《異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??》果合
「んなっ…!」
鳴り響く音。
だが、人々は一瞬驚くと、すぐに池の方へと駆け寄ったのだ。ここはアミューズメントパーク、発をショーやアトラクションの一つだと思ったのだろう。駆け寄る誰もが嬉々とした表を浮かべており、自ら死へと向かっているなんて思いもしない。
「おい!みんな!そっちは危険だ!」
「近寄るな!死ぬぞ!」
コウジとサナエは犠牲者を一人でもなくするために聲を張る。だが、歓聲や絶の中でその聲は意味を持たない。
「チッ…。どうやら、お前が那原マサタで間違いないみたいだな…」
確かな怒りを込め、パーカーの年を睨む。
年は不適に笑うと、コウジとサナエの立っている通路に沿って立てられた、洋館のような三階建てのショップにその手を向けた。
すると次の瞬間、ショップの二階の窓から斜面を作るように巨大な鏡が現れる。否、建の二階部分の床と天井の間の空間に、割りるように鏡が生み出されたのだ。
一瞬、なにが起こったか理解ができない。
しかし、驚くべきは二階部分から上が、斜面をるようにき出したのだ。
コウジは建の元へ駆け寄り、右手を天高く突き上げ、そしてんだ。
「開華!〈等重変換Equal Dead-Weight〉!!」
アテスターが輝き、両手に黒と白の炎が燈る。
墜落してきた建にれた瞬間に、それは消え失せ、別のを生み出す。
鈍の網目狀のドーム。ウルツァイト窒化ホウ素と呼ばれる、質な質で網狀のドームを作る。これにより那原マサタは、同じ手で人を危険に曬す事はできなくなる。
もっとも、彼の才華の程が遠方まで屆くのなら話は別だが、眼前に才華を持った人間が2人いるにも関わらず、遠くで能力を展開する可能は低い。
加えて、建が崩落する様を見て、これがアトラクションなどでは無いと理解した一般人は、悲鳴とともに逃げ去っていく。
幸いなことに、あのショップは二階部分から上はフェイクで、人が立ちれるのは一階部分だけだったため、怪我人は出ていない。
すると、
「てめえの言う通りさ。俺が那原マサタだ」
前方の年───那原マサタが、そう聲高に宣言した。「…野郎……」
そう言いながら、コウジがマサタの元へ歩を進める。
だが、その足取りは止められた。目の前に突き出された腕によって。
「塚田。私一人に遣らせてくれ」
「え?ここは二人でやった方が…」
「…頼む。塚田はそこで見ていてくれ」
サナエがマサタへ向かい、ゆっくりと足を前へと突き出す。そして、サナエは振り向きざまにこう言った。「もし私が彼に負けたら、彼を殺してくれ」
「お、おい!」
その聲虛しく、サナエは抜刀し、鋒をマサタへ向けた。
「良いぜ…てめえから殺してやる」
するとマサタは、背中から長い棒を取り出す。しかし、その先端には刃が取り付けられている。
それはまさしく……………薙刀である。
マサタもまた、その鋒をサナエに向ける。時が止まったかのように、沈黙が空間を満たした。
互いに相手の隙を窺っている。
一即発の空間。それを壊したのはマサタだった。「うぉおおお!!」
その右足を、一歩踏み出す。瞬間。マサタの足元が発する。
否、発では無い。高速でが衝突したのだ。
マサタが足元を見下ろす。
そこには、子供用の小さなペンライトが落ちていた。
「…………武道の心得も為っとらん不屆き者が…」
腹立たし気にそう言ったのは、他でもないサナエだ。
一、どんな理屈なのかは理解できなかったが、どうやらペンライトを高速で飛ばしたのはサナエらしい。
「武道は、禮に始まり、禮に終わる。そして、禮が出來ぬ者を『失禮』や『無禮』と罵るのだ」
サナエはそう言うと、一度刀を鞘に収める。そして、マサタを見つめる。
マサタも何かを察したように、薙刀を立てる。
二人は見つめ合う。すると、どちらからともなく頭を垂れた。
打ち合わせでもしたかのように、ピッタリのタイミング。を起こした両者は相手の目を見據えたまま、三歩前へ出る。
それから刀を抜き、鋒を向け合い、背筋をばしたまま膝を折る。蹲踞だ。
二人は全く同時に立ち上がる。
そして、膝がびきったその瞬間に、サナエが一瞬にして斬りかかった。
容赦など微塵もない、殺意の現のような一撃。
しかし、マサタは柄でそれをけ止めた。
ギャン。異質な金屬音が響く。
素人目に見ても、明らかにハイレベルだ。
だが、何より恐ろしいのは、両者とも才華を持っているという點だ。才華の都合次第で、勝敗は大きく変わる。
そんなことを考えながら、二人の死合を見ていると、背後から聴き慣れた聲が耳を抜けた。「コウジくーん!」
振り返ると、そこにはレンタとヒカリが駆け寄ってきていた。
「レンタ!?ヒカリ!?なんでここに!?」
「2人が不安で追いかけて來たんだよー」
「ま、まあ、コウジにケガされても困るし…」
恥ずかし気な聲でヒカリが、間延びした聲でレンタが言う。2人はコウジの背後の戦闘に目を向けた。
そして、コウジにこう言った。
「一旦ここから離れよう。ここは危険だ」
「な、なんでだ…?」
「鵞糜さんの才華は、しコントロールが難しいんだ。あまり近すぎると、僕らも怪我をするよ」
「説明してくれ、鵞糜の才華は一どんな能力なんだ…?」
「彼の才華は──────」
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