自分で言うのも忍びないのだが、中學3年時は同じ世代の中3よりも輝きを放っていたと思う。

當時の俺は、どんなものにでもなれる。そう思っていた。

マルチタスクは人口の2パーセントほどの人でしかできないらしいが、俺はその2パーセントにっている人財だと、本気で思っていた。

同黨どうとう中學校男子バスケットボール部は、県大會常連校ではあるがその先に行ったことはない。

けど強豪と呼ぶには十分だ。

部員數も60人近くで、試合に出られる選手は一握りだ。

“楽しいから”。ただそれだけの理由で部をして、やっていくうちに熱が次第にっていった。

小學校の頃は『水泳』『野球』『バレーボール』と様々なスポーツを験してきた。けれど、中學校に學するときには熱が冷めていた。

ただ部活にはろうと思っていた。

部活選びに迷っているときに同じクラスの翔かけるからの勧をけて一緒にバスケ部に部することになった。

俺はやがて、バスケにハマり、心から好きと思えるようになり、そのと同等の努力を惜しまなかった。

日々毎日欠かさず努力を重ね、2年生になったとき、努力が報われて“エース”という期待を背負い県大會を一位通過した。

その努力が報われるには時間がかかり、すでに選抜選手の選考は終わっていたため、県の選抜には選ばれなかった。

けれども、活躍していくうちにそれ相応の知名度がについた。

その年も、翌年も、北信越大會を勝ち抜き、全國大會に出場した。そこでは惜しくも敗北を著したが、異例のベスト16位にることができた。

同黨中學校では歴代最高の績で、周りからの評価も高く、高校の推薦もいくつか來ていた。

実際にその推薦の中から１つ選び進學をした。

けれど、そこからだった。

そこから俺のプライドは壊滅し、自分らしさを見失い低迷した。

遂には多くのものを捨て逃げ出した。

「どうやら本當らしいね。その、疑ってごめん」

「気にしてねーよ」

バスケを辭めた理由などは話さなかったが、俺が中學時代どんな選手だったかをざっくり話した。

遙希はるきは先の１on１で俺の技量からそのことを信じ、今こうして頭を垂れている。

「だから直斗先輩は中學校の中で有名人だったんだよ！バスケの他にも…」

「菜月なつきもルックスで人気だったじゃないか、特に先輩に」

菜月の最後の言葉を遮るように俺は口を開いた。

「そ、そんなことないですよ！」

菜月は顔を赤く染めて慌てたように両手を振った。

「…………」

顎に手をやり遙希は何か考えている。

「ん、どうした遙希」

「いや…ちょっと菜月」

「え、あ、ちょ…」

強引に菜月は遙希に引かれ俺とし離れた位置にまで持っていき、菜月に顔を近づけて何か言っている。

「…………」

「そ、そ、そ、そそそそそそそそんなことないよ！」

菜月は遙希から一歩引き再び顔を赤らめた。その姿を遙希はじーっと見て蠱的に微笑み

「なるほど…分かったわ」

「遙希ちゃん怖いよ…」

菜月にそう言われた遙希は微笑みだけを返して、近くに落ちていた子用の6號球を拾い上げ俺に歩み寄る。

「ねえ、直斗、その“停滯期”ってやつから抜け出すれるように手伝いなさいよ」

「手伝えって言っても練習しまくって自信を持つしかねーぞ」

「はあ？さっき『力になる』ってキザっぽく言っていたじゃない」

「う…」

あれはよくあるスポーツ漫畫のカッコイイシーンを自分なりに演じただけであって、深い意味は…

「ま、まあ、遙希はシュートがらないのが問題なんだろ？」

「そうよ」

「それ以外は？」

「問題ないわ」

よかった。ドリブルや判斷力の停滯だったら俺は専門外だ。 

俺がやっていたポジションはパワーフォワード。けれど中學校の時はセンターを中心にやっていた、だからドリブルはそこまで使わなかった。練習したけど

結局その日はシュートのる覚を復習させた。

18時を過ぎた頃に小から出る。

「その、今日はありがとう」

「まーお前の停滯期はなんとかなるだろ」

「かもね。じゃ…」

遙希はそう言って再びシュート練習を始めた。

結果、遙希はシュートを連続で決められるようになった。

やはり停滯期は気持ちの問題でしかなく、容易たやすく抜け出せるのだ。でもここまでシュートが上達するとは思わなかった。

「2人はまだ練習していくのか？」

「はい！していきます！」

り口に殘った菜月が元気よく答える。

「そっか、頑張れよ」

「はい！ありがとうございます！それと…」

「どうした、菜月」

「えっと…何か困ったことがあったら言ってくださいね…」

俺は菜月のその言葉に、まるで噓を見抜かれたかのような覚に襲われる。

やっぱり、過去に戻ったとしても俺と関わっていた人はある程度記憶が殘るのかもしれない。

「どうして？」

その疑問をしでも正確なものに近づけたかった。

「んー…よく分からないんですけど、直斗さんが疲れ過ぎて保健室で倒れるように寢ている景が頭に広がったというか…」

おそらく、確信しても良いのだろう。

「そっか」

「い、いや、なんか変なこと言ってすみません！」

「そんなことないよ、心配してくれてありがと、何かあったら言うよ」

「そうですか…よかった…」

俺は「じゃあ」と言って踵きびすを返した。

「あ、まだ待ってください」

この子に引き止められるのは何回目だろうか。

「ん？」

「そ、その…」

可憐はポケットからスマホを取り出し、し大きく膨らんだの前に持ってきて、モジモジしている。

「何か…あったとき…には遅いかなって…」

その姿に俺は懐かしい記憶が蘇る。

中學生のとき、菜月はこんなじで俺に相談に乗ってしいと頼みに來たっけ

「何かあったらじゃ遅いから連絡先でも換しとくか」

今回は俺がその役を引きけよう。

「は、はい！換しましょう！」

『新しく追加された友達』という欄に“高春菜月たかはるなつき”という表示がされた。