《小さなヒカリの語》73ページ目

ージは一萬ボルト。まず単位から違う。

俺のお気にりとらじまトランクスは気づくまでの間、一般公開されていたわけだ。家から學校までこれで來たのかと思うと……うわ、恥っず! とらじまの人とかあだ名つかないかな。頼む、誰か。誰でもいい。俺をフォローしてくれる救世主はいないのか。

「お前のパンツはGEKAIを覗きに來た雷神様か」

いた。俺の慌て合に見かねた鈴木が助け舟を出してくれた。やっぱり持つべきものは友達だなぁとしみじみする。だが、こいつがクラッシャーだということを忘れていた。

「どんまい、康介。でもまだましなほうだと思うぜ? 俺なんかパンツはいていなくてズボンのチャックからだらーんだったからな。あれは俺のゼロマグナムが久しぶり日の目を浴びた日だったなぁ。あ、でもゼロマグナムだとなんか勘違いしそうだから呼び方を変えるか。この呼び方なかなか気にってたんだがな。うーんそうだな、ケルベロスってどうだろ。メチャクチャかっこよくねぇか!? 今、自分のネーミングセンスの凄さに恐怖を抱いたわ。とらじまのパンツごときじゃ俺様の武勇伝は超えられないぜ。殘念だったな☆」

教室しーん。みんな口ぽかーん。俺は呆れた。というか引いた。鈴木の怒濤のバカ舌っぷりに、普通、軽く聲かけてめるとか笑い飛ばすとかじゃねーの? こういう場合の対処法としては。

失敗のさらに上をいく失敗を大きな聲で曝け出すなんて、そんなこと俺には出來ない。

オブラートに包まれていても、下ネタを公共の場(擔任含め総勢三十四名)で出すのは命知らずというかなんというか、つわものだ。ただし、つわものどもが夢の跡。あえなく撃沈した。

男子の中には反応したくても子がいるから口を閉ざしてる奴、分かりやすく引いてる奴、興味ない奴などなど。子は分類などなくみんな分かりやすく引いていた。

今この狀態に名前を付けろというなら、第二次鈴木危機だ。別に鈴木のせいでトイレットペーパー買い占めとか行われないが、二次があるなら四次までありそうと、勝手に妄想を膨らます。

と、教室のひんやりとした空気に気づいた鈴木は「……ごめん……さい」とあからさまに肩をがっくりと落とし、腕をだらんと空気に遊ばせて、悲観的なムードを作り上げた。テルさんみたいでかっこいいという見方もなきにしもあらずだ。

「……みんなそろってるか。よし、それじゃあ始めるぞ。クラス委員號令」

先生は咳払いを一つして、何事もなかったかのようにホームルームを始めた。

終わっても顔を上げず、機に突っ伏していた彼に聲をかけるものはいなかった。

ともあれ、だ。人事故がタイミングよく起きたおかげで、俺のとらじまぱんてぃへの関心は削がれたと言っていいだろう。鈴木、サンキュな。心の中で謝の呪文を唱え、俺も機に突っ伏した。

「……眠い」

すごく眠い。睡魔がスイマーとなって気持ち良さそうに脳の海を泳いでいる。

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