《不老不死とは私のことです》學式編 9話
質柄、不老不死とは何か?とよく考えることがある。文字通り、老い不ず、死な不ず。
首を切り飛ばされても死なないどころか、のほとんどを喪っても再生する生命力(?)。
不老かどうかはまだ測定不能だけど(私はまだ17歳だし、そもそも不老不死になってから10年しか経ってない上に、幸いなことに今までは普通に長している)、クロエに言わせれば、それもほぼ確定だそうだ。何でも、同じように不老不死になった人間を知っているらしい。
その人間は、大高校生くらいの外見年齢から50年は変化しなかったらしいので、私の外見はここからは老化しないことが予想される。
私の場合、不本意だが経緯は々間抜けなもので、い頃、山中に置き去りにされ(るという訓練をし)た時に、やけくそで食べたものが々所ではない劇薬だった、というだけだった。
當初、あらかじめ日を決めて行おうとしたこの訓練も、私が絶対に首を縦に振らなかったために、寢ている間に強引に山に放り込むという信じられない鬼の所業をもって行われた。
暫くはこのトラウマのせいでぐっすり睡出來なかったくらいだ。普通に待だと思うんです、これ。生まれた子を谷に突き落とすっていうライオンでも、落とす前に予告すると思う。筆舌しがたき鬼畜である。
そんな経緯で、當時置き去りにされた埼玉県の山中で、私はり輝く金の林檎を見つけた。
暗闇の中、燦然と輝く以外は普通の林檎……明らかに怪しすぎる景である。そもそも何であんな所に林檎が生えていたのか。怪しすぎる。
だけど、無理やり置き去りにされた事に加えて、暗い森やその闇を今にも抜けてくるかもしれない異形種への恐怖、何よりいつも通り家に居たならば験する事など無かった筈の空腹に、やけくそになったい私は、あろう事かそれを捥いで食べて、その瞬間意識を失った。
泣いても笑っても、私が覚えているのはこれっきりである。(ぶっ倒れた私は、即座に父によって回収されたらしいけど、置き去りにした事、私は絶対に許さない)
勿論當時の私は知らなかったことだけど、その林檎は【不老不死の果実】と呼ばれる寶中の寶だったらしい。効能は至ってシンプルで、「口にすればその者は不老不死になる」。ただそれだけ。
だけど、その効用をする馬鹿共は主にお金持ち達に多いらしく、これがバレた時は彼らに散々嫌味を言われたものだ。
その価値、時価にしておよそ50億円。
私だってそれを知った時は、「ちょっと待って、売っただけで一生遊んで暮らせるの知ってたら、當たり前に売ったわ!」と悲鳴をあげたものだ。そうでなければこんないわく付きの品、口にする訳がないのである。
何よりもそんな寶が、よりにもよって埼玉の山中で元気に野生化しているだなんて誰も予想しないじゃないかと、とても文句を言いたい。
目的地の、重厚な扉の前に2人で立つ。
「羽鳥と黒江です」
「……」
ノックをして名を告げた。黒江の分まで私が名乗るのはいつも通りだ。この男は一貫してやる気がない。
今だって著ている執事服のポケットに両手を突っ込んでだらりとしているのである。仕方ないといえば仕方ないけど。
「來たか、れ」
間を置かずに中から返事があった。扉を開けて一禮する。
「お早うございます、蒼樹様、柚様」
部屋の中には男が1人ずつ。磨き抜かれた重そうな書斎機についた男と、その橫に立つ高専の制服姿の。
なお、偉そうな男の方が當主、蒼樹様であるが、前に組んだ腕でちょうど口元を隠しているゲンド〇ポーズをしているせいでちょっと面白いことになっている。
ちょうど窓からる朝ののせいで逆だ……頼むから私の腹筋を試すのは辭めてしい。
「ギャハハハハ!それゲンド〇ポーズじゃん!!人類補〇計畫でも始させんの?!ギャハハッ!」
リアルプギャーな表の、敬意を欠片もじさせない黒江の言葉が無遠慮に響き渡った。ちょっと、せめて大人しくしてろって言ったでしょぉぉぉぉ!
「……」
「………」
「…………」
一瞬、靜寂が部屋の中を満たす。腕を組みなおした蒼樹様の眼鏡がキラリとった。
「……お前には失した」
こっちは必死で耐えてるのに、真面目な空気でノッて來るの辭めてください、蒼樹様!
結局崩壊した私の腹筋が元の調子を取り戻すまで5分の時間をロスする事になった。笑っちゃいけない空気のせいで、よく良く考えれば大して面白くない事が面白くじてしまうアレですね。兇悪すぎる。
ちなみに柚様は一人訳が分からなかったらしく、キョトンとしていた。500年前のアニメとはいえ、これは不朽の名作。主人が常識を知らないと言われては(一応)メイドの恥なので、後でスピードラーニングしておこうと私はこっそり心に決めたのだった。(建前)
後、こう言っておけばアニメの記録を取り寄せても経費で落としてもらえるのだ。(本音)
「それで、首尾は順調だな?」
「は、はい。既に先行チームとは連絡を済ませています。全員無事配置に著いたようです」
「そうか、ならばいい……」
れた息を整えながら、やっとの事で返事をする。だって蒼樹様この人、普段はピクリとも笑わないような人なんですよっ!あんな一面があるなんて思いもしなかった。
常日頃から、仕事は出來るがどこか緩い雰囲気のある父と何でやっていけてるのか疑問でしたが、この點を見るに案外イメージとは違っていたのかもしれない。
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