《雪が降る世界》第61話 〜弓道ズピンチ〜
「あれ?部員ってこんなに多かった?」
「さぁ…幽霊部員が帰ってきたとか?」
仕事を一旦片付けて久しぶりに部室に行くと、いつも俺らが練習してる場所が知らねぇ顔に使われていた。いや別にいいんだが…。最近來てなかったのも悪いし。
「あ、先輩。ちゃんと責任取ってください。」
??????
「何があった?」
「駒井先輩と七海先輩に憧れてって人が一気にったんですよ!袴のまま職員室行ってたでしょう?ほら!」
「えぇぇ何これ…!誰が盜撮したんだよ…。」
後輩くんのスマホの畫面にめちゃくちゃオフな俺らがいた。
小瀬先輩が引退して、部員は俺らと後輩3人でやっていた。七海は一応エースだったが再起不能だから、七海を部長にして、俺がエースになった。もちろん副部長は春瀬に。そんなことが決まったのは修學旅行前で、東京に帰ってから部活に來たのは今日が初めてだ。
あの寫真いつ撮られたんだろう。最近になって出されるなんて…。タイミングが…。あ。
「なぁ七海…これ、寫真集と関係あると思うか?」
「それは分からんが…俺が袴著たのは部活勧の時だけだから、だいぶ前の寫真だな。」
「悪意しかじねぇ。」
「まぁ廃部の危険はなくなったしいいじゃん。お前らどこで弓ひくんだ?」
「ほんとだよ。見學だなこれは。せっかく來たのに。」
なんで4月にらなかったのか疑問なのは俺だけか?何故今?聞いてみるか…。
「ってくれたのは嬉しいが変な時期選んだな。」
「えっ、あ、ちょっと待ってください心の準備が…!」
「は…?」
待て待て待て待て。あー逃げられた…。
「すみません…。」
「うわ戻ってきた。部理由だけ教えてくれ。」
「僕は験に使いたいと思って。忙し過ぎない部活を選んだんです。」
「前期は何してたんだ?」
「日々小テストに追われてました…。でもさすがになれたので。」
「あぁそう。でも弓道ってそんなに萬能な材料か?」
「そ、それは…。七海先輩達が賢いから…。」
「なるほどね。」
あと1年で引退なんだが…。まぁいいか。
「七海、後でみんな集めてミーティングした方が良さそう。人多すぎ。」
「そうだよな…めんどくせぇ。」
「頑張れよ部長。」
「おーい、6時に練習やめて集まれよー。」
「無気力が有り余ってるな。くれ。」
「エースがサボってどうする。」
「くそ…!」
久しぶりに持った弓はなんとなく重い。鈍ったか…。それか…。いや、まさかね…。そんなこと…あってほしくねぇ…。
「駒井先輩また痩せました?」
「へっ?また?またって何?」
「いえ…夏もげっそりしてたので。」
なんとなく分かっていたが見た目も変わってんのか。ちょっと今日計らないとな…。今は無駄に絞る時期じゃないし。
「練習お疲れ様ー。集めても特に何も無いが…。今は基本だけ集中してくれればいい。」
「七海先輩はやらないんですか?」
「しくらい話しといたら?部長?」
「えぇ…。ただのドクターストップ。気にするな。」
「基本っていつまでですか?」
「年明けまでで予定立ててる。」
「そこからは?」
「大會までに得手不得手を決めるくらいだ。」
俺もこの時期退屈したの思い出すなぁ。基本ばっかり毎日やってさ。それは今も変わらない。まじで暇。つか場所がねぇ。部室が狹くなった。こんなに賑やかになるのはまぁいいが好きか嫌いかと言われると…嫌いだな。堂々と寢れないじゃないか。
「じゃあ今日は著替えて帰れ。」
「はい!」
「人狙いではなかったな。全員。」
「あぁ、どっちかっつーと七海の頭だろ。」
「俺頭1つなんだが…?」
??????
