《學園一のお嬢様が風呂無しボロアパートに引越してきたんだが》第五話 初めての電車通學……ですわっ!
自宅最寄りの駅まで歩いてくると志賀郷は興味津々な目で辺りを見回していた。
「これから電車に乗るのですね。初めてなので張します……」
「え、初めてなのか!?」
すげぇ本當にセレブなお嬢様じゃん。今は違うけど。
「移は全てエミリーが運転するお車でしたので。……あ、ちなみにエミリーは私の専屬メイド兼メイド長ですわ」
「はいはいそうですか。流石は元・お嬢様ですね」
「だから一部を強調して言うのはやめてくださる? …………事実ですけど」
目を細めて不服そうな表を浮かべる志賀郷。だが子供のようにムキにならず冷靜に対処する點は育ちの良さの賜なのだろうか。小柄な型と顔な見た目とは裏腹に面では俺よりも大人びているのかもしれない。
「釘を刺しておく訳じゃないが、朝の電車は地獄だからな。覚悟しておけよ」
「俗に言う満員電車というヤツですわよね。一度験してみたいと思ってましたの」
「それは良かった。これからは毎日験できるからな」
皮を混じえて笑う。しかし志賀郷は言葉の真意に気付いていないのか、瞳をきらきら輝かせながら地下駅に続く階段を見つめていた。
「狹山くん。早く行きましょう!」
「はいはい……」
乗り方も知らないくせにどんどん先に進む志賀郷を追いかけるべく、俺は小走りで階段を降りていった。
◆
即落ち二コマとはよく聞いたものだが、実際に目にしたのは初めてかもしれない。
ホームに著いた時に丁度列車が出て行ったのだが、それを見た志賀郷の表をきっと俺は忘れないだろう。
「な……んですの……あれは……」
「だから言っただろう、地・獄・だって」
志賀郷の顔はすっかり青ざめていた。だが初見なら無理もない。これから俺達が乗る路線は全國トップクラスの乗車率を誇る痛勤列車で有名な地下鉄東西線だ。最混雑區間ではをかすことはおろか呼吸をするのもままならないレベルになる。だからしでも空いている車両、乗ったらできるだけドア付近から離れること、下車しそうな客を見極めることが何より求められるといえよう。
「人間が乗る乗りなのかしら……」
「気持ちは分かるが……我慢してくれ」
慣れてる俺でも辛いと思うのだから、志賀郷にとっては計り知れない程の苦痛を味わうことになるだろう。
テンションだだ下がりの志賀郷を引き連れながら乗車位置の列に並ぶ。そして間を置かずに次の列車がホームにり込んできた。
「すぐ來たのにまた人が詰まってますわ……」
「捌ききれないんだよな。何しろ人が多過ぎる」
通インフラは既に限界に達しているにも関わらず、高層マンションは次々と建てられていく。おかげでラッシュの時間はこの有り様だ。
しかし愚癡を言っても人は減ってくれない。列車のドアが開き、中から數人が降りて十數人が乗り込んでいく。
「狹山くん。これ、乗れますの……!?」
「大丈夫だ、問題ない」
乗れるかどうかの判斷は床を見れば分かる。今回は靴で埋もれていないからセーフだ。
口を震わせて怖じ気付く志賀郷だが後戻りは出來ない。行列に流されながら俺達は吸い込まれるように車に乗り込んでいった。
「ドア閉めます。お荷お強く引いてくださーい!」
駅員さんによる必死の呼び掛けにより、なんとか扉が閉まり電車がき出す。
混雑を極めた車で俺と志賀郷は言わずもがな周囲に押し潰されているのだが、勢が悪かった。
「さ、狹山くん……」
眼下から聞こえる小さな聲。元には志賀郷の頭があり、至近距離で向かい合う形になってしまった。
俺は幸いにも手すりに摑めたが、背の低い志賀郷は周囲に摑めるものが無く、俺のワイシャツを摘むようにしてを支えていた。
近い……。間接的とはいえ志賀郷にれられているという張と彼の髪から漂う甘い香りが鼻腔を刺激され、俺の理は若干揺らぎつつあった。
煩悩を振り払い、冷靜を保とうと視線を高くあげてやり過ごそうとしたのだが、幸か不幸かんだ平穏は訪れない。
「ひゃっ……!」
車が大きく揺れたのと同時に志賀郷が小さな悲鳴を上げる。瞬間、バランスを崩した志賀郷が俺の板にもたれ掛かるように倒れてきた。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、謝ることじゃないって」
それよりも一段と近付いた志賀郷のの方が問題だ。不可抗力とはいえ、この狀況では嫌でも勘違いしそうになってしまう。
「危ないから……摑むならしっかり摑まってろ」
小聲で志賀郷に呼び掛けた。疚やましい気持ちはこれっぽっちも無い。慣れない志賀郷を怪我させない為の苦の策というヤツだ。…………本當だぞ?
