《小さなヒカリの語》32ページ目

ご飯のパワーは素晴らしい。

「とってもおいしかったです」

「そうかしら? うふふふふ」

「ケーキまで用意してくださって、何か悪いです……」

ヒカリに笑顔が戻っている。それを見て俺は心からほっとする。最後まで無言だったら何か取り返しのつかないことをした気になるからな。せっかくのごちそうをお通夜みたいな雰囲気で食べたら、それは料理に失禮ってもんだろう。

「いいのよ。ヒカリちゃんが帰ってきたことはそれだけでおめでたいことなんだから」

そう言って、母さんがヒカリにどんどん料理を勧める。確かに母さんの言うとおりめでたいことだ。でも、この量は正直ありえないんじゃないかと思う。17品目ってどうよ? ケーキまで準備してたなんて用意周到すぎやしないか。それに普段食べてる料理よりも味の質が違う。確実に一段階はアップしている。

「毎日ご飯作るのはほんとにめんどくさいのよね。だからいつもは手抜きしちゃってるけど、今日はヒカリちゃんのために久しぶり本気出しちゃった。うふふ」

「うおい!」

母さんの弾発言に思わず突っ込みをれてしまった。いや、母さん、うふふじゃなくてさ。いくら手抜きが子を持つ母親と接な関係にあろうとも本人の前では言わないでほしい。

「あのなー普段から上手く作れないんじゃそれは上手いとは言えないんだぞ。今日たまたま上手く作れただけかもしれない。実力のある人はそれを長く続けることが出來るもんなんだ」

俺の言葉に母さんは目をぎろりと向け、

「うっさい。じゃあ、あんたはケーキ抜きね」

と一刀両斷。ふっ、ケーキなぞ子供だましに過ぎぬわ、とささくれ立つ俺の心に反して口が勝手に、

「ごめんなさい。もう言いません」

と謝罪の言葉を述べたので仕方なく騙されてみることにした。てゆーかケーキ大好きだし。

「これから毎日こんなにおいしいご飯が食べられるなんて幸せです」

最後に食べようととっておいたイチゴをフォークで刺したとき、ヒカリの言葉に訂正部分を見つける。毎日なんて食えねぇって。ヒカリが夕ご飯を毎日食べに來るなら別だけど。

これから毎日という點に、母さんは別段気にしている様子もなく、

「ふふっ、お世辭でも嬉しいわ」

「お世辭じゃないですよぉ」

「まぁ! ヒカリちゃんはなんていい子なのかしら」

と依然として俺抜きの會話が続行されていたので、俺も深くは考えなかった。

そうこうしてるに時間は流れて行き、気がつけば八時。辺りはすっかり闇に沈んでいる。

の子が出歩く時間帯としては十分遅いので、家まで送ることを視野にいれつつ、まだ時間に気づいて

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