夏休みにった。

今日も各地では最高気溫を更新しているらしく、テレビのニュースキャスターが「今日も暑いですねぇ～あはははは…」と言っていた。

最後の笑いは何なんだよ。

俺たちが住む地域でも例外ではなく、猛暑日が続いていた。

そんな中でも部活は行われ、學校のグラウンドには真っ黒に焼け、甲子園に出場できなかった野球部員が悔しさをバネに素振りだのキャッチボールなどをやっていた。

サッカー部も…まぁ、地區で最下位の最弱だから悔しいとか思ってるのか分からんが、おぼつかないパスやシュートの練習をしている。……これで大丈夫なのか、サッカー部の監督さん！

そして、文科系部活である我が『求人部』も活をしている。

「あー。あっちぃー。」

「しょーくん、何そこでぼーっとしてるの？早く早く！」

「そうだよ！せっかく海に來てるんだから行こうよ！」

照りつける太が俺を焼いている。……なんか中二くさいな。

そう。月が言ったと思うが、俺たちは今海に來ている。

なぜ、海に行く必要があったのかは分からないが、六花いわく、「海はリア充のデートスポットである！今日はそれを學びに行く！」ということらしい。

俺はリア充になったこともないし、逆にアンチである。

ラブコメなんてアニメの世界だけでいい！なんて現実世界に必要ない！とまで思っている。

「それにしてもなんで水著を著ないんだ？」

月の上半を見ると、水著は來ておらず、半袖Ｔシャツに半ズボンといった服裝だ。

せっかく海に來てるんだから水著に著替えてくればいいのに。

「そ、それは……そう！ぼ、僕、水苦手なんだ！」

こいつ今考えたよな？

その必死そうな表を見れば、誰でも分かる。

何か隠してるな…。

「ちょっとこっち來い。更室行くぞ」

「で、でも…六花ちゃんはどうするの？」

六花の方を見ると…うん、大丈夫そうだ。一人でキャーキャーびながら海で遊んでいる。

俺は嫌がる月の腕を強引に引っ張り更室に向かった。

更室にるなり、月の顔が真っ赤になっていた。

「どうした？」

「な、なんでもないよ！」

なぜか目をあっちこっちに泳がせ、挙不審になっている。

「そ、そうか…じゃあ、これに著替えろ」

し気になったが、まぁいい。

俺は予備に用意していた水著を月に手渡した。

すると、月の目が大きく見開き、

「ぼ、僕はいいよ…さっき言ったでしょ？」

と、最後は聲が小さくなった。

そのまま俯いている月。

なんか水著に著替えてはいけない罰でもけたのだろうか。誰か知らないけど。

ここはもう強引に著替えさせるしかない。

たとえ、その誰か知らないやつに怒られたとしてもいい。月だけ海で遊べないのは可哀そうだ！

「ほら、著替えさせるぞ」

俺はそう言い、上著に手をばした。

「な、何するんだ！放して！」

それに一足遅く、気づいた月が激しく抵抗する。

「いいからおとなしくしてろ！」

それでも俺は著替えさせようと必死に半袖Ｔシャツをがしにかかった。

「やっとげたか…それじゃあ下も…」

半袖Ｔシャツをがすことに功し、上半になった月の元を見て俺は言葉が詰まった。

そのことに気づいた月は顔を真っ赤にして両腕で元を隠した。

「お前……それって…」

「い、いや、こ、これには事があるんだ！」

月の元には包帯が巻かれていた。

俺はそのケガどうしたのか聞こうと思った時、月が急に言葉を遮り、あたふたし始めた。

なんなんだ。そこまでヤバい事があるのか。

「その事ってなんだ？そのひどいケガどうしたらなるんだ？」

「え…」

月がポカーンとした顔で俺を見つめ、固まってしまった。

今なんか変なことでも聞いたかな？

「おーい、大丈夫か？」

「え？！…う、うん！大丈夫…」

一瞬驚いた顔になった月。

我を忘れるぐらいのことがあったのかな？

「で、その事ってなんだ？」

「う、ううん！何でもない！と、とにかくこのケガのせいで海とかダメなんだ」

「そうか…悪かったな」

「い、いや、別に気にしてないから大丈夫だよ！あはははは。」

なんか本當に悪いことしちゃったな。

特にそれを思わせるような最後の乾いた笑顔はなんか心にグサッてきた。

これからは余計なお節介は焼かないようにしておこう。

半袖Ｔシャツを著終わった月と一緒にもとの場所に戻ると、六花が激おこぷんぷん丸になっていた。

「2人とも私をおいてどこに行ってたの！？私ナンパとかされまくって大変だったんだからね！」

まぁ、ナンパされるぐらいの貌だからね…小さい以外は！

「ご、ごめん…月と更室に行ってたんだ」

そのあとは詳しく事を説明して、何とか六花の怒りを鎮めることに功した。

ただ…

「私が聞いた話では水著を忘れたって言ってたけど？」

「い、いや…それは…」

月がまるで斷崖絶壁に追い込まれたような狀態になっていた。

いくら言いにくい事があるからと言って、噓をつくのはなぁ。

せめて噓をつくのであれば、統一してほしい。

「まぁ、いいわ。それより…」

六花は月に追い込むのをやめると、俺に笑顔を向け、

「今日、この地區で花火大會があるらしいよ！よかったら…い、一緒に行かない？」

はぁ…。

これは行かないという選択肢がないパターンですな。