「分かりました……」
俯きながら答えた志賀郷は特に躊躇ためらわず、俺の手首をぎゅっと握り締めた。
相手は異なのだからもうし抵抗があっても良いはずなのに、と思ったが志賀郷にとっては乙心を気にする余裕すら無い狀態なのかもしれない。とはいえ素直に接されるとつい飛躍した憶測をしてしまうのが男のさがだ。
それにしても志賀郷の手は小さいな……。分かっていたつもりだったけれど、男の格はこんなにも違っているのだと改めて実する。ほんのりと暖かくてらかい。更に、俺の腹辺りに容赦なく押し付けられている志賀郷の満な果実も非常に心地良いものだった。でも理が崩壊しそうになるからできれば離れたいのだが。
とはいえ志賀郷のようなスタイル抜群のを満員電車で一人にさせておく訳にはいかない。癡漢の被害リスクを考えれば専用車両に乗せるのも一つの手だがそれでも心配である。
お節介が過ぎるか……しかし志賀郷は今までリムジンの送迎で通學してきたモノホンのお嬢様だ。
今でこそ親に見放された一文無し(らしい)が、志賀郷家という地位が落したかどうかは定かでは無い。もし俺が無責任な行をして志賀郷の親族が「ふざけるな」と登場……なんて展開になったら、俺だけでなく狹山家がまるごと潰されてしまう恐れもある。一度乗りかかった船だ。こうなったら最後まで協力してやるしかないだろう。
列車の走行音だけが鳴り響く車で俺は小さな決意を固めたのだった。
剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】
※書籍版全五巻発売中(完結しました) シリーズ累計15萬部ありがとうございます! ※コミカライズの原作はMノベルス様から発売されている書籍版となっております。WEB版とは展開が違いますのでお間違えないように。 ※コミカライズ、マンガがうがう様、がうがうモンスター様、ニコニコ靜畫で配信開始いたしました。 ※コミカライズ第3巻モンスターコミックス様より発売中です。 ※本編・外伝完結しました。 ※WEB版と書籍版はけっこう內容が違いますのでよろしくお願いします。 同じ年で一緒に育って、一緒に冒険者になった、戀人で幼馴染であるアルフィーネからのパワハラがつらい。 絶世の美女であり、剣聖の稱號を持つ彼女は剣の女神と言われるほどの有名人であり、その功績が認められ王國から騎士として認められ貴族になったできる女であった。 一方、俺はそのできる女アルフィーネの付屬物として扱われ、彼女から浴びせられる罵詈雑言、パワハラ発言の數々で冒険者として、男として、人としての尊厳を失い、戀人とは名ばかりの世話係の地位に甘んじて日々を過ごしていた。 けれど、そんな日々も変化が訪れる。 王國の騎士として忙しくなったアルフィーネが冒険に出られなくなることが多くなり、俺は一人で依頼を受けることが増え、失っていた尊厳を取り戻していったのだ。 それでやっと自分の置かれている狀況が異常であると自覚できた。 そして、俺は自分を取り戻すため、パワハラを繰り返す彼女を捨てる決意をした。 それまでにもらった裝備一式のほか、冒険者になった時にお互いに贈った剣を彼女に突き返すと別れを告げ、足早にその場を立ち去った 俺の人生これからは辺境で名も容姿も変え自由気ままに生きよう。 そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の人々から賞賛を浴びて、辺境一の大冒険者になっていた。 しかも、辺境伯の令嬢で冒険者をしていた女の人からの求婚もされる始末。 ※カクヨム様、ハーメルン様にも転載してます。 ※舊題 剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で出直すことにした。
8 123[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者少女を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!
ホビージャパン様より書籍化することになりました。 書籍化作業にあたりタイトルを変更することになりました。 3月1日にhj文庫より発売されます。 —————— 「俺は冒険者なんてさっさと辭めたいんだ。最初の約束どおり、俺は辭めるぞ」 「そんなこと言わないでください。後少し……後少しだけで良いですから、お願いします! 私たちを捨てないでください!」 「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえよ! 俺は辭めるからな!」 「……でも実際のところ、チームリーダーの許可がないと抜けられませんよね? 絶対に許可なんてしませんから」 「くそっ! さっさと俺を解雇しろ! このクソ勇者!」 今より少し先の未來。エネルギー資源の枯渇をどうにかしようとある実験をしていた國があった。 だがその実験は失敗し、だがある意味では成功した。當初の目的どおり新たなエネルギーを見つけることに成功したのだ──望んだ形ではなかったが。 実験の失敗の結果、地球は異世界と繋がった。 異世界と繋がったことで魔力というエネルギーと出會うことができたが、代わりにその異世界と繋がった場所からモンスターと呼ばれる化け物達が地球側へと侵攻し始めた。 それを食い止めるべく魔力を扱う才に目覚めた冒険者。主人公はそんな冒険者の一人であるが、冒険者の中でも最低位の才能しかないと判斷された者の一人だった。 そんな主人公が、冒険者を育てるための學校に通う少女達と同じチームを組むこととなり、嫌々ながらも協力していく。そんな物語。
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