《小さなヒカリの語》40ページ目

「裏切り者はこれでもくらえー!」

「ひでぶっ」

正義の鉄槌が鈴木に下った。悪は得てして滅びるものなのだ。アーメン。鈴木は床に倒れ伏した。

腹の蟲が鳴るのが早いか極めて微妙なラインでお晝のチャイムは鳴り、俺はほっと息をついた。

「結構ぎりぎりだったなぁ……」

お腹が空いて今の時間、授業にあまり集中できなかった。

「ほら、何してるんだ。飯行くぞ。四ノ瀬さんも連れて中庭集合な」

英人の提案により、弁當を持って中庭で食事をすることになった。カフェのようなこの場所は俺も行きたいと思ってた所だ。席について三分も経たないに辺りは生徒で埋め盡くされ、その人の多さに自分がどれだけちっぽけな存在なのか認識させられた。その認識はまぁ噓として、人気のある場所ということは一目瞭然だ。

「ヒカリちゃんはどんなタイプの男が好き?」

初対面にも関わらず、鈴木がなぜこんなにも馴れ馴れしいのかは、あの後休み時間になるたびに俺がわざわざ狀況説明に応じてあげたからで、いやそれにしても馴れ馴れしすぎるだろと思うのは決して俺の度量が狹いわけはないのだろう。

調子に乗られると面倒だからな。そうなる前に心を折るか。

「出會い系は引っ込んでろ」

「……」

あの後、鈴木に彼のことについて問い詰めたところ、お相手の名前は明(38)と言い、まだ業者を通じてメールのやりとりをしているらしい。

「別にぃ。俺たちはこれからなんですけどぉー」

鈴木は開き直るときは人格に若干ギャルが混じるため、至極分かりやすい。

「知り合って何ヶ月目だ?」

「二ヶ月ちょい」

「會ったことはあるのか?」

「……ない」

「それはもうあれだな。ポイントを買わせるだけ買わせて決して會うことはしない、とある業界の常套手段だ」

のためには金も厭わない。それが本當のってやつじゃないのか?」

合ってそうな気もするが、なくともこの場合は間違ってる。鈴木が言うと単なるギャグだ。

本當にいると信じ込ませられていた英人も、やれやれといった表で鈴木のバカさ加減に呆れている。ヒカリはというと、何やら考え事をしているようで、箸のペースが一向に進んでいない。どうしたんだ

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