《栴檀禮賛》見えぬもの見えるもの

帰り道、アミと別れたあと、アザミは未だに僕の顔をマジマジと見つめている。僕は何となく気になって首元をろうとするが、アザミは黙って僕の手を止めた。

「棕櫚ヘビ様だっけ? 見初められると何かあるの?」

「変なのは大寄ってこなくなるよ。」

「変なのって何だよ......」

「普通の人たちが、悪霊とか怨霊とか呼んでるヤツら。私はモーテム人って呼んでるけどね。」

「その他に何か効果は?」

「取り憑かれた対象が男の人かの人かで効果が逆になるんだけど、男のハヤテの場合、が上手く行くよ。」

「もしの人が取り憑かれたら?」

「男が全く寄ってこなくなる。」

「へぇ、そりゃ面白いな。」

「良かったねハヤテ、男で。」

「お、そうだな。」

「でも気をつけてね。」

「何を?」

「棕櫚ヘビ様はホントに気分屋だから、ちょっとでも機嫌を損ねるようなことすると、ハヤテ丸呑みにされちゃうから。」

「機嫌を損ねるようなことって的に何?」

「それは私にも分からない。」

「ふ〜ん......もしかしたらだけどさ、アザミは事の本質を見抜く能力に長けてるのかもね。」

「どういうこと?」

「いやさ、正直僕には棕櫚ヘビ様だとか、枕モグラだとか、藪ワシだとかは見えないし聞こえない。でもアザミは存在を知っていて、更に見えも聞こえもしない僕の夢の容や、心の奧にめてる気持ちまで當てて見せた。」

「う〜ん......どうだろ? 皆が見え無さすぎるだけなんじゃない? ほら、あそこの人だって宇宙ミミズに集られてるのに気づいてない。」

アザミが指さした方向、そこには酔っ払いのオジサンが居た。どう見てもシラフじゃないと分かる、おぼつかない足取りで、コンビニの前をのらりくらりと歩いてる。

「あのオジサン、命に嫌われてる。きっともう長くない。」

アザミがそう言った瞬間、酔っ払ったオジサンは赤信號の橫斷歩道に飛び出した。直後、橫から來たトラックに撥ねられた。

「あ......」

「やっぱりね。みんな見えてない。宇宙ミミズも赤信號も。視界にるということと、見るということは別。棕櫚ヘビ様も宇宙ミミズも、藪ワシも枕モグラも、みんなの視界にはってる。みんな意識してないだけ。」

「どう意識すれば見えるようになるの?」

「心のゲートを開くの。そうしたら見えるよ。」

「心のゲートを開く?」

「簡単に言えば、素直になるってこと。」

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