《栴檀禮賛》父と子かつ男と男の話

「アミちゃん......昔かなり大変な目に遭ったそうじゃないか。」

「うん。」

「父さんな、印刷會社で働いてるだろ? だから新聞の印刷とかも、一応仕事の一部なんだよ。」

「それで?」

「だから、どこか責任をじずには居られないんだ。世の中のどこかには、ああいう風にメディアによって傷つけられた人がいて、俺はそれに関する仕事をしている。」

「でも、お父さんが直接的にアミを傷つけるようなことをした訳じゃないでしょ?」

「まぁそうだが......俺が言いたいのはそういう事じゃなくて、人間というのは思わぬ所で繋がってて、例え今やってる事が正しいことだと思っていても、巡り巡って誰かしら傷ついてるって事だ。」

「そりゃそうだろうけど、そんなのイチイチ気にしてたら、もはや何も出來ないよ?」

「だから、自分は『常に誰かに迷をかけてる』って言う認識を、忘れないでしいって事だ。」

「なるほど?」

「よく他の人は『誰にも迷をかけずに生きろ』なんて言うようだが、そんなのは土臺無理な話なんだ。だったらせめて、常に誰かに迷をかけてるって認識を持っていてしい。それさえ守ってくれれば、お前はきっと他人に優しくなれるはずだから。」

「分かった。」

アキバは大量の疲労と共に帰宅した。家にると、まず酔った父親の聲が聞こえてきた。

「父さん、また飲んでるのかい。」

「おぉタイヨウ! いい所に來た! お前も混ざれ混ざれ!」

「父さん、俺はまだ18だぜ? 酒は20歳になってからだろ?」

「あぁもう2年なんて誤差よ誤差! さぁ飲め!」

「いいよ、遠慮しとく。」

アキバは荷を持ったまま、二階にある自室へと向かった。そして部屋に向かう最中、父親への愚癡を獨りごちた。

「ケッ......普段は『人様に迷をかけないように』なんて口酸っぱく言ってるくせに、未年の息子に酒を勧めるなんて、マジどうかしてっぜ。」

アキバは部屋にるなり、自分のベッドにエナメルバッグをブン投げた。すると、その直後、ベッドから「ニャー!」という大きな聲が聞こえ、アキバは背中に大量の氷柱をブッ刺された気分を味わった。

「スカル! そこに居たのか! ごめーん!」

アキバは、さっきまでベッドで寛いでた貓に駆け寄るも、安らぎの一時を邪魔されたニャンコは怒り、アキバを無視して部屋から出ていった。

「あぁ......今日は厄日だ。」

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