《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第37話 摑めぬ塔
「おやおや、これはこれは? 何時ぞやの眼鏡っ子ちゃんじゃないの。確か名前が……海野蒼だったっけ? しっかりと憶えているよ」
「塔、そのようなどうでもいい話は置いておいて、早く例のを寄越すのだ」
「ちょっと奇鬼、久し振りに再開した恩人に対しての第一聲がそれ? 昨日だっていきなり電話してきたと思ったらこれだからさ……。それにお前、俺の方が年上なんだからちゃんと敬語を使って――」
「ちょっと待って山くん あなたこれは一どういう事 」
その時私は久し振りに本気で怒った。憤慨していた……激怒していた……
山くんがこの人の名前を伏せて催眠ガスを作るよう頼んだ事に対してではない。
彼がこの人との深い関係を隠していた事に対してだ。彼は白臣とはちょっとした知り合いだという風に聞かされており、彼も白臣の事をかなり敬遠している風だったので々近所付き合い程度の関係だとばかり思っていたのだ。
しかし実際は違い彼と白臣は互いに下の名前で呼び合う程の舊知の仲だったのだ(しかもタメ口で)。
「どうしたんだ委員長? ずっと黙っていたと思ったら急に怒り出して……」
「何で? どうして黙ってたの? あんなに私に再三再四この人には気を付けろって警告してきた癖に! あなた自もこの人の事を避けてる風だったのに! いざ蓋を開けてみたら命の恩人 あなたの行と臺詞が一致していないよ 」
「いや、私は塔の診察だけはけたくないと言っただけで別に避けていた訳ではない。あと命の恩人と言っても所詮腐れ縁に過ぎぬ。あとあの時話した容は全部ホントの事だぞ? そうだろう? 塔」
「取り敢えずお前の発言に対し々と突っ込みたいところがあるけど、まずはお前の質問に答えよう。まあ、あの時話した容ってのが何だかは知らないけれど、大は想像がつく。単刀直に言おう――本當だ」
「…… 」
「悪いね眼鏡っ娘ちゃん。実は俺と奇鬼は大親友だったんだよ。だから奇鬼に連絡しようと思えばいつでも連絡出來た訳だ。
では何故俺は學校の校門の前で待っていたのか? ご察しの通り、奇鬼を出しに君を拉致ろうと思ったんだけれど、あの時の剣幕が君の清楚なじとのかなりのギャップをじ気圧されて退散してしまったんだ」
では、あの時私がこの人を退ける事が出來なかったら今頃私はこの世にいなかったって事? 寶石店の帰りだってそうだ。山くんの言っていた通り、生きてて良かった……と改めて私は今命があることに謝した。
「だが殘念だよ、眼鏡っ娘ちゃん。まさか君につかれていただけじゃなく、奇鬼と既にそんな関係になっていたとはな……。奇鬼、俺は嬉しいやら悲しいやら……」 
「え お二人ともそうだったんスかぁ 」
「お前ら何勘違いしてんだ 」
「あなた達何勘違いしているんですか 」
珍しく山くんと意見が一致した上に若干ハモった。というか白臣の勘違いや臆助くんの早とちりもわざとらしいくらい甚だしい。何処をどういう風に視覚から読み取った報を脳に送り処理したらそういう風に解釈できるのだろうか。そして私は何回も同じネタを用しない!
