、カウラニの街で貴方を見かけて、私は貴方がシーロだと直したのです」
そのくだりはシローも覚えていた。
「貴方の活躍を聞くとホッとしました。冒険者の世界は非常に厳しいので、いつ死んでもおかしくないからです。それにあの方の手の者が貴方にたどり著く可能もありましたから」
そこでカリンはお茶に口をつけた。
シローもお茶を飲んだが、既に冷めていた。それでも以前ゲールが淹れたお茶より味しかった。
「さて、ここからはシロー殿の父親の話になるが、聞くかい?」
ゲールが話を引き取った。
「ああ、ここまで聞いたのだから、先も聞かせてもらおう」
「隨分と冷靜だね」
「今更両親のことで驚くつもりはない。流石にあんたから父親が別の奴だと聞いた時はし驚いたがな」
シローは苦笑いをした。
「なら、言うけど……シロー殿の父親は……」
ゲールがもったいぶった口調で引っ張る。
「シロー殿の父親は……この國の國王であるフェリペ三世陛下だ」
「そうか、意外と普通だったな」
「驚かないのかい?」
「分が高いと言っていたからな、想定の範囲だ」
「そ、そうか……陛下はシロー様に會いたいと仰っている」
「いきなり、様かよ。今まで通りで頼む。それと俺は今まで通り冒険者だ。國王と親子の名乗りをするつもりはない」
「バッサリだね。しは考えてくれても」
「俺のことを息子だなんて言ったら、國王でもぶっ飛ばすぞ」
「それは勘弁してほしいな……」
「それに俺は依頼通り勇者たちを鍛えた。だから數日後にはこの國を出るつもりだ」
「そうか……シロー殿……わずかな時間だったが、私たちは君の父と母だった。もし帰ってきたいと思ったら、遠慮はいらないからね」
「そうよ。それにソフィアはもういないけど、貴方にはお爺様もいるし、私のような伯父伯母がいるわ。いつでも帰ってきていいのよ」
シローはフッと笑った。そんな日が來るとはとうてい思えないからだ。シローが帰るべき場所はスノーの元であり、アズハ、クルル、ジーナといった仲間の元なのだから。
こうして、シローはエスペノ王國を後にした。自分の出生のを知ったからと言ってシローはシローなのだから。
シローが発った後、12人の勇者が長して半年後には魔王を倒したという噂がシローたちの耳にもったのだった。
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