俺が本気で家出を考えていたのは中學校に學したての頃だった。きっかけは澪の転院。雙子の弟の澪は生まれつき厄介な病気を患っていた。余命も宣告され、二十歳まで生きられるかどうか。それを知った両親は喧嘩の毎日。澪は家にいることがなかったから知らない。けど俺は、ずっとそんな二人を見て育った。まぁ父さんはちゃんと俺のことを気遣っていたのか、俺が寢るまではじっと我慢していた。ピークに達するのは寢た振りをしてからものの10分ほどだった。

小學生の時からどういう訳か俺は友達ができなくて、いつも一人だった。それもあってか、相談することもできず気づけば家庭環境が俺の一番の悩みになっていた。

それで、本的に言うと、両親が喧嘩しているのは澪をどうするかだ。大きい病院へ行けばそれだけお金もかかるし母さんや父さんの負擔はかなりのものだと思う。子どもの俺にはまだ分からない事も、あったと思う。けど母さんは、「あんな子、いらない。」と、はっきり言ったんだ。俺はそれがどうしても我慢できなくて。そんな気もなかったのに、俺は母さんといつも喧嘩するようになってしまった。いや、母さんがことあるごとに首突っ込んでくるから適當にあしらってるだけだよ。過剰に反応するから俺も、ね。

結果的に言うと、俺と澪だけで東京に行くことになった。二人とも仕事は手放せない。特に父さんは。…不安しかないんですけどって。

「璃久、なんか、ごめん…。」

「気にすんな。俺が説得しきれなかった結果だ。それに、やっといい環境で治療してもらえるんだから元気出せ。」

ここから俺の波だらけの東京生活が始まる─