《小さなヒカリの語》37ページ目

「おーきーろぉー朝だぁー!」

ばたんとドアが開き、それからぼふっ、とに重さがかかった。ヒカリがベッドに乗ってきたのだろう。ぺろんとめくられる。ヒカリが本腰をれて布団を剝ぎ取りにかかった。俺も負けじと布団をに巻いていく。全てを巻き終えてひとまず布団の安全は確保した、と思ったら、ヒカリは捲れている角っこをつかみ、一気に引っ張った。よいではないか、よいではないか、とは別に言わない悪代の前に、

「あーれー」

と床に転げ落ちて頭を、

「ふごぉっつ」

……強打した。あれ、昔死んだはずのおじいちゃんが川の向こうから手招きしてるよ。あ、ちょうちょさんだ、ねぇ待ってよー。あっ、もう。このー待てー。あはははは。……はっ、今俺は何を!?

「だ、だいじょうぶ? こー……ちゃん?」

ごめんやり過ぎちゃった、とヒカリ。しゅんとなってるのが異様にかわいい。

「……そこはかとなく。うっ、俺はもう……」

そう言って俺はばたん。首の力を抜いて、死んだ振り。

その様子を見たヒカリはぶるぶる震えて、

「こーーーちゃーーーーーん!!!」

んだ。朝からヒカリの聲はよく響いた。近所の犬がわおぉーんと遠吠えしてなんとも言えないハーモニーが奏でられた。そして俺は一日の始まりに生者必滅ということわざを知った。違うけど。

 昨日の夜ご飯の殘りを朝ごはんとし、遅刻しない程度に俺らは家を出た。

教科書の用意をし忘れてたため朝からし焦ったが、早めにヒカリが起こしてくれたので余裕だった。頭は……まだしじんじんする。こぶになってないか心配だ。

それはさておき、昨日がヒカリとの三年ぶりの下校なら、今日はヒカリと三年ぶりの登校。

なんとなしに歩みが軽い。

「この坂、傾斜きついね」

歩みが軽い……というのは平坦な道の時であって、今は坂道。足腰に結構な負擔がかかる。

「學校につくまで三つの坂を越えなきゃいけないから、朝から重労働だな」

「だ、だね……」

「今登ってる坂は日坂って言うらしいぞ。次が苦悶坂、最後が地獄坂。力が消耗してるときに地獄坂ってまじで冗談きついわ」

「だ、だね……」

これから毎日この坂を登らなきゃならないと思うとため息が出る。初日はなんとも思わなかったんだがな。それはそうとして、

「……なぁ、なんでそんなにきつそうなんだ? 傾斜がきついって言ってもまだ最初の坂だぞ? 昨日

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