《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》閑話3 リーナの特訓
「それじゃあ、始めるわよ」
「はーい!」
おばあちゃんの呼びかけに、私は元気よく返事をしてしまいます。
今日から、久しぶりに新しい聖魔法を教えて貰えることになったので、
私は今、凄く上機嫌なんです!
おばあちゃんの教え方は『基本は教えるからあとは自分で悩みながらどうにかして學びなさい』で、必要以上のことは教えてくれません。
最後にちゃんと教わったのは、帝國に向かっている馬車の中でした。
だから、凄くわくわくしています。
「それじゃあ、始めるよ。その前にこれ」
そう言っておばあちゃんは、教え始めるのではなく。
手に持っていたワンドを突き出してきました。
「これ……おばあちゃんが若いころから使っているワンドだよね? どうしたの?」
おばあちゃんのワンドは、私の長くらいの大きさで先端には魔石がついているのが特徴的です。
「どうしたのって……見ればわかるでしょ。あなたにあげるのよ」
「あ、あげるって、私にはもったいないよ」
「そんなことないわよ。もう、私がこれを使うことはないだろうし……あなたが持っていた方がこの杖も喜んでくれるわ」
「で、でも……」
「け取りなさいって。というか、これをけとってくれないとこれから練習できないわよ?」
れ、練習が出來なくなっちゃうの?
「練習が出來なくなっちゃうのは……」
「それなら、これをけ取りなさい。ほら」
「わ、わかったよ……これから大切に使います」
私はおばあちゃんからワンドをけ取った。
「よろしい。それじゃあ、練習を始めるわよ」
「よろしくお願いします」
「はいよ。それじゃあ、その杖の使い方。まずは、杖の先に付いている魔石に魔力を注いでみなさい」
「この魔石? わかった」
言われた通り、ワンドの先にある魔石に魔力を注ぎこもうと手をかざしました。
「ちょっとお待ち」
「え?」
「魔石に直接れなくても、杖を持っているだけで魔力を注ぐことが出來るわよ。やってみなさい」
どういうこと?
「わ、わかった」
わからないですけど。
とりあえず、言われた通りに杖を持って魔石に魔力を屆けるように意識しました。
魔力が杖を伝って魔石に行くように。
すると、すんなり魔力が杖の中を通過してしまいました。
「相変わらず……あんたは教えなくてもすぐに出來てしまうのね……そうよ。その杖は特別で持ち手の部分の魔力伝導が高く出來ているのよ」
「流石、おばあちゃんのワンド。やっぱり凄い」
「ありがとう。そうよ、普通の杖はこんな機能がないの。だから、聖魔法使いは絶対に杖を使っていないわ」
「へ~。でも、どうしてこの機能が無いだけで聖魔法使いは杖を使わないの?」
シェリーもレオ君に貰った綺麗な杖を持っていますが、あの魔法の威力をあげる能力は凄いと思うんですけど。
「それはね。聖魔法って、魔力の量やきを常に調節していないといけないでしょ?」
「うん」
「で、普通の杖って、威力を強くすることしか考えられてないから、魔法を使いながらの魔力作が難しいというか、無理に等しいのよ」
おばあちゃんが何を言っているのか、ほとんどわかりませんでした……。
兎に角、おばあちゃんのワンド以外の杖は聖魔法に向いていないそうです。
「そうなんだ……それなら、どうしておばあちゃんの杖は大丈夫なの? この魔力伝導が高いおかげ?」
「えっと……一番の要因はこれ」
「この魔石?」
おばあちゃんが指さしていたのは、先端の魔石でした。
「そう、この先端にある魔石が魔力の調節を簡単にしてくれるの。これがあれば、聖魔法で出來ることが増えるわよ」
「へ~」
「何を言っているのかわかっていないわね? まあ、練習すればこの凄さがわかるわ。今からお手本を見せるからしっかり見ておくのよ」
「わ、わかった」
おばあちゃんは、何本かの木にそれぞれナイフで傷をつけるとし木から離れました。
そして、両手を木の方向に向けると集中した顔をした。
すると……全ての傷がみるみる治ってしまったのです。
ど、どういうこと?
