《彼たちを守るために俺は死ぬことにした》11/14(土) 小鳥遊知実②
あたしは何様のつもりだったんだろう。
一気に、そんな思いにさせられた。
「悲慘」とか「グロい」の言葉に心の準備をしていたつもりだったけど、全然覚悟が足りていなかった……。
最初は青い顔をしつつも、靜かに眠っていた知実くんの傍に座って本を読んでいた。
原先生は投薬の処置をすると出て行ったから、部屋には壁側の機で事務作業をしている佐倉さんとあたしの3人だけ。最初はゆるい時間だなと思った。
だけどそれは突然始まった。
寢ていた知実くんが急に咳き込みはじめ、ゆっくりとを起こした。
「なっちゃん、バケツは向こう側にありますよ〜」
機に向かっていた佐倉さんが立ち上がる。
佐倉さんの言葉が終わる前に、知実くんはバケツに頭を突っ込み、大きく何度も咳き込んだ。
あたしも立ち上がって恐る恐る背中をさする。服の向こうに、ゴツゴツと固い背骨の覚。
ぽた、ぽた、リズミカルに點滴が落ち続ける。ごほごほと勢いよく咳き込む背中を、點滴よりもゆっくりさする。
「……やっぱ、中、切れやすくなってるね」
自するように笑うと、あたしに背中を向けたまま知実くんがベッドに倒れた。
佐倉さんが口元を拭ってあげると、タオルにべっとりと赤いがついていた。
泣きそうになりながら佐倉さんを見る。
「吐きすぎて臓に傷がって、どうしても刺激で切れちゃうみたいです。新しいだから鮮やかな赤でしょ。大丈夫ですよ」
それが大丈夫なことなのか、あたしには全然わからない。
だってそんなにを吐いてるのに、安心なんてできないよ。
「うぅ……」
うめいて知実くんがゆるりと背中を起こす。そしてまたバケツに頭を突っ込んだ。
ごほごほと咳き込み揺れるバケツの底で、べちゃりべちゃりと重い水音がした。
「今日は全然、おしゃれに吐いてる方ですね」
「いや……おしゃれて。……っごほごほごほ! げほっ!」
ツッコミもそこそこに、バケツに戻る。
學校のベッドで寢ているときも、弱っている姿を見て辛いなって思った。
だけど、どんなときもあなたは……。
「こんな治療けてるのに、全然つらいって言わなかったね……」
これは口からこぼれ落ちただけの、ただの獨り言。
こういうのも全部言ってくれて、「甘えてる」ってことじゃないのかなって。そんな気持ちで、自分が知実くんの支えになれているかどうかの不安がこんなときに膨らんでを圧迫する。
「ごほごほごほっ!! うっ……げほげほっ!! ……はぁ、はぁ」
吐き切って荒い呼吸を正しながら、知実くんは長い前髪から、ちらりと目だけあたしの方に向けた。
その鋭い視線にどぎまぎする。
「俺、いちごと、一緒にいるためと思えば……。っ、全然、生きることくらい、平気だから……」
だらけのタオルを顔に乗せ、まくらへ向かって棒を倒すように倒れた。
それから橫向きに寢転び、背中を丸めて苦しそうな荒い呼吸が続く。
「っ……」
逃げ出したくなる。
目を背けたくなる。
こんなことを、ずっと続けていたんだ。
あたしたちと高校生活を送るために……。
荒かった呼吸が落ち著くと、知実くんは気を失うように、すうっと眠った。
すとんと腰が抜けてその場に座り込んだあたしは、顔を覆って靜かに泣いた。
貓《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】
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