実は暁はマンションを出た所から引っかかっていた。

芹をマンションに殘し先に出た。エントランスには運転手付の車が待っている。そして、いつも通り駿が待ち構えていて挨拶をわした。

「時間通りだな」

「當たり前だろう？俺を誰だと思ってる？」

「宮さんは？」

「車で一緒には行かないと斷られた」

「當たり前に乗るよりいいじゃないか」

「そうなんだが、ストーカーの一件があったばかりで心配なんだ」

「何か連絡はあったのか？」

「ああ。思っていたより大勢に知られているようだ。実際に、ストーカー行為をするつもりのあるやつはごく一部だろうが、用心をするに越したことはない」

會話をしながらも車に乗り込んだ暁だが、一瞬どこに視線を向けた。

「どうした？何か気になることでも？」

「ああ。一瞬誰かに見られた気がする」

「ストーカーか？」

「いや、の視線だ」

「だれだ？」

「わからない」

一瞬にして暁がピリピリした空気を醸し出す。朝から不機嫌なことはあっても、張を漂わせることは珍しい。芹に出逢ってからの暁の変化に駿は驚くばかりだ。

いつも通り車でスケジュール確認を済ませ、地下駐車場から社長室にるが、やはり気になる。

始業時間を迎えた頃には、我慢の限界がやってきた。

「シンジョーテックに行ってくる」

「はあ！？」

駿が驚きの聲を上げた時には、既に扉に向かっているではないか。

「ちょっ、ちょっと待て」

「待てない」

「いやいやいや」

「なにか文句でも？」

「普段、シンジョーテックに直接出向くことのない暁が現れたらおかしいだろう？」

「おかしいとかおかしくないとか関係ない。芹の顔を見ないと安心できない」

「宮さんに迷が掛かるぞ」

「別に直接聲を掛けるわけじゃない。社長に會いに行くだけだ」

「いつも呼びつけてる暁が會いに行くだと？それがおかしいんだ」

社長室にり書モードになっていた駿も呆れて素が出るほどの驚きだ。

「じゃあ、我慢して芹になにかあったら、俺は一生後悔するが、駿は責任取れるんだな？」

「…」

半ば脅しがっている。