《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第14話 弁
「おいおい! 一何があったんだ ︎ 今の怒鳴り聲は誰だ? 職員室にまで聞こえてきたぞ!」
教室の扉を勢いよく開きながら、怒りと不安がり混じった口調と表をした渡部先生がそう訊いてきた。
——ていうか、職員室?
この教室から職員室までの距離は分からないけど、早歩きでも三十秒は掛かる。そんな距離からでも聞こえていたなんて。
彼の聲量がどれほど凄まじかったかを改めて実した。
それはさておき、この狀況を先生にどう説明したらよいだろう。
私が彼の名前を間違えて呼んでしまって怒鳴られましたなんて言い訳が通用するとは思えない。全國的な苗字である『山田』をどう言い間違えられようか。
それにそんな事で相手が怒鳴るはずがないと更に問い質されることも目に見えている。
「先生、今の聲山田ですよー」
「なんかいきなりんだんすよー」
「何? 山田、どういう事だ! 何があったか説明しろ!」
男子生徒の証言を聞いた渡部先生が山くんを追求する。しかし、
「………………」
當の本人は知らぬ顔の半兵衛である(顔は見えないけど)。
黙するつもりなのか……、事の発端は私なのだけれど、大聲を出して話を大きくしたのはあなたの責任。
ちゃんとした説明を私としてもむところなのだけれど。
「何だ山田、話せないのか? このまま黙り続けて次の授業に行くのは許さんぞ」
「先生、そう言えば、山田くんは——海野さんに対して怒鳴ってたと思うんですけど……」
「え……、海野に? それは本當なのか、海野?」
「えっ……」
何という流れ弾。いつかはこちらに追及の言が來るだろうと思ってたけれど、時期が尚早ではないか。
「海野、山田と何があった? 転校してきて間もない生徒と言えど、君のような模範生がクラスメイトと問題を起こすなんて考えもしなかった。
山田が黙っている以上、君が答えるしかない。教えてくれ、海野」
「いや……、あの……えっと……」
どうしたらいい? この場面でどのような言葉を選べばいい?
正直に名前を言い間違えたと言おうものなら確実に疑われる。山田なんて姓、言い間違える方が難しい。
この解答は愚答だろう。
問題は他にもある。仮に別の言い訳を考えたとしよ
う。
先生は納得して下さるだろうけれど、クラスのみんなにはそうはいかないだろう。
何故ならみんなははっきりと彼の言葉を聞いてしまっていたから。そう、
——「私をその名で呼ぶな」
誰がどう聞いても名前を間違えたのだと思うだろう。
もし違う言い訳を言おうものなら、誰かから矛盾點を「異議あり ︎」と言わんばかりに指摘されてしまうだろう。
やはりここは、正直に言うしかないのだろうか。
客観的に見てもおかしな間違いであるけれど、事実、本當に間違えてしまったのだから仕方がない。
もし問い詰められたら、剎那的な考えだけど、後でいくらでも考えればいい。
よし、私自も噓をつくのは嫌いだ。早速説明しよう。
「あの、先——」
まで言いかけた時だった。
「いや、申し訳ありません。先生」
今まで黙を続けてきた山くんが私の言葉を遮るように突然口を開いた。
「いかにも、先ほどの怒鳴り聲は私でした。ですがもちろん、理由がございます。それは、私の隣の席の委員長さんが、私に挨拶をしようとした時、下の名前の「」と呼ぼうとしたのです。
この際ですから皆さんに伝えておきます。私はですね、親しくもなく信憑が皆無な人に対して馴れ馴れしく接されることが大嫌いなのです。蟲唾が走ると言っても過言ではない」
先ほどまでの沈黙は何だったのか、つらつらと熱弁するではないか。
寡黙な彼しか見ていないクラスのみんなは意外と困がり混じったになり、目はコンパスで寸分の狂いもなく書き上げた丸のようである。
「なかなかクラスの皆に話す機會がなくてですね。かと言って一人一人話していくのは草臥くたびれる。なので、大聲を出してわざと騒ぎを大きくし話す機會を得るという手荒い方法を取ってしまいました。
皆さん、朝早くから迷をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
と言った後に、彼は深々と頭を下げた。そして頭をあげた彼は先生の元へ詰め寄り、こう締めた。
「渡部氏、この度の騒、私の勝手な判斷ならびに不手際によるものです。誠に申し訳ありませんでした。
それによりホームルームの時間も割かれてしまいました。お叱りは後でいくらでもけます。ですから、私のような愚か者ためにこれ以上貴重な時間を割く必要は今ありません!」
彼は深々と頭を下げたのだった。
あの短時間でよくこんな言い訳が思い浮かんだものだ。數々の依頼を遂行してきたであろう彼の臨機応変の対応力あっての結果だろう。
そして、最後まで話を黙って聞いていた渡部先生は不敵の微笑みを見せた。
「フフフ……、何だそういう事だったのか! 自分の事をしでも知ってもらおうとお前なりに考えたんだな。
配慮も忘れずきちんと謝罪までする徹底ぶり、恐れった。だから、今回は大目に見てやろう。
だが、今回みたいな事は二度とないようにしてくれよ? 何かあったんじゃないかと気が気じゃなかった。
もうすぐ一時間目も始まってしまう。今日の予定だけ伝えて、今日のホームルームは終わりにしよう」
そう言い先生は手短に話を終えると足早に教室を後にしたのだった。
と同時に、一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。一時はどうなることかと思ったけれど、彼の機転によりこの場は丸く収まった。
かとも思われたけれど、先生が教室を後にしてから、不穏な空気はふつふつと、そして先ほどよりも濃く、沸き立っている気配を、私はじ取っていたのだった。
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