男子バスケ部と合同で練習を始めてから1週間が経った。

 月くんは文句をいいながらだけど、ちゃんと毎日練習に參加している。

 小畑くんから月くんが男子バスケ部のスケットをすると聞いた時、また月くんのプレーが観れると思って凄く嬉しかった。

 中學の頃、全校生徒で男子バスケ部の全國大會の応援に行ったことがあった。

 そこで、同じクラスの冴えない男子の月くんがレギュラーで出場していたのには本當に驚いた。

 でも、もっと驚いたのは、彼のひとつひとつのプレーがとっても綺麗で、いつの間にかそれに見惚れている自分がいたことに気付いたことだ。

 そのままチームは順調に勝ち進み、ついに決勝戦。

 手に汗握るほどの接戦の中、月くんがレイアップシュートを決めた直後、相手選手の強引なファウルにより腳を怪我し途中退場。

 その後ズルズルと點差を離されてチームは敗退。

 その時の景は今でもよく覚えている。

 自分がプレーしていたわけでもないのにとっても悔しくて腹が立って、居ても立っても居られず私もバスケを始めた。

 べッ、別に月くんに憧れて始めたわけじゃないのよ！？

 高校生になり、私は迷わずバスケ部に部した。

 これで毎日、月くんのプレーを近くで観ることができると思った。 けれど、月くんはバスケ部に部していなかった。

 もう2度と月くんのプレーを観ることができないんだとショックをけていた時期もあったけど、まさかこんな形でまた月くんのプレーを観ることができるなんて思ってもいなかった。

「また月に點取られたぞ！？」「マークしっかり付いてたのかよ！？」「俺じゃ抑えられねぇ！ 誰か代わってくれ〜！」

 月くんは何年もバスケをしていないとは思えない程、きにもプレーにもキレがあって上手い。

 他のバスケ部員をいとも簡単にドリブルで抜いてしまい、みんな自信をなくしてしまわないか心配なくらい。

 男子と一緒に練習をすることになって最初に心配だったのが子部員たちの反応だったのだけれど、月くんのプレーを観たら誰一人文句を言わなくなった。

 むしろ、子たちが月くんに群がって、練習が中々進まない時があるのがし不満かしら。

 月くんは子に免疫がないから、あんまりベタベタされるとすぐ浮かれてしまうのよね…

 その部員たちの中でも唯一、月くんに近付こうとしない人もいる。

 1年の花沢華さん。

 彼はちょっと変わった子で、まず男が苦手。

 見るのも話すのもダメで、挙不審になってしまう。たぶんられでもしたら気絶するんじゃないかしら。

 真面目で熱心、おまけに頑張り屋さんなのだけど、男が苦手ということがネックになり、やることなすこと上手くいかない。

 練習中は男子からパスを貰うと避けてしまったり、逆に男子にパスが出せなかったりと他の部員たちとの差が骨に出てきていて、ちょっと問題になってきている。

 流石に1週間もこの調子だから、他の部員たちがしづつ距離を置いているのが何となくわかってしまう。

 本人もそれを気付いているようだけど、何も出來るわけもなく今の狀況になっている。

 とは言っても、1人だけ懲りずに花沢さんに話しかけている男子もいる。

 今もまた話し掛けては思いっきり避けられてる。これで何度目かしら？  もう諦めればいいのに月くん…

 肩を落として俯きながら、トボトボこっちに歩いてくる。やだ、ちょっと可い…

「なあ委員長… 俺、そんな恐い顔してるかな～？」

 今にも泣きそうな顔で私に尋ねてくる。  ちょっと！ そんな可い顔して私を見ないでッ！！

「い、月くんがまた花沢さんの嫌がることでも言ったんじゃないの？」

 本心を悟られまいと、ついキツイことを言ってしまった。

 本當に彼の前だといつもこうで、自分が嫌になる。

 私すごくじ悪い… そんなつもりじゃないんだけどな。

 「ただ、パスが上手く出來るように一緒にパス練しようぜっていっただけだし」

 口を尖らせて弁解する姿も普段見られないから、なんか新鮮… 

「私の方からも聲を掛けておくから、そんなに気にしないで」

 あの子の男嫌いは生理的なものだから、月くんがいくら優しくしてあげてもどうにかなるとは思えないのだけど。

 あの子が原因で大きな事故とか起こらなきゃいいけど…

 さて、そろそろ私も練習に戻らないと…

「はい！じゃあみんな！ 次は男混合で、5対5に分かれて練習試合するわよ！」

「「「 うーーすッ！！」」」「「「はーーいッ！！」」」