《豆腐メンタル! 無敵さん》薬袋水無人傍若無人④
「なぁ、お前。無敵さんのクラスメイト、なんだってな? 折りって頼みたいことがあるんだが。俺は學校の中まで手が出せねぇ。だから」
「は? な、なんだって? おい、ちょっと待ってくれ」
その先がなんとなく予想できたので、イケメンの言葉を遮ろうとしたんだが。
「お前、無敵さんを守ってやってくれねぇか?」
やっぱりだ。俺はこういうお願い事をされる機會が結構あった。だから、そんな空気を察することが出來るんだ。そして、もうそういうのは懲りごりしてる。嫌だ。無理だ。俺に、人を守る力なんてありゃしない。それも骨に染みている。それなのに。
「なぁ、頼む。俺は、無敵さんが苦しまないようにしたいんだ。無敵さんは、もう十分に頑張ってきてんだよ。……これからは、靜かに、心穏やかに過ごしてしい。ただ、そうしてやりてぇだけ、なんだ……」
「お前……」
俺のぐらを両手で摑むイケメンの手は震えていた。真っ直ぐに俺を見つめる漆黒の瞳には、この男には不釣り合いにも思える憐憫のみたいなものが浮かんでいた。眉間に深い皺を刻み、俺みたいなガキに縋っているその姿は、さっきまでとは別人だ。
「な、なんで、俺に?」
分からない。俺がそんなに頼り甲斐のある人間に見えるのか? だとしたら、こいつの目はとんだ節なんだろう。
俺は、守りたい人を守りきるどころか、死なせてしまったようなヤツなのだから……。
なんて一人でシリアスモードにっていたら、とんでもない理由を明かされた。
「だってよ。おめぇ、友達いないだろ? だったら、無敵さんの為に使える自由な時間が作れるじゃん? そんなヤツなら無敵さんとどうこうなる可能も薄いだろ? あと、逃げ足が速いってのが大きいな」
「そんな理由かよ! なんで俺に友達がいないの確定してんだよ!」
がっかりな理由だった。あと、當たっているだけに酷すぎた。俺の繊細な心はもうズタズタ。ハートブリードだっくだく。神出ショックで死ぬ勢い。なのに追い打ちをかけられた。
「あ? そりゃいねぇだろ。だって、スマホの電話帳も見たけどよ、登録してあるのって家族とか図書館みたいな公共施設しかなかったぜ? 俺がおめぇのスマホを持ってる間、メールなんか一件も來てねぇし。あ、でも、妹から電話は一回かかってきたな」
「……あっそ。で、妹は、なんだって? どうせ電話に出たんだろ?」
反論の余地はない。やたら恥ずかしいんだけど、取り繕う気にもなれんわ、もう。
俺は中學を卒業するにあたり、お祝いとしてこのスマホをねだっている。完全に新規で手にれたこのスマホには、今までの電話帳データをわざと移行しなかった。もう、誰とも連絡を取る気はなかったし、みんなだってそうだろうと思ったからだ。
「ふふふ。ああ、もちろん電話には出てやった。てめぇがどんな人間か、出來る限りの報を得たかったからな。てめぇの妹は、隨分心配していたよ。一人暮らしで寂しがっていませんかとか、ご飯はちゃんと食べてますかとか、いろいろ聞かれた。俺は友達のふりをして、安心するような返事をしておいてやったんだ。いいお兄ちゃんしてるらしいな、てめぇは。あんなに素直でいい子なら、俺だって泣かせたりはしたくねぇ。……いいもんだよな、家族って……」
イケメンは俺からぱっと手を離し、ふっと表を翳らせた。悲しげな橫顔からなにか含むものをじたが、それが何かは分からない。今は、まだ。
「だから、試したくなったんだろうな。こんなオモチャを使ってまで」
「……俺が、信頼に足るのかどうかを、ってことか?」
「まぁな。どうせ、助けてくださいって泣き喚くもんだと思ってた。しかし、意外なことにそうじゃあなかった。これは嬉しい誤算だな。これは心の底から言うんだが、ホント、出會えて良かったぜ」
俺のブレザーの襟を直したイケメンは、その手をそのまま差し出した。握手しようぜってことらしいが……。俺がこの手を取ったら、無敵さんのことを頼まれたことになってしまうのでは? それって非常に困るんだけど。留守先生といいこのイケメンといい、なんで俺に期待してんの? それも、無敵さんのこと限定で。普通の友達さえしくないって思ってんのに、異常な友達だけ出來てもなぁ……。もう確信してるけど、無敵さんって超特大の厄介事そのものだぞ。関われば俺の學園生活は波萬丈、すぐに難破して遭難するのは確実だろ。大破することでサービスショットが見られる艦艇擬人化ゲーならともかく、リアルでは何のメリットも存在しないわけだしな。
「よろしく頼むぜ、兄弟」
「え? ファッ!?」
逡巡している隙を突かれた俺の手は、イケメンによって強引に握られていた。契約立。ここに悪魔との取引が完了した。ただ魂を奪われるだけの取引だ。そんなん取引って言わないだろ。今すぐ消費者センターに駆け込んで、クーリングオフを行使しなければ!
「ふぅん。薬袋みない水無人みなと。やっぱり、それがあなたの本心だったわけなのですね?」
そこへの聲がした。
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