《俺は、電脳世界が好きなだけの一般人です》第八章 セキュリティ・キャンプ 第一話 學校からの依頼
ユウキと住み始めて2ヶ月が経過した。
委託された業務は、サーバの監視業務だ。だが、面倒なことに監視容が多岐に渡っている。死活確認だけではなく、レスポンス確認や月に一度の脆弱の確認まで含まれる。報告書にまとめて、月一回の作業報告として提出する。正直、月10萬では割に合わない。回線代と電気代と複合コピー機のレンタル代と各種アカウント代がなければ、赤字案件確定だ。作業量から考えると、多分2-30萬が妥當だろう。
そう言えばユウキは、オヤジの事を、克己パパと呼んで、オフクロの事を、沙菜ママと呼ぶようになった?なにか、気持ちの変化があったのだろうか?
違和も無いし間違っていないから別に良いけど、なんだか釈然としない。和さん辺りのれ知恵か?
基地にいても、著信がわかる仕組みを作った。丁度、授業でBluetoothのモジュールを使った電子機を作した。試しに先生に聞いたら、Bluetoothで信した容をIPネットワークに流すキットが売っていると言われて、取り寄せた。作って形したケースにれて、使っているが問題は発生していない。著信が來ると、UDPで著信を知らせる報を流すようにした。
俺のスマホにかかってくる電話で即座に出る必要がある著信は無い。出たほうが良いのは、ユウキの著信くらいだが、ユウキはSkypeで連絡をしてくる。俺が基地にいても、すぐに応答するからだ。
風呂に一緒にる事と、夜一緒に寢る事以外は、俺の生活はビックリするくらい変わらなかった。
休日に、二人で出かけるのも今までにもあった。回數が増えたくらいで違いはない。ユウキが俺の腕を取るのを覚えたくらいだが、それも大した違いではない。
ユウキには、指を送った。學校は、実習に邪魔にならなければアクセサリー程度なら問題にはしない。俺も、お揃いの指をしている。左手の薬指だが、誰からも突っ込まれなかった。ユウキは、自分から友達に自慢したそうだが、”今更”と言われたようで、帰ってきてプリプリ怒っていた。
ユウキは、部活の助っ人を止めた。獣醫になるための勉強を始めた。和さんの知り合いの弁護士から、病院を紹介してもらってバイトに行くようになった。
ユウキの生活が激変したが、ユウキは俺と一緒に居る時間を削らない方法を考えた。
「ユウキ。別に部活の助っ人まで止めなくても良かったぞ?」
「うーん。そもそも、本大會には出られないし、僕が出られるのは練習試合だけだから・・・。今は、病院のバイトに行きたい!それに、タクミの手伝いもしたい」
「ユウキが、それでいいなら・・・」
「うん。ありがとう」
俺も、未來さんの手伝いは継続している。
お金の話もしっかりとした。
まだ家の電気代や水道代やガス代の平均値が出せないけど、おおよその見當が付いてきた。10萬を生活費にまわして、お互いのバイト代はお互いで使う事にした。足りなくなったらお互いに申告するという簡単な取り決めだが、十分だろう。
今日は、ユウキは病院でのバイトがあると言っていた。夕ご飯も向こうで食べてくるらしい。
今日は、帰って作りかけのアプリでも作ろうかな?
自転車にがろうとしたときに、聲をかけられた。
「篠崎くん!篠崎くん!」
俺が振り向くと、電子科の先生が俺に近づいてきていた。
「よかった。まだ學校にいてくれましたね」
「はぁ?どうしました?俺、なにかしました?」
「なにかしたのですか?」
「いえ、先生に呼び止められるような事実はないと思います」
「そうですね。今からしだけ時間はありますか?1時間はかからないと思います」
「わかりました。連絡だけれさせてください」
「はい。電子科の教員室に來てください」
「はい」
先生が移した背中を見ながら自転車を元の場所に戻す。
それから、スマホを取り出してユウキにメールで知らせておく。
電子科の教員室に移すると、數名の生徒と數名の先生が居た。
俺に視線が集中するが、電子科の生徒ではないようだ。バッチのが違う。バラバラだから、何かしらの部活かなにかなのだろう。子生徒も居る。男混合の部活だろうから、文化系なのだろう。
「篠崎くん。ここにお願いします」
先生の橫の椅子に座った。
數名の生徒からは嫌な目線を向けられる。長くなりそうだ。
「まずは・・・」
電子科の先生が説明してくれたじでは、パソコン倶楽部とかいう部活が県主催の”ハッキング大會”に出場するのだが、參加してくれないかという依頼だ。
參加は丁重にお斷りした。
電子科の先生は、俺が斷るのが解っていたようだ。
「篠崎くん。理由を聞いてもいいですか?」
顧問は斷られるとは思っていなかったようで、理由を聞いてきた。
「理由ですか?」
「はい。君にとっても悪い話ではないと思いますが?」
「そうですね。個人戦なら、參加も考えますが、団戦では、參加の意義が見いだせません」
