《栴檀禮賛》勝手に消えた鷹を探す

放課後、僕はいつも通り特別補講の為の準備を始めた。すると、いきなりショウタに呼び止められた。

「ハヤテ、何してんだ?」

「あぁ、野球部の先輩達が赤點取りすぎて、甲子園出られなくなるかもしれない危機に陥ってるんだよ。そこで、アミが先輩達に勉強教えてるんだけど、僕も手伝ってるってワケ。」

「ほーん......そいつぁイイこと聞いた。」

ショウタは、お決まりの悪徳スマイルを僕に見せてきた。そのとき僕は、しまったコイツにベラベラ話しすぎた、と思った。

「ま、まぁ別にショウタは関係ないから、こんなこと言っても何がイイことなの? ってじだけどね。」

「あぁ『今はまだ』関係無いがな?」

そう言ってショウタは鼻歌を歌いながら何処かへと去って行った。僕は一抹の不安をじながら、特別補講の準備を進めた。

特別補講の時間になり、僕はいつも通りテキストを配り始めた。しかし、そこで何か違和じた。

「あれ? アキバ先輩は來てない?」

今ここにいる先輩達にテキストを配り終えたはずなのに、アキバ先輩の分のテキストが手元に余ったのだ。

もう一度よく教室を見回してみると、やはりアキバ先輩の顔が見えない。今日は病欠か早退だろうか。

「ケンジ先輩、アキバ先輩が休んでる理由とか聞かされてませんか?」

「ん、そーいや何も聞いてねぇな......チッ、あいつ前に俺にアレだけ言っといて、自分だけ先に抜けやがったのかよ。」

ケンジ先輩はアキバ先輩がいつも使っていた席を睨みつけた。そしてし考えた後、ケンジ先輩は立ち上がった。

「ちょっと俺、アイツのこと探してくるわ。」

「あ、ちょ。」

ケンジ先輩は僕の言おうとした事も聞かずに、教室から飛び出して行った。

「アミ、どうする?」

「2人の今日進められなかった分は、後で別にやってもらうから大丈夫。」

「分かった、じゃあココにいる先輩達だけ進めちゃおうか。」

「うん。」

ケンジは、アキバがいつも行くような場所を一通り見て回った。しかし、何処にも彼は居なく、そこから更に電話を滅茶苦茶かけまくったが、それも彼は出なかった。

「マジどこで何してんだアイツ。」

ケンジが半ば探すのを諦めた瞬間、彼の視界の端っこに、見覚えのある顔がチラッと映りこんだ。

「アキバ!」

「ケ、ケンジ!」

「何サボってんだテメェ!」

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