「え、あーいや、七海の賢さというか知識量というか…。」
「不意打ちの天然やばいねー。軽くホラーだったよ。七海の頭、大量。」
「やめろ他のやつが埋もれる。まぁ弓道は俺が教えればいいから、七海はそっち系だな。一応文武両道掲げてるし。」
「?頑張る…?」
賢いのか鈍いのか…。調子狂う…。
朝早くにグループラインに連絡があった。
七海は今日學校休むらしい。授業は問題ないが…。まぁ部活も今は活発じゃないし大丈夫か。
「あ、おはよ春瀬。珍しいな、加と一緒じゃないのか?」
「置いてきた。」
「へ?」
「ただならぬ悪寒がして。」
悪寒…?
「そーいうことか!英語課題くらい自分でやれよ!」
「もーまじで昨日魂抜けてたんだってば。わからんすぎて。」
「なんでだよ…。ほとんど復習じゃないか。」
「俺仮定法嫌い。こまと違って妄想とかあんましないから。」
「俺も妄想はしてねぇよ。」
「春瀬お願い教えて!」
「うわぁ七海の大変さ今分かったわ…。」
「それな。」
ちょっと自粛するか…。
結局春瀬は若干キレながら教えてた。あいつも苦手らしい仮定法を。だが多分苦手って言うのは半分噓だと思う。
「分かった!サンキュー。」
「今から7時間あると思うと萎える。」
「お疲れ様。」
「もうし、上目に構えてみて。」
「は、はい…。」
んー…。おかしいな、教えるのってこんなに難しかったっけ。弓の覚はまだまだ鮮明なはず…。なんでだ?
「ちょっと向きが…。こんなもんかな。」
「えっ、あ、ありがとうございます。」
まだ力できないか…。張し過ぎなような気もするがどうにもできないな。
「こま、休憩しててよ。疲れたでしょ?」
「え?あぁ、分かった。」
春瀬に言われるがままに七海が座ってるところまで行った。別にそこまで疲れてないのに。
「まったく、そういうところで外國人出すんじゃない。」
「は?」
何言ってんだ?俺一応日本…。
「そりゃモデルがあんな至近距離にいたら誰でも張するわ。」
「でもあれぐらい細かくやらないと…。」
「大丈夫だって。高校生だぞ?言葉で分かるし見れば真似出來る。」
「それが難しいんだろ…。スポーツにおいてみんな七海と同じって訳じゃない。」
「そうは言ってねぇ。ただお前はもうし自分を抑えろ。ここだけでいいから。」
「意味わかんない。」
何をどうするんだよ。俺は特に飾ってることもないし。
「とりあえず練習はジャージでやりな。」
「なんで?」
「いいな?」
「…あぁ。」
今更気づいたが俺そういえばいつものじでタンクトップ1枚だった。この部室暑いから冬まではそのスタイルでいくことに。
そんな格好でりたての子に教えてたわ。…いや普通に恥ずかしいし申し訳ねぇ。セクハラ案件じゃねぇか。訴えるとかやめてくれな?
「はーい練習終わりー。著替えろー。」
「いつもに増して気合いないね。」
「今日帰りに病院行かないとなんだよな…。」
「お、じゃあ一緒に行ってやるよ。」
「なんで。」
「七海の安否確認?」
「いや今いるからいいだろ。」
「そう言ってるとまた零みたいになるんじゃないか不安なんだって。」
「心配し過ぎだ。そこまで進んでない。」
「それを確認しに行くんだよ。」
「…好きにしてくれ…。」
「いいじですね。このまま治療を続ければ卒業式も出れるでしょう。ただ…。」
「知ってます、大丈夫ですよその辺は。」
「それもそうですね。」
は????俺聞きたかった。ただ…何?
「なんのこと?」
「んー?もうし経ったら、足がかなくなるだけだけど。」
「え?!」
「そりゃそうだろ。脳なんだから。」
「…足、だけか?」
「そのうち、會話もできなくなる。まぁわりと先の話だ。気にするな。」
「それ、ちゃんと春瀬達にも話せよ。あと部員にも。」
「話したばっか。」
「もっと詳しく!お前部長なんだから。」
「分かった分かった。」
あぁ…一何人の人が泣くんだろう。七海が表舞臺に立てるのはあとし。それどころか聲すら聞けなくなる。
「ねぇ七海、次の仕事、お前も來るだろ?」
「一応そのつもりだ。あまり激しくないのだけにはなるが。」
「十分。あとさ、部活、指導くらいできるでしょ。」
「了解、頑張るわ。」
そんなの、俺がまたモノクロの世界を見るってことじゃないか。
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