《小さなヒカリの語》89ページ目
ヒカリとはし顔を合わせづらい。勝手に一人で機嫌を悪くして、理由も言わず先に帰ってしまったから変な風に思われてないか心配だ。
「別々に帰ってきたみたいだけど、ヒカリちゃんと何かあったの?」
ちん、と電子レンジが鳴った。母さんは電子レンジから皿を取り出し、別の皿をまたれた。
「別に何もない。ちょっと急に用事が出來てさ」
「そう、それならいいけど……ヒカリちゃん心配してたわよ? きちんと理由を話して安心させてあげなさいよね?」
「分かってるよ」
でも本當のことは言えない。罪の意識に苛まれて逃げ出しました、だなんて。勝手に思っていることだから、それゆえに分かち合えない事だってある。言わなくて良いことだってある。言って余計な心配をかけさせる必要はないのだ。自分の問題は自分で解決しなくちゃ。
と、ほぼ自的にあの時のことが頭の中で再生された。
ヒカリのおばあちゃんのことはよく知っていた。家に遊びに行くといつも笑顔で「いらっしゃい」と歓迎してくれた。ヒカリがいない時は、帰ってくるまでの間、おばあちゃんとだべったりして時間をつぶした。他にも生活の知恵や面白い話を教えてくれて、俺はそんなおばあちゃんが大好きになった。おばあちゃんはどんな時も笑顔で俺に優しく接してくれた。だからどうしてもおばあちゃんの急な時は助けてあげたかった。それをまだい自分の頭は、ヒカリを連れておばあちゃんのいる病院へ行くことと認識していたらしい。ふと見上げると、オレンジの夕はまだ空に浮かんでいた。さっきからずっと変わらない景に一種の閉塞をじた。駆け回り過ぎて息が苦しかったのをそう勘違いしたのかもしれない。ヒカリがどこにいるかも分からないのに走り回る自分の後を、夕焼けはずっとついてくる。どこまでも自分を追いかけてくる。ヒカリがなかなか見つからない焦りと、そうさせてしまった後悔の念が不安定な気持ちにさせた。オレンジの空に、穏やかじゃない何かをそこで初めてじた。理由が分からないことが逆に不安を募らせた。
そしてそのまま夕が沈むまで心は落ち著かず、辺りが薄暗くなっても懸命にヒカリを探した。けどがかなくなってくると、もしかしたらヒカリは家に帰ってるのかもしれない、そしてもうおばあちゃんに會いに行ったのかもしれない。そんな考えが浮かんでは消え、俺は當てもなくふらふらと街中を歩いていた。警察の人に迷子と思われ聲をかけられて、咄嗟に逃げた。走って走って走って走って、どんっ、と人にぶつかって地面に倒れた。
そこには人だかりが出來ていて、赤いランプが點燈していた。ぶつかった人に謝ろうとしたけど、気づいてない様子だった。その人は道路のほうを見ていた。いったいなんだろうと爪先立ちして見えた景に、頭より先にが反応した。ぽたっ、ぽたぽたっ。涙が流れてきた。それからが一気に発して、涙がわっとあふれ出た。自分のせいだ。い心でじ取った罪の意識。、、。で赤く染まったヒカリが擔架で擔ぎ込まれたのを見た。その姿は今でも鮮明に覚えている。
救急車が去ってからのことはよく覚えてない。どうやって帰ったのか記憶がない。ただその時、を
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