ーー話は、僕が記憶を無くしてから半年後の今に戻る。

家から出て、約二キロの場所にある小さな公園。

そこは、僕が指定されていた場所だった。

普段運を一切しない僕が、二キロという距離を歩くのは々......というか、結構無理があったのだが、なんとか辿り著くことは出來た。

その後、取り敢えず公園を一回りしてみたが、呼び出した本人はまだいなかったので、休憩がてらに僕は近くのベンチに腰を下ろす。

「あっ！」

そこで僕は、とても深刻な事に気付いてしまうのだ......。

それは……。

「帰りの事考えてなかった......」

「獨りで何言ってるの、しん君？」

「！？」

突然後ろから話しかけられ、振り向くと、僕を呼び出した張本人こと伊藤穂波いとうほなみがそこにいた。

黒髪のショートヘアが特徴の、同級生。

クラスは違うが、本人の口ぶりからして、半年前の僕と関わっていた人の一人らしい。

「しん君、お久だね。一昨日も聞いたけど、大丈夫？」

「ああ、問題ない。ノープロブレムだ」

「事故で院してた期間って、結構長かったよね。えーと、確か......半年くらいかな？」

(院してた期間か......。僕が目覚めてからは、今日でちょうど、半年だった筈)

「まあ、それくらいだ」

先に言っておくと、僕の記憶が、なくなっていることを知っているのは、僕の家族、學校の先生、そして妙な友人(変人)だけだ。事を公おおやけにして、目立ってしまうと、今の僕ではまともに話せそうにないからな。出來る限り、隠しておきたい。

それは、目の前のも例外ではないのだ。

そもそも一なぜ、せっかくの休日というのに、伊藤は僕を呼び出したのだろうか。

學校に通ってから知った事だが、どうやら僕は、人とそこまで関わるタイプの人間ではなかったようだった。

茜曰く、子の知り合いなど一人もいなかったようだし、妙な変人曰く、學校でも子と話したところは見た事が無かったそうだ。

そんな僕に話しかけるどころか、休日に呼び出すなど、何か裏があるのではと考えてしまう。

僕は、さりげなく• • • • •聞いてみる。

「ゴホン、ゴホン......。え、えーと、伊藤は、何故僕をここに呼んだんだい？」

不自然極まりないな、おい。

「......？」

彼は首を傾げた。

(そりゃそうだ)

「いや、何で僕を休日に呼び出したのか、まだ聞いてなかったからな」

「何でって、そりゃあ......」

彼が一度深呼吸をした。

「まだ......、返事を聞いていないから」

彼は、軽く頬を染め、早口でそう言った。

ーーどうやら半年前の僕は、とんでもない問題を抱えていたようだ......。