《雪が降る世界》第56話 〜俺の友達〜 加said
空港近辺を見た後、ようやくホテルにたどり著いた。もうその頃には俺以外力的に參ってたしこまに関しては魂抜けてた。
さすがに部屋割りはクラスごとだから俺は人雙子と。大変だぜ、3人分の荷持ちは。
「なんかごめん加君…。」
「お前元気だな…。」
「お?役に立ったか?」
「十分だよ。璃久は早く寢て。」
「いやシャワーだけする。こんな汗まみれで布団れない。」
「風呂で倒れないでよ。」
「はいはい…。」
「時夏はなんであそこまでこまのこと心配してんの?一応高校生だろ?」
「なんでって…。家族だし。それに、アルビノだからさ。いつ売りさばかれるかわかんないじゃん?」
「売られる?…七海に聞いたのは手足がなくなるみたいなじだったが。」
「またグロテスクな…。生きたままの方が価値あるでしょきっと。」
「よくわかんねぇなぁ…。」
確かにこまはびっくりするくらい綺麗でそのせいかめちゃくちゃ目立つ。全部白。
あった時から目が離せなかった。…目が合うことも、なかった。今友達として話せているのが噓みたいに。
「何の話してんだ?」
「璃久のことだよ…。この能天気。」
「早く橫になりなー。ご飯の時起こしてやるから。」
「ん。よろしく。」
そう言ってすぐに寢息をたて始めた。
…やっぱり綺麗なんだよな。
學式の日、聲かけてみてほんとによかった。
中學生──────…
ただの近所の學校だった。なのに俺は3年間、こまと同じクラスで。もちろん、向こうは全く知らなかっただろうけど。
近寄りにくい雰囲気で、誰かが話しかけても3文字以で返事してた。
アイドル顔負けの見た目に家事もできて績もずば抜けてよかった。…だから、話しかけるのが本當に難しい。それは今でも記憶にある。
1回だけ會話をしたことがあったかな。
山ほどある數學の課題と英語のノートを運ぶ時に。まぁよくあることだ。それを気合いか何かで1人で持っていこうとしてたもんだからつい。
「よ、いしょ…!んぐ…!」
今思えば、すげぇ可かった。
「あ、えーと…半分持つよ。」
「…?ありがとう。」
相変わらず冷たい顔して子殺しの低音で。
隣の席になった時に初めて間抜けな顔を見た。
數學…の授業中、何の躊躇もなく寢てたな。俺は相似の三角形見つけるのに必死だった気がするが。天才ってほんとに存在するのか。
験期、クラスのほぼ全員は塾に行く中、
こまは學校の先生だけでなんとかしようとしていた。難関校けるのに不思議だなーと思ったものだ。…まさかあんな事があったなんて、馬鹿な俺には見抜けない。
そりゃ無駄な出費は抑えたかっただろう。
なんとか同じ高校に合格、したはいいものの、俺の績は特別いい訳ではなかった。ギリギリ、ってとこ。
高校こそ、こまと友達になるって決めた。
3年間見向きもされなかったが頑張ろう。
──────…
「思ったより普通の人間なんだよなぁ…こまって。」
「?何その意味深な言葉。」
「なんかあの時間なんだったんだろう。」
「急に何?璃久の寢込み襲う気?」
「なわけあるか。ちょっと前まで話してもくれなかったのに嬉しいなって。」
「え、中學同じ?」
「一応。こまのやつ、俺の事初めて見たような顔しやがってさ。」
「うわぁ…。璃久らしい…。」
「今隣の布団で喋ってるのが信じられねぇ。」
「ふーん…。」
いやそれ以上に生き別れになってたかたわれと喋ってる方が奇跡か。
「ところで加君は大學どこ行くの?」
「緒ー。」
「えっ。なんで?」
「…恥ずかしいから!!」
「えぇ…?」
あまりにも急で変なことを…。別に気負うこともないだろうけどからかわれそう。七海くらい賢かったらどこでもさらっと言えるんだろう。
「時夏は?」
「俺は璃久とちゃんと話してから詳しく決めるつもり。まぁ進學はした方がいいし。」
「そういえばこまはどうすんだろうな。」
「それも含めて、ね。」
同じ家に住んでてそんな大事なこと話してねぇのかよ…。もう高2の秋だが…。
「普段家でどんなじなの2人って。」
「璃久とは家にいる時間が合うことがないし…。いても課題やるか服作るか、かな。」
「すげぇ。」
そうだ、あいつモデル兼デザイナーだ。
仕事ばっかりじゃん。…それで俺より先に課題が終わるだと…?やば…。
「あ、そろそろロビー行こ。
璃久起きて!」
「んー…何…?」
「寢ぼけてないで早く起きてよ。さき行くよ?」
「うーん…なんかだるい…。」
「加君にお姫様抱っこしてもらう?」
「自分で歩く。」
何故俺の名前が出た瞬間目が覚める。そんなに嫌か?