「す、凄い……やっぱり、おばあちゃんは凄いね!」
「そうでしょ? リーナも頑張って練習をすれば、すぐに杖を使いながらこれを出來るようになるわ」
杖を使いながら……。
「おばあちゃんみたいに杖を使わないで治すのって……やっぱり難しいの?」
「難しいって程ではないわね。このくらいなら聖魔法を真面目に練習している人なら大人になるころには出來るようになるし。難しいのはその先よ」
「そうなんだ……わかった。とりあえず、杖を使いこなせるように頑張る」
「そうね。まずは、目先の努力から。あなたなら私を越える聖になれると思うから頑張って」
「せ、聖には……」
なれません。
教國から追放されてしまった私が聖になれるはずないんです。
「そんなことは気にしなくていいのよ。その世代で人を治す能力が一番優れているが聖なんだから」
「わ、わかった」
「うん。それじゃあ。わからないことがあったら私のところに來るんだからね? 遠慮しなくていいんだからね?」
おばあちゃんはそう言って、行ってしまいました。
これからは、一人で頑張るしかありません。
「それじゃあ、やってみましょうか」
さっそく、おばあちゃんと同じように複數の木に傷をつけていき、離れた場所に立ちました。
「魔力をワンドに通して……そのまま聖魔法を……」
ワンドを構えながら、魔法を木に向けて飛ばすように意識してみました。
しかし……
「あれ? 駄目みたいですね……」
魔法は飛んで行ったのですが……ほんのしも治っていません。
SIDE:聖
「なんか、もっと助言してあげても良かったんじゃないのかい?」
隣に座っているカリーナが私に向かって聞いてきた。
「そんなことないわよ。ああやって悩みながら自分でにつけるのが一番為になるのよ。実際、私も私の師匠もああやって學んだんだから」
「そうかね……でも、あんな教え方で出來るようになるのかい?」
「出來ないと思うわよ。だから、しずつヒントをあげていくのよ」
「へ~私や爺さんは、そんなチマチマした教え方はに合わないわ」
「でしょうね。あなたたちは常に張り付いて厳しく指導するタイプだもの」
簡単に想像出來るわ。
「そうね。でも、あなたの教え方はリアーナちゃんが真面目だから出來ることじゃないの?」
「真面目じゃなかったら教えてないわよ」
そんな人に教えても意味がないもの。
「あなたの厳しさってまた私と違うわよね」
「そうかしら? でも、リーナみたいな格じゃないと聖魔法は上手くなれないわ」
「そうかい……あ、さっそく失敗したみたいよ」
カリーナに言われて、リーナの方向を見てみると傷を見ながら悩んでいた。
「本當ね。ああやって、どうして出來なかったのかを考えるのが大切なのよ」
これをするかどうかで、長が全然違うんだから。
「なるほどね~。それで、いつヒントをあげるの?」
「あの子が頼って來たらにしようと思っているわ」
「頼って來なかったらどうするんだい?」
た、頼って貰えない?
あ、あり得るかもしれない……。
あの子は真面目だから、私の言いつけを守って自分の力でどうにかしようとして、きっと頼って來ないわ……。
「その時は……何日か様子を見てさり気なくかな……」
「へ~教える前に出來てしまうかもね」
「それは……」
あの子ならあり得るかも……。
「それはそれで、私の孫は天才だって喜ぶわよ」
ちょっと不安になりながらも、私はカリーナに強がってみせた。
SIDE:リアーナ
「どうすれば、あの傷を治すことが出來るのでしょうか……」
私は、傷のついた木々を見ながら一人悩んでいました。
魔力を木に屆けることは出來るのですが、治すことは出來ないんです。
どうして治せないのでしょうか?
「一つだけなら……手でも出來るんですけどね……」
一本の木に手を當てて傷を聖魔法で治してみました。
「これなら出來るのに……どうして?」
何が違うのでしょうか?