「ま、奇鬼と関係がある以上、俺も君に手出しは出來ないね。だから安心して。ところでそこにいるノッポ君は誰だい? 君は初めて見るね」
「はいッス! 俺っちは捨間臆助と言いまッス! こう見えて小六ッス! 奇鬼さんには三年程前からお世話になってるッス! あの、白臣さん! 不躾である事は重々承知の上ではあるッスが、是非俺っちと友達になってくれないッスか?」
「ばッ おい臆助!」
「いいじゃないか奇鬼、こんな好青年が俺みたいな奴と友達になってくれって懇願してくれているんだ。それを斷るなんて彼に対して失禮だろ? それにお前と関係のある奴には手を出さんとさっき言ったばかりだろう? 取り敢えずまずは握手だ、ノッポ君」
そう言い白臣は臆助くんに対して手を差し出した。臆助くんは喜んで両手を差し出し白臣の手を握った。臆助くんの手が子供並み(事実子供なのだけど)に小さく見える。すると白臣の表が緩み、ニヤッと嗤った。
「ほう……、君は良い臓を持っている……。健康な証だね……。君とは三年前に出會っていたかったものだ……フフフフ……」
「え? ななな何スか? 喜んでいいんだかどうだか微妙なじッスねぇ……」
「曲がりなりにも俺は醫者なんだ……俺の言う事に間違いはない、絶対だ」
臆助君の手を握っただけでの健康狀態を判斷した どんな特殊能力 それとも闇醫者ならではの勘? どちらにせよ臆助くんが山くんと出會ってくれていて良かった……。
「おい塔。私たちには時間が無いんだ。仲良しごっこが済んだのだったらさっさと例のを渡して早くどこかへ消え失せろ藪醫者!」
「まったく……、ホント相変わらず言葉遣いがなってないね。それに俺は藪醫者じゃなくて闇醫者だ!」
闇醫者である事は認めるんだ……。
「ほら。俺が調合した麻酔薬で作った特製の催眠ガスだ。一息でも吸い込んだらたちまち昏睡狀態に陥るだろう。だが原料である麻酔薬があんまり用意出來なかったから三つしか作れなかった」
そう自慢をえながら片手に持っていた鞄から取り出したのは手榴弾のような形をした三つの容だった。この國なら所持しているだけで用になりそうな形をしているそのの中に、劇薬と言っても過言ではない薬品から作られた気がっていると考えると慎重に取り扱わなければこちらにも危険が及んでしまう。そしてそんな危険を今から私が取扱い投擲しなければならないこの重責。本當に重い。
「そいつを使う際は先っぽに刺してあるピンを外してから投擲しろ。手榴弾と同じだな。そして最も注意しなければならないのはピンを抜いたら有無を言わせず、躊躇せずに直ぐに投げた方がいい。でないと自分自が眠っちまう事になるぞ? 永遠に」
「最後の一言余計だ、変なプレッシャー掛けてやるなよ……。委員長が可哀想だ」
「ほえ~、何だ眼鏡っ娘ちゃんがこれ使うのか? また大変な仕事任されたものだね。奇鬼、あんまり無茶させるなよ? 眼鏡っ娘ちゃんはの子なんだ……気遣ってやれ」
「…………」
「おや? 無反応かい? オジサン寂しいねぇ……」
既にお気付きかもしれないけれど、私はこの人の事が……白臣塔の事が苦手だ。
言い方が悪いけれど、嫌いしているのだ。理由は解らない。ただ何か嫌なのだ。今さっき白臣は私に気を遣ったつもりだったのかも知れないけれど、余計な世話だ。
確かに大変な仕事かもしれない……責任重大かも知れない……。けれど私はやれと言われた事は必ず責任を持ってやり遂げられるという自信は持ち合わせているつもりだ。長年委員長を任されてきた経験の賜と言ってもいいだろう。
「ま、今回は三人で依頼をするようだが、本當にあまり無茶するなよ? 奇鬼は本當に人使いが荒いからな。それにお前らはまだ學生だ。若いうちは羽目を外したくなるのが若者のだが、そんな事で人生を棒に振るようなことはしない方がいい。でないと俺みたいになるぞ?」
「フッ……、お前に心配される程私は衰えてはいない」
「右に同じです。それに景浦君に使われる事なんて當然。私は彼の助手なのですから」
「俺もッス! 俺も浦景さんの為なら例え矢の中槍の中剣の中ッス 」
「ハハハ……。全く、どいつもこいつも素直じゃないな。世間の常識では年長者の意見は尊重するものじゃなかったのか?」
「そう言えば、白臣さん……失禮ッスがあなたって一幾つなんスか?」
