《豆腐メンタル! 無敵さん》阿久戸志連宣戦布告①

そして、無敵さんは語りだした。別人のように。”誰か”が”乗り移った”かのように。

「アメリカでは、授業前にこんな號令をかけたりしません。世界中、ほぼ全ての國が、日本みたいな號令をかけません。韓國ではやりますけど、大戦中占領時の名殘りだとして、廃止論が出ています」

無敵さんはそう切り出した。

おいおい、いきなり號令全否定? そこからどうするつもりなんだ、お前は? でも、良くそんなこと知ってるな。俺、全然気にしたことなかった。

「そぅら、見たことか。やはりこんなの軍隊じみてるってことなのだ」

宗像が「ふん」と鼻を鳴らして勢い付く。

「特にドイツでは“號令”へのアレルギーが顕著です。それは『ヒトラー』から得た教訓によるものなんでしょう。ドイツの子どもたちは、徹底的に“自分で考える”ことを學びます。おかしいことはおかしいと、相手が教師であろうとも遠慮なく言える教育をされるんです。人に、流されないように。見えない“みんな”に、思考を委ねてしまわないように……」

そこで、無敵さんは一旦言葉を切っていた。どうした? その間は、なんだ?

「そっか。例え教師からの號令であろうと、無暗に従ったりしないんだね。特に軍隊みたいな號令には。そういうこと、無敵さん?」

七谷だ。七谷が無敵さんへ、にぱっと笑顔を投げかける。軽そうな見た目の七谷が、こんな風に乗って來るなんてな。ちゃんと話を聞いてただけでも驚きだっていうのに。これは失禮過ぎるかもだけど。

「そうです」

無敵さんはこくんと頷いた。

「じゃあ、俺たちがやらされて來たことは、やっぱり良くないってことだろう? 意味が無いどころか“悪習”だったというわけだ。それではますますやれないな。特にホズミの號令下では」

宗像がにたりと笑って俺を見る。宗像は、勝利をほぼ手中に収めたつもりでいるに違いない。

馬鹿め。今喋ってんのは、無敵さんなんだぜ? 何度か舌戦をえた俺だから分かるけど。こいつ、実は相當論戦に慣れてるぞ!

「そうかも知れません。でも、そうじゃあないかも知れません」

「なに?」

宗像の顔が明らかに変わった。

來た。いよいよだ。何を言うつもりだか知らないが。相手が俺じゃないことで、一つ、今気付いたことがある。それは。俺が、こいつの次の言葉にわくわくしているっていうことだ!

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