《小さなヒカリの語》69ページ目

ていたらしい。その張が急に解けたため、足がもつれたようなじで地面に膝をついてしまった。ヒカリが不安そうな表で俺を見ていたが、何か言われる前に俺は立ち上がって、

「石につまずいただけなのにそんな心配そうな顔するなよ」

「でも、今のってそんな倒れ方じゃなかったよ?」

「大丈夫。本人が大丈夫って言ってるから大丈夫だ。それよりも俺をつまずかせた石が悪い。おい、石! こんなとこに転がるな。よそへ行け!」

げしげしと近くにあった石を蹴る。蹴つまずくにはちょっと小さいかもしれない。選択ミス。途中でもっと大きい石に切り替える。あ、これなら転びそう。

「ほんとにそれだけ? なら良かった」

ほっとしたようにヒカリは息を吐く。噓も方便というだろ。余計なことで心配させたくない。俺がオウムの戦闘に関わることへの心配は、それだけは仕方ない。心配するなというのがおかしい。そして、心配されないようにまで強くなる、それが俺が俺に決めた一つの意志。絶対に流されはしない。

「それで、どうだった? こーちゃんはなんて思った?」

ヒカリが首をかくっと傾けて俺に想を求めてきた。純粋に聞きたいらしく、くりくりとした大きい眼がいつも以上にくりくりしている。長いこと馴染やってたので、目のくりくり度でそういうのが分かったりする。

「怖いとか思わなかった? あんなとこで平気そうにしてる私を変だとか思わなかった?」

ここでし表が変わる。不安そうに俺を見つめてくる。だからそんな不安を拭うように答える。

「ヒカリを変だとか俺が思うはずないだろ。ヒカリが何をしたとしても俺は絶対ヒカリの味方でいるし、ヒカリのことを悪く思わない。そもそも討魔師が異次元空間で平気でいるのって普通のことだろ。こんなとこでいつも戦ってるんだってヒカリのことを知れて良かった。なんか尊敬した」

「ありがと。噓でも嬉しい」

「噓じゃないから」

分かったことはいっぱいある。視界は、基本空間にいる時はもちろん基本空間の風景だが、異次元空間の扉を開けた場合、基本空間にいる俺の目には実のある、オウムやヒカリの姿が見える。異次元空間にいる時は、実を持たない薄紫のもやや、基本空間にいる人間が見える。つまり、それぞれの場合で目に映るものとして、優先されるものと優先されないものがあるのだ。

空を確認するとヒカリの言っていたことは正しいということが分かった。雲の量がさっきの空間よりもなく、太も雲に隠れていない。異次元空間は基本空間とは時間軸がずれている。ヒカリの戦っている世界のことを知れて嬉しさ半分、怖さ半分といったところだ。この世界にないもの、それを実して新たに怖さが生まれた。実際に自分と接することのないオウムとはまた違う。當たらない、知されないとかそういうものがなくなった時、俺はほんとにヒカリの戦う世界に介することが出來るのだろうか。その夜は、自分がオウムと同じ土俵で戦うことを想定して、眼が冴えてなかなか寢られなかった。

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