「一つの傷を治す時は……傷を包み込むように聖魔法を使えば……そういことですか! わかりました!」
わかりました。
複數の傷を治す時も同じなんです。
それぞれの傷を包み込む……傷に魔力を留まらせればいいんです。
あ、おばあちゃんの言っていたことがわかりました。
普通の杖が聖魔法に合わない理由は、魔法を放ったら魔力を作することが出來ないってことです。
聖魔法は、威力よりもさが重要なんですから。
なんか、すっきりしました。
あとは練習するだけです。
SIDE:聖
「ねえ、リアーナちゃん……何か納得していた顔をしているわよ?」
「……そうみたいね……一回、杖を使わないで傷を治していたんだけど……もしかしてもう気がついた? いや、流石に……」
そ、そんなことは……まさかね?
「そんなに揺しちゃって……リアーナちゃんは何を気がついたかも知れないの?」
「えっと……聖魔法を習いたての人が離れた場所から魔法を使おうとしてやってしまいがちな間違えなんだけど……」
「うん」
「聖魔法ってある程度の時間、傷に魔力を留まらせておかないといけないの。でも、遠くからやろうとすると……屆かせることだけに意識が行ってしまってそれを忘れてしまうのよ」
「それを一回のミスで気がついてしまった……と」
「そ、そんなはずはないわ。私だって気がつくのに一日必要だったんだから」
そうよ。まだ、気がついたって決まったわけじゃないわ!
「それなら、わかっちゃったかもね。だって、リアーナちゃんはあなたよりも天才なんでしょ?」
そういえば……そんな自慢をカリーナにしてしまった……。
「そ、それは……」
「まあ、祖母としてのあなたは孫に教えることが出來なくて悔しいだろうけど。仕方ないわね」
「ま、まだ、気がついたとは決まったわけじゃないわ!」
そう言いながらリーナの方向を見ていると……
リーナは、ワンドを握りしめて集中した顔をしていた。
しばらくして、ワンドの先にあった魔石がった。
「うん……しだけだけど、傷に魔力が留まっているような……どう思う?」
「あれは……気がついてしまったわね……」
私も、傷に魔力が留まっていたのが見えてしまった。
あの様子だと……何日か練習すれば出來てしまうわ……。
「そんな落ち込んでないで孫が長したことを喜びなさいよ」
そうだけど……。
「……私、まだリーナに頼られたことがないのよ……」
教國にいる時から、まだ一度もリーナに詳しい魔法の使い方を教えてない……。
「そうなの? 頼られたいなら練習方法を変えればいいじゃないの」
「それだとリーナの為にならないし……」
「じゃあ、諦めな。自分のことよりも孫のことを考えるのがいいおばあちゃんでしょ?」
「そ、そうね……」
リーナの為……諦めるしかないか。
SIDE:リアーナ
「わかったけど……む、難しい……遠いところだと魔力の作が凄く難しいです……」
このワンドがなかったら、絶対に今のも出來ませんでした。
やっぱり、おばあちゃんのワンドです。
これを使うだけで魔力作が格段に楽になっています。
ワンドなしで、複數の傷を治すことが出來るおばあちゃんは凄いな……。
頑張って練習しないといけませんね。
《三日後》
「おばあちゃん!」
「なんだい? もう出來たのかい?」
「うん。出來るようになったから見てて!」
そう言って、おばあちゃんを引っ張ってきて木に向かってワンドを構えました。
そして、ワンドを通して全ての傷に魔力が行き渡るのを意識して聖魔法を使います。
それからしばらく、傷を魔法で包み込んで留ませることに集中し続けました。
し時間が経ち。
「出來た!」
全部の傷が治りました。
「出來たわね……やっぱり、リーナは天才ね」
「そ、そんなことないもん」
口では否定しましたけど……おばあちゃんにほめて貰えるのは凄くうれしいです。
そんなことを思っていると、おばあちゃんが頭をでてくれました。
なんというか……幸せです。
「よしよし。これからも頑張るんだよ」
「わかった! それじゃあ、これからは治すスピードを速くして……ワンドなしで出來るようになることが目標だね」
「そ、そうね……出來れば私をたよって……」
「私、頑張る! おばあちゃんみたいな聖になるんだ!」
「……それは嬉しいわね。うん、私のことは気にしないで頑張りなさい!」
私のこと?
おばあちゃんを抜かすことを気にするなってことかな?
「うん、頑張る!」
おばあちゃんを越える凄い聖になってみせます!
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