《桜雲學園の正不明《アンノウン》》33話 夜の學校 待ち合わせ
夜の9時30分。
本來ならテスト勉強をしようと思っても、なんとなくスマホをいじってしまっている時間帯。
俺は學校に向かっていた。
晝間は気にならないけど、やっぱり夜になると風が冷たい。
この時間帯に出歩くことなんて初めてだけど、普段と違った靜かな街の様子になんとも言えないを抱く。
家を出るとき直子なおこさんにアス研だと伝えたら、妙に納得されたから普段からおかしなことをしている部活なんだと思うけど、こんな夜中まで呼び出されるとは思わなかった。
お化け屋敷なんて子供が楽しむものだと思うけど、この學校は々と特殊だし、テニス部みたいなタレントをフルに活用したところまである。
もしかしたら、お化け屋敷研究會もタレントを使ってよりリアルな仕上がりになっているのかもしれない。
「お~い、景~」
曲がり角を曲がって、校門まで一本道のところに差し掛かると、靜かな夜の桜雲によく響く、明るい奈の聲がした。
よく見ると校門には俺以外のアス研メンバー全員が揃っている。
慌てて時間を確認するけど、約束の10時までは20分程余裕がある。
「遅いぜー石崎、祭りに出遅れるなんて男が泣くぜ」
誰が見てもわかる噓泣きをしている海崎。
めんどくさいので無視する。
「みんな早いな、集合は10時だったよね?」
「ええ、ちゃんと間に合ってるわよ」
「無視しないでくれ~」
涙目になって懇願する海崎。
こういう構ってちゃんは、反応すると後がめんどくさい。
「ごめん、暑苦しいのは苦手なんだ」
「右に同じ」
奈が言う。
「ん~、私も暑苦しいのはちょっと苦手かな~」
し苦笑いを浮かべた志穂奈も同意する。
「·········黙って·········」
風花さんは短く切り捨てる。
「みんな當たり強くないか!?」
そう言って、海崎は校門の端っこで育座りを始める。
気にする者は······誰もいなかった。
「あー、えっと、お取り込み中でしたか?」
見知らぬ男子生徒が話しかけてきた。
校門の中から來たから多分、お化け屋敷研究會の人だろう。
「こっちの準備は全員終わっているわ。いつでも始められるわよ」
「それは良かったです。僕たちの準備も終わったので、し早いですが始めましょうか」
「分かったわ、2分後にるから伝えておいて」
「了解です」
男子生徒はそそくさと校舎の中にっていった。
「って訳だから、もう始めるわよ。校舎は広いから、私と風花、景と志穂奈のペアに別れて進みましょう」
「あれ? 一人忘れてない?」
隅っこで育座りをしている海崎の方を見ながら、奈に尋ねる。
さすがに仲間外れは可哀想だ。
「問題ないわ。海崎は別行よ」
どうやら忘れ去られていた訳ではないらしい。
ほっと一安心していたら、いつの間にか近づいていた海崎が耳打ちしてくる。
(おい石崎。部長のペアは誰だ?)
ふてくされていて、聞いていなかったらしい。
(風花さんだけど、それがどうしたの?)
(いや、お前も知ってるだろ? 部室って大のお化け嫌いなんだよ。副部長くらいしか止められないからな。部長と副部長がペアなのはいいんだが、となると七星さんのペアは石崎だよな?)
(そうだよ)
(気を付けろよ)
(何を?)
「景、時間よ」
時計をこっちに向けて、約束の2分が過ぎたことを教えてくれる。
「じゃ石崎、くれぐれも七星さんとはぐれるんじゃねえぞ」
俺が止める間もなく、最後に不吉な言葉を殘した海崎は、なぜか満面の笑みで校舎へと向かった。
「ほら、早くしないと今日中に終わらないわよ」
確かにあと2時間程で明日になるのだから、ここで時間を潰していてはいけない。
なにか腑に落ちないことがあったけれど、俺は急いで奈たちのところに向かった。
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