《高校生である私が請け負うには重過ぎる》第54話 哂う男
「お前は……! 何で學校に來てるんだ!? お前は今処分をけて停學している筈……!」
「それも昨日で終わりだよ。今日から何のお咎めもなく普通に登校できるんだ。そんな僕を祝福してくれてもいいだろう?」
前髪を掻き上げながら誇らしげに目の前の男子生徒は笑みを浮かべそう言った。
いや……、謹慎していたのだから、なくとも祝福と言うよりは、勵ましの言葉を送りたいところなのだけれど……。
「いや……お前は懲りぬ男よ。またやらかすに決まっている……!」
「それはどうかな? 僕は気紛れだからね。自由気まま徒然なるままに行するのが僕の分だからね」
空手部の錚々たる(多分)面々を目の前にしても怖じなど微塵もしない。
その姿勢だけは山くんにも劣らない。突然現れた彼の目的は、何なのだろう? おで一即発のムードは回避出來たけれど。
「で、ものは相談なんだけれど、もうすぐでホームルームが始まり先生方がこちらに來られるのだけど、このクラスは先日問題があったばかりだと聞いてね。
また問題があったと発覚すれば今度はクラス會議どころか學年集會を開くハメになる。君たちはこのクラスどころか、他のクラスの人たちにまで迷を掛けるつもりなのか?」
「う……!」
「むう……!」
青年の最もな意見を聞き、そして辺りを見回すと彼の言葉を聞いて我に返ったのかクラスの皆が空手部員の二人に対して睨みを効かせていた。
靜かな怒りというものほど人間に恐怖を與えるものは無い。二人は次第に自然と背中合わせになり、振り上げていた拳をだらんと下ろしていった。
「ど、どうするよ……」
「どうしたもこうしたも……、では頭金の仇はどう取れば──」
「その必要はねえ!」
青年が開け放ったままの扉の方からそんな大聲が聞こえた。
そこに立っていたのは言わずもがな──
「俺がいつ、山田さんに手え出してなんて頼んだ……? ふざけるなよお前ら! 俺はな! 山田さんに救ってもらったんだよ!」
空手部の二人に涙混じりに詰め寄りながら訴えてきた頭金くんだった。
「す、救ってもらっただ!? 空手部を退部しなければならない事態にまで追いやられておいて何をほざく!? 迷ったか頭金!」
「同志よ……! 山田とやらにやはり脅されているのか……! だからお前はこんな……」
「黙れ黙れ! お前らみたいな脳筋野郎たちに言葉が通じるか! 今すぐ出ていけ……、二度と山田さんに近づくんじゃねえぞ!」
頭金くんはそう言い捨てると、二人を半ば強引に廊下へとつまみ出すかのように追い出した。
「頭金! 今日のところは引き下がってやる。だが! お前の仇は必ず取ってやるぞ!」
「待っておれ、同志よ……! 我々はお前を見捨てた訳ではない。それだけは分かってくれ……」
名も知らぬ空手部の二人は、そう言い殘して自分たちの教室へと帰って行った。
それと同時にホームルーム開始前の予鈴が鳴った。先生たちがやってくるタイムリミットギリギリでの出來事だった。
「おっと……そろそろ僕も戻らないとね。一組の諸君、失禮したね」
そして名も知らぬ青年はを翻し、彼もまた自分の教室へと帰ろうとした。
しかし、その前へと頭金くんが立ちはだかった。
「あの! ありがとっした! 嵌村はみむらさん!」
本日三度目の最敬禮で青年に禮をするのだった。
どうやら青年が一組の教室に來たのは、頭金くんが呼びに行ったからなのだと、直でそう思えた。というか、そうとしか思えない。
こうなる事を予想していたのか。はたまた単なる偶然なのか……。どちらにせよ彼のおで最悪の事態は免れたのは幸いだ。
──それにしても、嵌村……。
三年間の高校生活で、この名前を耳にした事は──ない……。
クラスだって一度も一緒になった事もない。顔を合わせるのも初めてだった。
人の顔や名前を憶えるくらいなら私にだって出來る。稚園から中學校まで一緒のクラスになった事のある人や、顔を合わせた人の事は今でも鮮明に思い出せるくらいには。
けれどこの人だけは分からない。停學になっていたらしいけれど、こんな人……同級生にいただろうか。
──この人は……誰、なんだろう……。
「いやいいんだ頭金くん。僕を呼んだ君の英斷を讃えようではないか。と言うか、禮を言うならこちらの方だ」
「え?」
そう言うと彼はこちらの方を一瞥──正確に言うならば、山くんの方を見て、またしても不敵に、そして何より不気味に哂わらった。
「僕は今とても嬉しいんだよ。自然と笑みがこぼれてるのが見て分かるだろ?」
「は、はい! 喜んで頂けたようで何よりっす!」
「………………」
當の山くんはただ青年を見據えていた。うっすらと覗かせる眼は訝しげに睨んでいた。
「じゃ、今度こそサヨナラだ。一組の諸君、今回は頭金くんこそクラスの救世主だ。惜しみない拍手は……心の中でしてあげてよ。もうすぐ先生方がいらっしゃるかね」
フフフという薄ら笑いを浮かべながら青年は去っていったのだった。
安堵の表を浮かべる者、もやもやして煩わしくソワソワする者。
前者後者両様りじる中、私と山くんはそのどちらでもなかった。
「委員長……放課後、時間を空けておけ」
「…………分かった」
間を置いてしまったけれど、二つ返事で私は承諾した。
私たちは多分互いに予している。しかしながら、恐怖のを拭えないでいるのは私だけかもしれない。
頭から離れないのだ、嵌村と呼ばれたあの青年の悪魔のような微笑みが。
あの笑顔が何を意味していたのか分からない……だけど、何か良くないことが起こりそうだというのは確かな予だ。
「おはよう! 今日は皆靜かだな、もっと元気出していけ!」
今日も平常運転で何も知らない渡部先生の暑苦しい言など耳にってこないくらい、私は恐怖で打ち震えていた。
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