「キアラ、どう？ 歌詞は書けた？」「こんなじで書いてみました、どうでしょうか？」

 《kira☆kira》が所屬している『スターエッグプロダクション』という會社の練習用音楽スタジオでの曲作りも終盤に差し掛かっていた。

 時間を無駄にしないためにここへくる前に何曲か候補を考えてきていて、どんな曲がいいか最初はギターを弾きながら意味のない言葉や英語でメロディを歌って聴かせた。

  一通り聴かせ終わってどれがいいかキアラに訊ねると、全部良かったと返されてし困ったが、その中から最終候補をしぼり、キアラによる歌詞付けまでなんとか進んでいた。

「どれどれー」

 キアラから渡された歌詞を見るとどうやら初を唄った歌詞のようで、簡単にまとめると歌の中のの子は相手の強面の男子が最初は怖かったけど、ある事件をきっかけに本當はすごく優しい人だと知って、そこからはの子からしづつアプローチをして、最後は結ばれるというストーリーだった。

「すごく良いんじゃないかな、《kira☆kira》と言えばの歌、それにの子の方から積極的にっていう歌詞は今までにないじで新鮮だね」「はい！ 自分の験を基にしているのでスラスラ書けました」

 ははーん、いつぞやの歌番組で発覚した意中の相手のことね。こんな可い子に想ってもらえるなんて幸せ者め！

「でもアイドルは止なんじゃないの？」

 べッ、別に羨ましいから意地悪な質問してやろうとか思ってないんだからね！？

「はい、そうなんです。 だからこれは誰も知らないのなんです…」「そっか… 」

 アイドルっていうのも大変だよな。 俺は顔を隠しているからともかく、キアラほどの有名人になるとパパラッチとか大変だろうに…

 この前の歌番組以降なんて、どの週刊誌もキアラの意中の相手を予想したり、勝手に決め付けて載せたりして大騒ぎだったもんな。

 まあ、テレビやライブで笑顔振りまいている子が、プライベートでは男とイチャイチャしてましたとなると、好度は當然落ちるし、1度落ちた好度を上げることは至難の技だ。

 なら最初から止にすれば… となってしまうわけだ。

 でも、そんなの子たちにの歌を歌わせている大人たちは、彼たちのむ幸せを一どう思っているんだろうか？

「そっか… じゃあキアラのがいつか葉うように、俺も応援するよ！」「え… はい！ よろしくお願いします！」

 キアラはそう言いながら嬉しそうにモジモジしてる。本當にそいつのことが好きなんだろうな… 

 こんな可いくて良い子に想ってもらえるなんて幸せ者め、顔を見たら1発くらい毆ってやろうかしら！

「よし！ じゃあ試しに1回歌ってみようか！」「はいッ！」

 橫に立てかけていたアコースティックギターを取り、組んだ足にフィットするようにボディーの曲線を合わせて乗せる。

 ポップなリズムで刻むギターの音に合わせ、キアラが歌い始めた。  優しく明るい聲で、聴いていると自然にこの片想いのを応援したくなるようなそんな気持ちになっていく。

 歌っているキアラを見ていると、自然と自分も笑顔になるのがなんとなくわかってし照れくさい。  まあお面を被ってるから見られることはないんだけど。

…

……

………

「ユウさん、どうでしたか？」「うん、すごく良かったよ！」

「やったーー！！」「後はアレンジを決めて仮録音だな！ 思いのほか順調に進んでるな」

「はい！ きっとユウさんだからこんなに順調に進んでいるんだと思います。 それに、こんなに楽しく歌えたのは初めてです！ 本當にユウさんは凄い才能を持ってると思います！」

「いやいや、そんなことないよ。 キアラだって凄い才能を持ってるじゃないか！ 俺、キアラの歌を聴くと笑顔になれるし、元気になる」「そッ、そんな… ありがとうございます… ユウさんに褒められちゃいました… 」

  俺より歩の方がずっと音楽の才能あるし、翔ちゃんにもギターテクニックじゃ足元にも及ばない。 自分では用貧乏だと思ってるんだけどな。

「でッ、でも！ ユウさんは本當に凄いですよ！ もっと自分に自信を持ってもください！！」「お、おう… 」

 そんなに熱を込めて言われるともう何も言えない。  それと顔が近いってば！

「… たしも… じし……なきゃ…」「え？ 今何か言った？」

「あのッ！」「は、はいッ！」

 小聲で何かボソボソっと言ったと思ったら、突然の大聲で呼び掛けられ驚いてしまう。

「…ユウさんのそのお面、いでもらってもいいですか…？」「え！？」

 どうしてまた突然このお面の話になったのだろうか？

「いえ！ その… ほら！ さっきユウさん、私の歌を聞いて笑顔になるって言ってたので、本當かなーって…！」

 何やらとって付けたような理由だが、でもまあキアラだったら外しても構わないかな。

 別に外してここへ來ても問題なかったが、もし外して來てアンタ誰？ってなっても困るから被って來たわけだからな。

 「いいけど、他言無用で頼むよ？」「はい…！ もちろんです！」

「じゃあ… 」

 早速お面をごうと手を掛けるが、シャツの襟に引っかかってなかなかげない。

 修理に出した際に、ライブなどで激しいきをしてもげないように改造してもらったため、ぐのが結構大変なんだよな〜。

「あの… 良かったら私ががせましょうか？」「ごめん、頼むよ」

 そうこうしているとキアラが気を利かせてくれたので、遠慮なくお願いすることにした。

 俺と向かい合うように前に出てきたキアラが、俺の頭の後ろに両手をばす。

 この制だと、必然的に俺とキアラの距離は凄く近くなるわけで、キアラのの子特有の良い香りが俺の鼻をくすぐる。

 ち、近いな、これは他の人が見たらの子が男の首に腕を回しているように見えるのではなかろうか、そしてそのままキスを…

 いかんいかん！ 邪念よ、去れーッ！

「あ、取れました。 で、ではがせますね… 」「お、おう… 」

 何かこう誰かにお面をゆっくりとがせられるのって、ちょっと恥ずかしいなと思っていると、突然大きな音を立ててスタジオのドアが勢いよく開かれた。

「ちょっとアンタたち！！ 何やってんのよ！？」「へ？」「あッ、アキラちゃん！？」

 勢いよく開かれたドアの前に立っていたのは、凄い形相をしたアキラだった。

 「そんな何って言われても、別に俺たちは何も… 」

 いや、待て。

 俺とこのキアラの勢は何かと誤解を生むような気がすると丁度思ってたところじゃないか！

「ち、違うんだ！ これには訳がッ！！」「問答無用ーッ！！」

「あッ、あ゛あぁぁぁーーッ！！！」「ゆッ、ユウさーーんッ！！」

 アキラのドロップキックを顔面にけた俺は、まるで天変地異が起きたような錯覚を覚えてそのまま意識を失った。