《過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか》9話 過去に戻り後悔を拭うことは可能だろうか 3

「可憐さん。早く岐阜の病院に行きましょう」

可憐は目を丸くした。

可憐を岐阜の病院で院している可憐のおばあちゃんのもとまで連れていかなければならない。

今は13時、あと8時間後に可憐の祖母の容態は急変する。何の病気でどういったじに容態が変わるかは分からない。

本當だったら可憐は今日は學校を休み岐阜の病院に家族で行く予定だったのだ。しかし、今可憐は家出中のため、こうして學校に登校している。

このままだと可憐は後悔することになる。

もしかしたら容態が急変したことが原因で亡くなってしまう祖母に“家出”という理由だけで會えず、ずっと會うことはないかもしれない。

可憐は、あの時とてつもない後悔と自分に対しての嫌悪けんおかんを抱いたに違いない。

だが、今目の前にいる可憐はそんなことを知らない。

なぜならその可憐は“過去”の可憐だから。

「直斗、何で岐阜に行くの?」

「分かってるでしょ、おばあちゃんが院してること」

可憐は腕を組み、何かを考えるような様子をとった。

「何で直斗はそのこと知ってるの」

「それは…」

“未來から戻って來たんです”そういえば簡単だ、しかし、それを信じてくれるのだろうか。

また脳裏に可憐の泣いている姿が浮かぶ。

いや、そんなことはどうでもいい、今は伝えられることを伝えなくてはいけない。

頭痛も相まって俺はやけくそだった。

「俺は今日の23時から來たんです」

「は?」

可憐は組んでいた腕を解ほどき眉をはの字にしてその一文字だけを放った。

頭の上には特大の『?』という疑問符が見えないのに見える。『?』を一瞬背後霊と勘違いしてしまった。

師って見えないのにじるとか言ってるからこんなじなのかな

もう一度言おう

「俺は今日の23時から來たんです」

「は?」

あれ?過去に戻ったの?なんかデジャブ。

なわけないけど。

「えっとですね、その反応は分かるんですけど信じてしいです」

「いや、初めてそんなこと言われたからパニックなのよ」

「それは分かりますけど、とりあえず時間がないんです、今日の放課後には電車に乗らないと」

焦っていたのだろう。俺は訳の分からないジェスチャーをしながら何とか説得しようとした。

「話初めてししか経ってない人のことあまり信用しにくいわ」

「それは分かるんすけど今はそんなこと言ってる場合じゃないっていうか」

「じゃあ100歩譲って信じたとして、直斗はどうして未來から來たの?」

「可憐さんのおばあちゃんが23時頃に容態が急変するんですよ、だから早く行かないと…」

“最後に會えないかもしれない”という言葉が出そうになったがグッと飲み込んだ。

可憐は表を変えず俺の方をじっと見つめている。

「確かに私のおばあちゃんはし前から院してるわ、けれどそこまで悪い癥狀じゃないのよ」

「だけど!!」

怒気を荒げて聲を出してしまい、可憐はし驚いた表をしている。

「だけど…このままだと可憐さんは後悔をする、お願いします。俺を信じてください。」

晝休みはあとしで終わる。すでに予鈴は鳴っていて、校舎はおそらく生徒達が授業の準備をしているため騒がしくなっていると思う。

屋上だからそんな騒ぎは聞こえない。

聞こえたとしても俺の耳には全くってこないだろう。

俺はなぜこの人にここまでこだわるのかは分からない。たまに不思議になる。

人のために何かをする。そんなの中學校の頃以來だ。

「直斗って會った時からつまらなそうな目をしていて、態度も聲音もつまらなそうにしてる。けれど今の直斗は違うんだよね。それは見てると分かる。」

頭を下げている俺のつむじ辺りに可憐の優しい聲がかかる。

5時間目開始のチャイムが鳴った。

「本當に直斗が未來から來たのか、完全に信用することはできない、だけど今は信じるよ」

「なんで…」

自分がんでいた方向に傾いたのに、ついそんなことを聞いてしまう。

「だって直斗、目の下にクマ作ってるんだもん」

顔を上げると可憐がスマホのカメラ機能をオンにしてこちらに向けている。

おかげで自分の目の下にクマができていることが分かった。

「昨日寢たの12時くらいで起きたの7時くらいよね、普通だったらクマなんてできないよ」

「じゃあ…」

「行きましょう」

「…はい」

俺と可憐は、それぞれの教室に向かい調不良を訴えて早退するという戦法を取ることにした。

可憐が先に屋上から出たあと俺は視線をじた。

「寢不足だからな」

そんなことを呟つぶやき屋上を後にした。

可憐と渡り廊下で別れ、俺は二棟の自分の教室に向かった。

ふと思った、可憐のスマホのカメラ機能を見たとき、そこまでクマはすごくないと思った。気づくほどだろうか。実際に翔かけるは「クマすごいぞ」なんてことは一言も言ってこなかった。

俺も鈍ではない、もしかしたら可憐は俺の顔をよく見ていたのでは、とかめっちゃ思ってしまい飛び跳ねそうになる。

でも、そんなことよりも嬉しかったのは、可憐が俺のことを信じてくれたこと。

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