《まちがいなく、僕の青春ラブコメは実況されている》第3章 僕は、普通の夏休みを過ごしたい。1
夏休みは、昔から好きだった。
普通の場合、その理由は、友達との思い出づくりができるとか、なかなか行けないところに遠出できるとか、だいたい前向きでポジティブなものだと思う。
でも、僕の場合は「普段よりめられずに済む」というひどく後ろ向きな理由によるものだった。それでも時々は、いじめっ子に無理やりに呼び出されることもあったりはしたのだけど、その頻度は學校に通っている時よりも格段になくなった。夏休みの存在が、いじめの緩衝材として機能してくれたのだ。
だから極力、僕は夏休みの外出を控えた。
不用意な外出は、いじめっ子との不意のエンカウントを生むからだ。
とはいえ、ほとんど一人暮らしのような生活だったので、生きていくのに最低限必要な食料や資は買いに行かなければならない。そうした際も、そのタイミングに細心の注意を払い、最低限の頻度でこなすことを心がけた。
だから、どの夏休み明けも僕は白のまま迎えた。
でも、そうして手にる心の平安を僕は好ましく思っていた。
ゆえに、夏休みは好き、だったのだ。
が、今年に限ってはし事がちがう。もとい、全然ちがう!
たとえ、ずっと家に引きこもっていようと、心に平安が訪れることはない。
――理由は言うまでもなく、伊達さんだ。
夏休みだから伊達さんの実況も休みになる、なんて都合のいいことはまったくなく、それどころか夏休み初日から嫌がらせのような実況で僕は煽られまくっていた……。
『さあ、二度とない乙幡剛、高一の夏休み初日であります! にも関わらず、いったいいつまで引きこもっているつもりでありましょうか? 乙幡剛に何もきがないとなりますと、私の実況の停滯も意味するわけであります! そして実況の停滯は、すなわち私の仏が遠のくことと同義なわけであります。それでいいのか、乙幡剛? 私の実況が一生つきまとってもいいのか、乙幡剛! 嫌だったら、今すぐ書を捨て町へ出よ‼ 私の実況が映えるシチュエーションを町にハンティングに行く以外、この実況から逃れるはないのであります。もしこれでも行かないと言うならば、イヤイヤ期の子供のような絶実況で嫌がらせすることも厭わないわけであります!』
「……あー、もう! わかりましたよ! でかければいいんでしょ! でかければ!」
こんなじで半ば伊達さんに煽られ、僕は夏休み初日からイレギュラーな外出をするはめになったのだった……。
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