「あ、七海!こま達來たよ!」
「悪い、何も記憶にないが睡してた。」
「…ちょっとは落ち著いたか?加に何もされてない?」
「どういう意味だよしてねぇよ。」
「まぁそれはどうでもよくて…。後で部屋行く。暇すぎ。」
「あと2人は?4人ペアだろ?」
「俺あいつらと喋ったことないし。」
おい2年目だぞ。そんなことあるか。
「來る分には問題ないけど。こっちも割と暇だよ?」
「沈黙よりはマシ。」
七海がいると聲も出せねぇだろうな…。ペアの奴可哀想。もっとらかくなればいいのに。
「それより俺ここの料理食えるかな…。」
「?バイキングだろ?」
「いやそうじゃなくてだな。言ってなかったけど結構重度の絶食障害で…。ここ數年で個食べれるようになってさ。」
…眼球飛び出る。七海に何があったんだろう…。ここ數年、か。じゃあこまの料理いっぱい食べてたのって。
「雙子の料理は好きなんだ。」
「そもそも母さんのが段々食べれなくなっていったから。」
「よく死ななかったな。」
「サプリと飲みで頑張った。今でも母さんのは無理。」
「なんで?おふくろの味とか言うじゃねぇか。」
「…優しさがない。」
意味がわからん。賢い人って大事なところをばっさり要約するんだからもう…。
優しさって…。
「もっと詳しく?」
「…後で言う。どうせ話すことになるだろうし。」
「あ、前言ってた七海先生のことか?」
「全部。」
「はい。」
吐きそうになりながらも頑張って食べた七海に全力で拍手を送りたい。顔真っ青。
その後何故かこまは知っていたみたいだが七海の裏事を聞いた。修學旅行でするような容じゃなかったが、俺は勘違いしてたみたいだ。
なんだ、七海って天才じゃないんだ。
「どう?満足?俺はもう何もないが。」
「これから七海は徐々に馬鹿になることってある?」
「んー…それはねぇと思う。もう試問題とか余裕だし模試もSランクだし。」
「そんなセリフ俺でも言えるかなー。」
「頑張れば。俺くらいやれとは言わない。こうなるから。中學生の時なんて胃に大できて吐してたわ。」
七海はケラケラ笑いながら言ったけど、當時は相當辛かったと思う。吐って普通そんな明るく語れねぇ。大前提として中學生から胃に開けるのはよくわからない。仕事してたわけでもないし。
なんつーか…敵わない。ちょっとこまに話しかけてみたらこんなに違う世界の奴と友達になれるとか思ってもなかった。
「こんな話すんのもアレだし、明日の予定見とこーよ。」
「いいけど…。なんか怖そうだよね。」
「七海なんて霊見えるしな。」
「ガマね…。俺が駄目なのは霊よりなんだが。」
「最悪じゃん。失神とかやめてね?」
「既にしたことあるのにか?」
「だって明日の初手がガマなんだから。」
「あぁそっか。アイマスクでもする?」
「まぁお前がそれでいいならそうした方がいいんじゃね?」
「誰か引っ張ってくれ。」
「いーよ。」
ボケなのか本気なのか。俺の出番を取らないでしい。ボケ。
「數珠玉とか持ってないのか?」
「あー…。一応、あるんだけど…。間違えちゃって…。」
「數珠に間違いとかあんの?」
「あれお葬式で使うやつだった。」
「七海にしては珍しい。」
「寢ぼけてたんだろうな。」
「寢ぼけすぎじゃね?」
「うるさいな…。クソ親父に叩き起されたから本能的に寢たかったんだよ。」
七海先生にクソなんて付けれるのこいつだけだよね。しかも本能的って…。嫌い過ぎないか。
「てかなんで起こされたの。」
「頼まれてた論文英訳してなかったから。」
「…どっちが悪いのかわかんねぇ。」
「いや明らかに父さんだろ。普通高校生にやらせる?」
「まぁ…七海賢いし。」
「ほんと、いい加減にしてしい。」
「結局やったのか?」
「やらなきゃ俺のが危ない。」
「やば…。論文、やっぱり醫療関係?」
「相変わらずな。」
それから七海の生々しい愚癡を聞いてあげた。家では口が裂けても言えないし學校でも七海先生の悪評がたつとまずいし。
「ねぇねぇ、ババ抜きしよ?」
…?多分俺以外の奴も頭にクエスチョンマークが浮かんでいるだろう。どうした時夏。
「隨分急だな。」
「いやなんか…空気重くなってる気がしたから。」
「そっか…。うん、そうだね。せっかくならやるか。」
「時夏の気遣いは嬉しいが…。すまん、俺トランプやったことねぇんだ。」
「は?」
「俺もフルハウスとかポーカーくらいの接待用しかやったことない…。」
「はぁ?!」
そんな人いるんだ…。確かに謎の説得力ある。七海は勉強しかできなくて春瀬は金持ちで…。
「やめてほしいわ…。なぁこま…。」
「それな。…難しくないからやろうぜ。加もできるレベル。」
何故俺。小學生にしとけよそこは。そして文系組も納得すんな。
「あがりー。」
「あ、俺も終わったぞ。」
「おぉ!これでいいんだ!」
「よし、あがり。」
俺が負けるんかい!そこは初心者がな…!
「だって加にババ取らせるの楽すぎだし。」
「どのカードがババとかすぐ分かるし。」
「顔に出過ぎ。」
「なんだと…。」
「俺ら友達いない歴長いから人間観察得意なんだよね。」
「そうそう。加以外今までぼっちだったもんね。」
…意味不明…。
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