「俺? いやいや、君たちみたいな若者からすれば完全にオジサンだよ。二十代ではないとだけ言っておこうか」
「お前確か今年で三十二だろ? 確かにもうオッサンだな」
「ちょッ! 奇鬼! 何勝手に人の個人報公開してんだ! リアルだからやめろ!」
へぇー……、確かに気にはなっていたけれど、この人三十二だったんだ。確かにもう若くはないかもしれないけれど、見た目のやつれ合からは想像できないくらい若くじる。
人は見かけによらないものだと改めてじた。
「マ……マジッスか……? 三十二って俺の母さんと同い年じゃないッスか……」
「隨分若いお袋さんだな。だとしたらお袋さんは君を二十歳で産んだことになるな……君みたいな図の男の子を産んだお袋さんの苦しみを思うと、俺は何故だか泣けてくるよ」
ならばあなたのお母さんはどれ程の苦しみを味わったのだろうか、普通の出産ですら大変な苦しみだと言うのに。験すらしたことないので一概には言えないけれど私だったら絶対に耐えられない。
「じゃあ、後は君らの好きなようにやるがいい。奇鬼、久し振りに會話出來て楽しかったが、お前はやはりもうし年上を敬うという常識をに付けた方がいい」
「闇醫者に常識を問われる筋合いなどない。それに私はもう世の中の常識も糞も無いのだ。こうやって今まで生きてきた報いというやつだ」
「ハハハ。それもそうか……だがせめて俺の名前くらいはさん付けで呼んでほしいものだね」
「……解った。じゃあ今度からお前の事は塔さんと呼ぶ事しよう――っていう気に全然させないのはある意味お前の才能かもな!」
「ふっ……そんな事ないって」
「 」
何今の返し 凄いプラス思考! 初めてこの人を見習いたいと思った!
「そしてノッポ君に眼鏡っ娘ちゃん。君たちにもまた機會があったら會いたいものだ。次會う時は……奇鬼との関係が切れていることを期待しているよ……」
そう背を向け出口の方へ歩きながら話し、白臣は出て行った。
山くんとの関係が切れていることに期待――背筋に悪寒が迸った。
あの人の言葉の本気度が背中からでも十分に伝わってきた。なくとも山くんの助手である以上はあの人の餌食にならずに済むことが解って一まず安心はできたけれど、彼に解放された後には毎日あの人から逃亡し続ける生活が待っていると思うと、が塞がる覚を覚えた。
「さて、これで準備は全て整った。よし! では早速現場に向かうぞ!」
お前ら遅れるなよ! と言い景浦君はいつもの神速の如き腳力で思い切り走りだした。遅れるなと言われてもそんな速さで走られては絶対に追いつけない。
せめて言うならば「何処に何時までに來い」と言うべきだろう。
「ああ! 待ってよ山くん!」
「奇鬼さん速いッス もうしスローで頼むッスぅ 」
私達の必死の呼び止めも虛しく、開かれっぱなしになったロビーの扉の前に行き外を見た時には、彼の姿はもう何処にもなかった。
「……もう! 何で人のペースに合わせられないかなぁ!」
「しょうがないッス。奇鬼さんの腳力に付いていける人間なんてこの世にはいないッス」
しかもあれでまだ本気出してないんスよ。と臆助くんは肩をガックリと落としてそう言った。あれで本気じゃないって……、今度本格的に陸上競技部に話を付けておこうかな……。
「仕方ないね。私たちは私たちのペースで行きましょ? 臆助君」
「はいッス。ていうか俺った何処で作戦実行するか教えられていないんで海野さんと一緒じゃないと何処行ったらいいか解んないッス」
道案頼むッス。と臆助くんは深々と頭を下げて頼んできた。本當にしっかりした子だ。そして何より従順で可い。弟でも出來た気分だ。
私達は自分達のペースでゆっくりと歩き出した。確かここから隣町の寶石店までは歩いて電車で行っても一時間くらいで著いた筈だ。だからそんなに急ぐことも無い。前から思っていた事だけれど山くんは時間に対しての管理が厳しすぎる。そんな風に毎日忙しなく暮らしていたら気が休まらないと思うのは私だけだろうか。
彼にとって一日はほんの僅かな時間にじるのかも知れない……矢の如しとは彼の為にある諺ことわざなのかも知れない……。そんな他もない事を考えながら、私は臆助くんと一緒に隣町に向かう駅へと向かっていた。
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