《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.1 朝
「起きて、しーん。もう朝だよ」
顔まで布を被っていた僕は、呼びかける聲と同時に大きく揺れた。
僕の妹である茜あかねだろう。
しかし、可らしい妹が起こしに來てくれるのはありがたいが、僕は眠たいのだ。
ということで、二度寢に挑戦する。
「ほら、早く起きて!」
「ぐはっ!?」
布団の端が引っ張られ、僕はベットから転げ落ちた。
「あーあ、早く起きないからだよ」
落ちた衝撃に思わず目を覚ました僕は、いつものように、茜に尋ねる。
「時間は?」
「7時頃かな?」
相変わらず、適當だ。
そんな事を考えながら、僕は自分の枕元を手で探った。
「......あれ?」
「はい、眼鏡。いつも、落ちて踏みそうになるから先に取っておいたんだよ」
「......ああ、ありがと」
落としたのは、茜じゃなかったかという、僕の疑問はさておき、け取った眼鏡を僕は両耳にかけた。
先程までぼやけた視界がクリアになり、レンズ越しに妹の顔がくっきりと見える。
「今、朝ご飯が出來たから。後、早く降りて來いってさ」
「分かった。先に行っといてくれ」
「う、うん......」
曖昧な返事をした茜は、僕の部屋から出て行った。
「……まだ、慣れないな」
去り際にそう言い殘して......。
【書籍発売中】【完結】生贄第二皇女の困惑〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜
【書籍版】2巻11月16日発売中! 7月15日アース・スターノベル様より発売中! ※WEB版と書籍版では內容に相違があります(加筆修正しております)。大筋は同じですので、WEB版と書籍版のどちらも楽しんでいただけると幸いです。 クレア・フェイトナム第二皇女は、愛想が無く、知恵者ではあるが要領の悪い姫だ。 先般の戦で負けたばかりの敗戦國の姫であり、今まさに敵國であるバラトニア王國に輿入れしている所だ。 これは政略結婚であり、人質であり、生贄でもある。嫁いですぐに殺されても仕方がない、と生きるのを諦めながら隣國に嫁ぐ。姉も妹も器量も愛想も要領もいい、自分が嫁がされるのは分かっていたことだ。 しかし、待っていたのは予想外の反応で……? 「よくきてくれたね! これからはここが君の國で君の家だ。欲しいものがあったら何でも言ってくれ」 アグリア王太子はもちろん、使用人から官僚から國王陛下に至るまで、大歓迎をされて戸惑うクレア。 クレアはバラトニア王國ではこう呼ばれていた。——生ける知識の人、と。 ※【書籍化】決定しました!ありがとうございます!(2/19) ※日間総合1位ありがとうございます!(12/30) ※アルファポリス様HOT1位ありがとうございます!(12/22 21:00) ※感想の取り扱いについては活動報告を參照してください。 ※カクヨム様でも連載しています。 ※アルファポリス様でも別名義で掲載していました。
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