《小さなヒカリの語》114ページ目

こには思った通りオウムが浮遊していた。力を解放し、手の屆かない場所からオウムが接近してくるのを待つ。覚を研ぎ澄まして、最初の一振りに意識を集中させる。

「………………あれ?」

二、三十秒は経ったと思う。私は力を解放している。言いたいことはそのままの意味じゃなくて、オウムにはく気配がないということ。大きく気構えていただけに拍子抜けしたがある。力に吸い寄せられるように突進してくるオウムに限ってこんなこと……

「まさかっ!」

瞬間、理解した。

顕現した武を一旦カードに戻す。助走して勢いをつけ、足に力を集めて跳躍する。石造りのベランダに足を置きついで、力を込めて再び跳躍。普通でないオウムが素直に力に引き付けられると思うのは甘かった。オウムが最終的に向かおうとするのは基本空間だ。こちらがアクションを起こしてもかないのはオウムが〝扉〟を開こうとしている場合だけ。

最後の跳躍で屋上まで一気に跳ね上がる。金網の柵を飛び越えて、コンクリートの上に著地する。素早く勢を整え、オウムのいる方へ目をやった。そこには空間に小さな亀裂が出來ていた。

オウムを基本空間に行かせない!

「我に與えよ我に授けよ全てをちりと焼き盡くす力!」

詠唱して炎を放つ。炎は狙い通りに屋上の一隅に浮かぶオウムに命中した。

致命傷にならなくても、自分の存在を示すことで空間の扉を開くことを阻止する。

オウムがこちらをくるりと振り向いた、気がした。區別する部分がないのでよく分からない。けれど私を攻撃の対象とみなしたのは向かってくることで分かった。カードから剣を顕現させて向かい討つ。

「ハァアアアアアアア!」

最初の一撃に力を込める。オウムの特をつかむための斬り込み。大きく剣を振り下ろす。

「うぐっ、ぐっ」

弾かれ、がら空きになった上半に突進が見舞った。後方に突き飛ばされ、衝突の勢いそのままに金網に叩きつけられた。ひざをつく前に一歩足を出して踏みとどまる。

(特殊というほどじゃない。そこまで速くないし、攻撃も特別重いわけじゃない)

向かってくるオウムを上に跳んで避ける。オウムの反対側に飛び越えると同時に、金網の突き破られる音を聞いた。オウムは方向を変え、再び私めがけてスピードを上げてきた。

大丈夫、ただいだけ。策はある。

「我に與えよ我に授けよ轟き屠れいかずちの刃!」

オウムの上下部に電撃を流して、その裝甲にほころびを生じさせる。いくらいとはいえ、傷ついたところを攻められれば亀裂が生まれるはず。修復される前にオウムを真っ向からねじ伏せる。

「……えっ?」

がきんっ、という鈍い音。剣はオウムを切り裂かない。

    人が読んでいる<小さなヒカリの物語>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください