《學園一のお嬢様が風呂無しボロアパートに引越してきたんだが》第十九話 勉強できないお嬢様もいるの……ですわっ!
俺は開いた口が塞がらなかった。
志賀郷がテストで十點しか取れなかったって……。噓だろ……。
「お前…………めっちゃ馬鹿だな!」
「う、うるさいですわね! 勉強は元々苦手なんですのっ!」
高嶺の花=學業優秀という勝手なイメージがあったが、実際はそうでもないのか。しかし志賀郷の績が悪いとなると非常に大きな問題が発生する。それこそ四谷がバイトを休む程度では済まされない由々しき問題だ。
「うちの學校の學費は凄い高いんだぞ……。どうやって払うんだよ」
「うぐっ……」
俺達が通う京星けいせい學園は名門私立高校だ。故にブランドイメージが強く、優れた施設を維持するため學費がとにかく高い。それこそ、年収四桁ある家庭じゃないと學すらできない程である。
だからこそ、我々庶民は優等生が対象の學費免除制度を利用して生き長らえている訳だが、勉強できなくて金も無い奴の風當たりは強い。志賀郷咲月というネームバリューを以もってしても例外は通用しないだろう。
「だったら……一緒に勉強會しようよ! 皆で頑張って期末テストで良い點とろう!」
いつの間にかテンションが上がっている元兇四谷が提案をしてきたが……。志賀郷を仲間にして俺に勉強を教えてもらいたいだけだろ。別に教えるのは構わないけど……。
「勉強會って……。場所はどうするんだよ。まず、俺と志賀郷の部屋は無理だからな。三人も中にったら床が抜け落ちるし」
「なにそれ怖すぎ。そんな危険なボロアパートに咲月ちゃんを住まわせたの?」
「いや俺が決めた訳じゃねえよ。文句は志賀郷のご両親に言ってくれ」
思えば志賀郷をあんなボロボロの家に送り込んだ両親は控えめに言ってどうかしてると思う。他人の家庭事に首を突っ込むのは良くないが、それでも娘に対する配慮が無さすぎるのではないだろうか。
「狹山くんの言う通りですわ。悪いのは狹山くんではなくて私の親ですの」
「そ、そうなんだ……。それなら良いんだけど。……いや、良くはないと思うけど」
強気の態度で俺に同調する志賀郷に四谷は若干たじろいでいるようだった。
そういえば志賀郷の奴、初めてこの空き教室に連れてきた時も俺をフォローしてくれたよな。四谷が普通の庶民だったというを俺が志賀郷にバラしたと勘違いされたけど「狹山くんを悪く思わないでくださるかしら」と言って庇ってくれたんだっけ。あの時は助けられたし、志賀郷の心遣いが嬉しかったなあ。
「うーん……。私の家は親がうるさいから無理だし、さーくん達も駄目となると……。無難にファミレスとか?」
「ああ、それで良いぞ。ドリンクバーだけなら安上がりだしな」
これで一同納得……と思われたのだが、志賀郷は目を見開いて驚いた顔をしていた。嫌がっているようには見えないが……どうしたのだろうか。
「ファミレス……ですの?」
「うん、そうだよ。……あっ、もしかして咲月ちゃんはファミレスじゃ満足いただけないのかな!? えっと……高級レストランといえば
…………ロイホとか?」
「ロイホもファミレスだろ。サイゼとかと比べると高いけど」
そもそも志賀郷はファミレスに不満を持っている訳では無いと思われるのだが。寧ろ逆なのでは……?
「ファミレスで勉強會……! それ、如何にも高校生ってじで良いですわね。凄い楽しみですわっ!」
「お前も現役高校生だろ」
やはり俺の予想は間違っていなかったか。カップラーメンの件といい、志賀郷は庶民の生活に憧れを持っているらしいな。俺からしてみればお嬢様の悠々自適な暮らしの方が羨ましいと思うけど。
「お、咲月ちゃんまさかのノリノリ!? じゃあ場所は新宿西口のサイゼに決まりだね!」
四谷主導のもと、勉強會の計畫が早速建てられる。日程は三人の都合が合う今週末の土曜日に決まった。
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