《栴檀禮賛》ビギナーズラック蹴り

「なんだよ?」

僕は自分がした行の無茶苦茶さ加減を理解していた。アミに突撃すれば良いと言っておきながら、自分はアミの彼氏ではないと言っておきながら、自分はこの男をアミの所へ向かわせたくなかった。

「僕はアミの彼氏じゃない。それは事実だ。だけど僕はアンタをアミの所へ行かせたくない。これも事実だ。」

それを言った瞬間、その男はニヤッとした。そして僕の手をヒュッと解き、手をポキポキと鳴らした。

「やっぱり、お前の所に先に來て正解だったみたいだな。」

「やる気なのか?」

「俺は凡そ教育と呼べるようなモノは何一つマトモにけて來なかった。信じられるのは己の腕っ節のみ。そうして生きてきた。」

「なるほど。」

「だからお前を今ここで叩きのめして、突っ切ってブチのめさせて貰う。」

ここで僕は考えた。僕はケンジ先輩やショウタのようにボコスカ毆り合いをしてきたワケじゃない。

そして相手の力量を測れない程バカでも無い。コイツは確実に僕よりケンカ慣れしてるし、腕っ節だって相當上だと分かる。

正面からマトモに毆りあって、勝てるワケが無い。ならば、どうするのが良いか?

小細工を弄するか? ケンカに小細工を弄せる程、僕は用じゃないしケンカ慣れしてない。

誰か友達に助けを求めるか? お互いの好きな人同士で爭ってるのに、水を差す野暮をやるようなヤツは居ない。

そうこう考えてるうちに、相手が突進してきた。この時、僕は思い知ることになる。瞬発的な発力は案外バカにならないもんだと。

相手が頭を低くしてタックルしてくるじ、僕は咄嗟に相手の頭をボールと捉えて、サッカーボールを蹴り返す要領で蹴り飛ばした。

理の勉強は、まだマトモにした事が無いから分からないけど、どう考えても僕の蹴りは些か威力不足なのだが、相手から突っ込んできてくれるスピードが上乗せされてるじは分かった。

まさに豬突猛進、頭を蹴り飛ばされた相手は鼻を出し、ついでに足元の小石に躓いてダイナミックに転んでしまった。

「ビギナーズラック......ってやつかな?」

「グッ......くっそ......」

「勝った僕が言うのもアレだけど、ケンカはあんまり良くないよ。痛いし、ケガするし、勝っても何も良いことないし。」

「貴様......アミを手にれたのに、そんなことを言うのか!」

「勝った方が手にれるって、それは僕らが勝手に決めたことだろ? 誰と付き合うかなんてアミ次第だよ。」

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