「それは、君が技的に得るがないと思っているのですか?」
「篠崎!貴様。俺たちをバカにするのか?」
「はぁ・・・。こういう反応が嫌なのです。技云々は、どうとでもなると思っています。競技ルールが決められているのでしょう?何でもありのハッキングでは無いのでしょ?」
先生を見てから、連れてこられている生徒を見る。俺を怒鳴った奴はふてくされている。
「わからないようなので、はっきりいいます。興味がまったく湧きません。それに、レギュレーションを読むと大會はキャンプ式ですよね?2泊3日ですか?その間は、拘束されるのですよね?業務として考えると、10萬相當の仕事です。講演會とかなら、それこそ20萬から渉しますよ?」
皆が黙ってしまう。
極めて當然の反応だ。実際に仕事として考えていないのだ。當然だろう。先生方も、甘く考えているのだ。
「おい!篠崎。貴様。それだけの金を払えば確実に賞できるのか?!」
「はぁ?俺は、拘束に対しての対価を伝えただけだ。競技に勝つか負けるかなんて興味が無いと言っているだろう?」
「だから何が言いたい!」
「そもそも、なんで決められたルールでハッキングを競うのですか?」
俺は、煩い男子を無視して、顧問の先生に質問をする。
「それは、IoTで、世間がデータ・セキュリティに敏になっています。在學中からセキュリティ意識を持って、報社會を乗り越えるためです」
思わず拍手をしてしまいそうになる。
ヘドが出る。
「そうですか・・・。やはり、俺には合いません」
「だから、なぜですか?教えてもらえたら嬉しいのだけど?」
「先生の言っている事は立派です。えぇ間違っていません。でも、俺には意味が無いとしか思えません」
「それは?」
「ハッキングなんて実際には小手先の技だからです」
「え?」
皆の顔が”?”が浮き出ているかのようにじる。
「別に、ハッキングやクラッキングが無駄な技だとは思っていません。侵や報を盜み出す方法を知るのも対策を取るのも必要だと思います」
「なら!」
「先生。警察部の報を盜んだり改竄したり出來ると思いますか?」
「え?無理だ」
「ですよね。でも、警察個人がターゲットならどうです?」
「可能はある」
「そうです。今の話のように、”出來る””出來ない”的な議論になるのがに合わないのです。警察部のデータがしければ、警察を買収したり、脅迫したりする方が簡単です。企業も同じです。もっと、直接的な手法を取るなら、理的に盜み出してしまえばいいのです」
「それは・・・」
「違うとは言わせませんよ。報えいの殆どが、社員が盜み出して洩させたり、うっかりミスで公開されてしまったり、許可されていないのにパソコンやUSBメモリやHDDを持ち出して置き忘れたり、ヒューマンエラーです。そして、Webサイトの改竄や乗っ取りは、決まりきったBOTやウィルスの仕業です。狙われて、報を盜まれたなんて例は多分1%にも満たないでしょう。そんな事の為に時間を使うなら、ヒューマンエラーを無くす方法を考えたり、BOTやウィルス対策の為の報を収集したり、より意味があるセキュリティ対策を考えます」
皆が黙ってしまうのがわかる。反論を期待したわけではないが、ここまで黙られるとは思わなかった。
先生にしても、”大會”への出場が目的なら、俺は必要ないだろう。部員數が足りていないとかならわかるが、レギュレーションを読めば違うのはわかる。そうなると、目的は上位賞なのだろう。煩い男子が先程言っていた”賞”が目的だろう。
電子科の先生が手を叩いて、場の視線を獨占する。
「篠崎くん。君の考えはわかりました。それでは、どうでしょう・・・。私と顧問の先生から、依頼という形では?」
「依頼ですか?大會への參加はお斷りします。どう考えても、コミュニケーションが取れません」
「違います。篠崎くんには、提案してほしいのです。電子科と報科の有志をセキュリティ大會に出します。有志たちの底上げをお願いします」
「え?」
「報酬は、1ヶ月食堂の食べ放題でどうですか?」
俺が黙っていると、先生は俺の指を見てにっこり笑ってから
「二人分の食べ放題。それで、セキュリティ大會で、パソコン倶楽部の面々よりもいい績ならプラス一ヶ月。さらに、賞したら1ヶ月追加でどうでしょう」
「わかりました。その依頼をけたいと思います。明日、正式な書類を持っていきます。詳しい話は、そのときにお聞きいたします。それでは」
なにか言われそうだったので、話をぶった切って、席を立った。
部屋を出てから、やかましい男子がなにか怒鳴っていたがもう気にしない。最低報酬が2萬(自分とユウキの晝飯代×20日)程度、賞して奴らに勝てれば6萬になる。味しくはないが面白そうだ。
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