《小さなヒカリの語》96ページ目

名前がなんと壯大な。鈴木のネーミングセンスは親父譲りのものだったのか?

「……って日曜日? 今、日曜日って言ったか?」

その日は絶対他の予定をれちゃいけない日だ。

ヒカリが心配そうな顔を俺に向けた。分かってる、と頷き返す。

「すまん俺はパスだ。その日は外せない用事があるんだ。せっかくってくれたのに悪いな」

「やっぱ最近つれなくないか? なぁ、英人は來るよな?」

「あぁーじゃあ俺もパスだな。一人だけ友達として招待されても気を遣うだけだし。鈴木はお父さんを目一杯祝ってやってくれ」

英人も行かないということになって、鈴木は寂しそうな表を浮かべた。はぁーとため息をつき、人差し指を合わせていじいじして、はっとしたように顔を上げ、瞳をきらめかせて、

「ヒカリちゃんはうちに來ない?」

「だめだ。絶対行かせねぇ!」

「なんでお前が決めるんだよ!?」

俺の即座の返答に鈴木はたじろいだ。瞳のきらめきを奪うことして悪いと思うけど、ここは全力でブロックだ。ヒカリとの約束のためには致し方あるまい。

「そうかそんなことするのかお前は。俺の立場もちょっとは考えてくれたっていいだろうによ! 誰も連れてこないって俺はどんだけ寂しいやつなんだよ!?」

「でもラブレターの件でヒカリと二人きりはまずいだろ?」

あんな突飛な文章を書く奴は、脳の思考回路も突飛に違いない。突飛な行をするかもしれないから、こいつにヒカリは任せられない。

「そうだ、返事!」

鈴木は何か大事なことを思い出したかのように高い聲をあげた。みんなの視線が鈴木に集中。

「ヒカリちゃん!」

鈴木はすくっと立ち上がって、ヒカリのほうに手をばし、

「手紙の返事を聞かせてください。よかったら僕と付き合ってください!」

まだ諦めてなかったのかよこいつ。

「返事を強要する真似はやめろよな。ヒカリがあのことでどれだけ被害をこうむったか」

あることないことを並べたてる。噓も方便。噓をつくだけでこの場が収まるならいい。

しかし、思いがけないことがおきた。ヒカリが大きく息を吸い込んで、

「ごめんなさい。私は鈴木君とは付き合えません。手紙は嬉しかったけど、ほら、お互いのことよく知らないし……とにかく無理なんです、ごめんなさい」

俺の口があんぐり開いた。こんなにはっきり斷るなんて思わなかった。

「そ、そそ、そそそそっか」

鈴木はしょんぼりとなって床に座り込んだ。中學からのを合わせると、これで確か告白十五連敗だ。

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