《僕はまた、あの鈴の音を聞く》No.26 ダークマター
晝休み。
僕は朱莉と連絡を取り、屋上でお晝を取ることにした。
普段、弁當は茜が作ってくれている。
しかし居候のお禮も兼ねてか、今日は朱莉が弁當を作ったようだった。
期待にを膨らませ、僕は弁當箱の蓋をあける。
「信義さん。どうですか?僕の作ったお弁當は?」
「これは......」
そう、僕が今から食べようとするのは、朱莉の手作り弁當のはずだ.......。
「僕の記憶喪失って、まさかこれが原因じゃないのだろうか」
それを例えるなら暗黒質、もといダークマター。
なぜか焦げた白飯......通稱黒飯を筆頭に、焦げた卵焼き。焦げた野菜たち......などなど。
これを食べるのには、かなりの気が必要だろう。
「朱莉、なんで全部焦げてんだ?」
「何を言っているのですか。どう見ても焦げてませんよ」
突然、訶不思議なことを言った。
「いや焦げてるだろ。どう見ても」
「そんなこと言わず、食べてみて下さい」
もしかすると、見た目がグロテスクなだけであって、ちゃんとした料理なのだろうか。
僕がその記憶を持っていないだけで、家庭料理に近いものなのだろうか。
そして僕は、ダークマターを口へと運んだ。
「.......朱莉。今日からご飯の擔當を外れてくれ.......頼む」
もしそれが葉うのなら、僕は土下座でもなんでもしよう.......と決意するのであった。
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