《小さなヒカリの語》104ページ目

こういう急の時は顔を赤くするもんだな。ヒカリの心臓の音が聞こえる。

「……こーちゃん?」

「あ、悪い」

放すことを忘れていた。

『見て! カップルがいちゃついてるーー』

『見ちゃいけませんっ』

「え……」

「え……」

著したを引き離して、真っ赤な顔をお互いに見合す。

「ご、ごめんないきなり」

「い、いや、こ、こちらこそ」

ガキんちょのせいで言葉がしどろもどろになる。顔が焼けるように熱い。

「カ、カップルに見えるのかなぁ、私たち」

ヒカリが顔をうつむかせ照れくさそうにしている。

「そ、そうなのか? たまたま抱き合ってるように見えたからだろ?」

なんか付き合って間もないカップルのやり取りのようなベタ甘な展開を繰り広げている気がするが、これは決してそのようなものじゃない。ヒカリがこけそうになったのを男としてただ助けただけだ。本當のことなのになぜか言い訳を考えてる自分がいる。

まだ赤い顔のままうつむいてるヒカリに歩くことを促すために、

「ほら、手」

「え?」

「次に転んでも助けられないかもしれない。だから今のうちに手」

「あっ、うん!」

俺はまたヒカリが転ばないようにと手を繋ぐことにした。これはただ手を繋いでいるバカップルとは違う。怪我をしないようにという目的意識が組み込まれているから大丈夫なんだ。

デパートの部は前もって聞いていたとしてもやっぱり広く、たどり著くまでそこそこかかった。

店の看板には『ダイアリー柏崎』と書かれている。他の店と比べるとし質素に見えるが、俺は英人の高いファッションセンスを信じてるため先観無しにれた。床は照明のが跳ね返るほどピカピカに磨き上げられていて、側壁に飾られている絵畫からもセンスをじた。新裝開店(ほぼ別の建)というだけあって、力のれようが半端じゃない。何より一番重要な値段が、

「こーちゃん、これが1200円だって!」

「マジか! 破壊的に安い!」

「これなんか900円だよ!」

「洋服のIT革命や!」

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