《僕の前世が魔でしかも不死鳥だった件》不死鳥は小學生

小學校に學して周りの環境が変わった。

學校での授業は分かりきったことばかりでつまらなかったが、校にある図書室はなかなか過ごしやすかった。

親が適當に借りてきていた今までと違って、好きな本を借りて読めるし、何よりうるさい聲もなく靜かだ。

そのせいで唯一殘っていた両親との繋がりである本を借りて來てもらう、ということもなくなってしまったが、気にも止めなかった。まあ、學校に通わせて貰ってるだけ有難い方だろう。

もうこの頃の僕にとっては、空の散歩と読書だけが楽しみになっていた。

言うまでもないが、友達などいない。

周りは當然ながら子供ばかりで、相変わらず話が合わなかった。

ツマラナイ授業、読書、空中散歩、そんなことを繰り返しながら、僕は気付けば小學校四年生になっていた。

クラス替えというのがあってから、何だか周りからける扱いが変わった。

教室ではいつも孤立して本ばかり読んでいたから、今まで扱いもクソもなかったのだが、新しいクラスになってしたった頃。

周りは何故かやたらと掃除當番や提出屆けなどの面倒な仕事を僕に押し付けようとしてきた。

ハッキリ言って僕はお人好しでも大人しく従うような奴でもない。

自分の當番でもない。やる義理もない以上、押し付けようとするクラスメイトの言葉を無視していた。當然、やっていない。

「おい羽川、昨日の掃除當番代わりにやってくれって言っただろうが!」

そんなことがあった翌日。

クラスでやたらと態度のデカイ男子生徒が、僕にそう言ってきた。

態度もデカイが、図も他の同學年と比べてかなりデカイ。あと聲もデカイ。

「昨日は僕の當番じゃない………従ってやる必要はないと判斷した」

「だから代わってくれって言っただろうが、俺たちは昨日の放課後は忙しかったんだよ」

見ればそのデカイ図の橫には腰巾著のように男子生徒が二人いる。

俺たち、とはどうやらこいつら三人のことのようだ。

「確かに言われたが、了承した覚えはない」

「何だと! お前は黙って言うこと聞いてりゃ良いんだよ!」

「意味が分からない。何故、僕が君の言うことを聞かなければならないんだ?」

後から知った話だが、平凡と目立たない日々を送っていたと思ってた僕は、どうやらかなり悪目立ちしていたらしい。

理由は、周りと違うから、だという。

恐らく、この金の髪と瞳のせいだ。

どういう訳か、僕の姿はごく普通の日本人から掛け離れた金髪金眼。

両親と妹が黒髪黒眼だから、間違いなく伝ではないだろう。

明らかに前世の不死鳥の姿が影響していそうだ。

そのせいか、黙っていようが教室の隅にいようが、僕はかなり目立っていたらしい。

この世界の日本人というやつは何故か自分たちとは違う人間を排除しようとする傾向にあるようだ。例えて優秀過ぎても不出來過ぎてもダメ。自分たちと同じでなければ気が済まない。勿論、そうじゃない人間もいるようだが、このクラスでは前者だけしかいなそうだ。

このデカイ奴に絡まれてる僕を見て、教室にいる生徒全員が悪意のありそうな顔でクスクスと小聲で嗤っている。

…………なるほどなるほど。

これが有名ないじめというやつか。

でも前に本で読んだやつより酷くないようだから、そこまで気にするほどでは無さそうだ。

敢えて問題をあげるとすれば、目の前にいるこのうるさいデカブツくらいか

「てめぇ、友達もいねぇような奴が偉そうに……」

「偉そうなのは君だろ?」

どうも僕は思ったことをそのまま口に出してしまうようだな。気を付けよう。

目の前のデカブツが顔を真っ赤にして怒りの形相を浮かべる。さっきまでの嘲笑するような表から一転、まるで余裕がなさそうだ。

「ちっ! ボッチなお前に俺たちがせっかく聲掛けてやってんだぞ? 言うこと聞くぐらい當たり前だろうが!!」

うるせー。聲デカ過ぎ。

ホームルーム前とはいえ、ここまで騒いでたら今に擔任が來るぞ。

「あー、そう。なら、ボッチで良いから聲掛けないでくれ、君みたいに聲のボリュームも調整出來ない奴の言葉は耳障りな雑音にしか聞こえない……」

ブチッ、とデカブツの堪忍袋が切れたのが分かった。

隨分とまあ短期な小僧だな。

「何だとてめぇ!!」

びながら、僕の目の前に拳が迫る。

「本當にうるさいデカブツだな……」

その呟きの後。

ガッシャン、と機やら椅子やらが倒れた音が教室に響いた。

僕はといえば見事なまでに吹っ飛ばされて、倒れた機や椅子の中に沈んでいる。

靜まり返った教室。

口を開いたのはデカブツだ。

「………はっ、ざ、ざまぁみろ!」

思わず手が出てしまった、といったところか。頭が冷靜になって、人を毆ってしまった罪悪からか、し聲が震えている。

まったく……ビビるくらいなら最初から毆るなよな。

そんなことを考えながら、僕は何事もなかったかのように普通に立ち上がった。

「満足か?」

そう聞いてやる。

デカブツの顔が、今度は青くなっていた。

かなり強く毆られた。こいつもそれを自覚しているんだろう。

一瞬で再生したせいで傷一つない僕の顔を見て絶句している。

「それとも、本気で喧嘩をしたいなら軽く相手をしてやるが………」

僕は不死鳥だ。

いうなら、この世の生の誰よりも上位にある存在だ。下等な人間ごときと喧嘩するほど、落ちぶれてはいない。本當ですよ?

ただちょっとだけ本當にちょっとだけ………………あの頃の威圧を放ってみただけだ。

この日………僕が學んだのは、どうやら最上位の魔の威圧は、下等生にとって大小関係ないらしいこと。

そしてクラスの人間が全員気絶したら學級閉鎖になること。

いじめとは、簡単になくせるということだった。

そうやって平凡な日常を再び取り戻し、小學校生活もあと一年となったとき。

僕に、

「ホントに夕月って面白いわよね」

始めて友達が出來た。

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