《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》領地を貰います
クラス替えテストも終わり、今日から長期休みだ。
今日は、ヘルマンやフランクとお疲れ會でもやろうと思っていた……んだけど。
昨日の夜に、シェリーとの念話で急遽予定を変えるしかなくなってしまった。
(試験お疲れ様。二人とも手ごたえはどう?)
(えっと……たぶん、この前と同じくらいだったと思うわ)
(私は、前回よりは出來た自信があります)
(お、それは良かった。四年生も二人と同じクラスになりそうだね)
この調子で、卒業まで一緒だといいんだけど……まあ、心配ないか。
二人とも、頑張り屋さんだからな。
(學年一位は余裕ですね。今回も満點ですか?)
(どうなんだろう? 流石に、一個くらいは間違っているんじゃないかな?)
ケアレスミスが一個くらいはあると思うな。うん。
(その発言が余裕ね……)
(そ、そう?)
(まあ、いいわ。それより、二人とも明日から二カ月間くらいちょっと遠くに行きたいんだけど大丈夫?)
(明日から二カ月間? どこに? 何をするの?)
長期休暇を全て使って何をするんだ?
(場所は知らないわ。明日、お父さんに聞いて。何をするって、レオの領地を見に行くのよ)
(領地? あ、領地か……)
そういえば俺、貴族だったっけ。
十歳になったら、領地経営をさせるって言われていたな。
もう、十一歳になっちゃったけど。
(レオくんの領地ですか? それは面白そうですね。私はもちろん行きますよ。暇していますので)
(俺もまあ、暇かな)
フランク達には謝って、お疲れ會は結果発表の後にやることにするか。
(わかった。それじゃあ、明日、城で待っているわ)
(了解。それじゃあ、また明日)
(うん。また明日)
(はい。また明日~)
そんな念話でのやり取りがあって、現在リーナと城に向かっている。
ベルは、事説明して二カ月間の長期休みってことにしておいた。
ずっと俺に付き切りでメイドの仕事をしてくれたからね。
二カ月の休みでも短いくらいだ。
今頃、孤児院に帰っているだろう。
「レオくんと二人で馬車に乗るのは久しぶりですね。レオくんの屋敷を初めて見に行こうってなった時以來ですよ?」
「そうだったかな? 懐かしいな。あれから何年経った? 初等學校にったばかりの頃だから三年くらい前だよね?」
そういえば、あの時も城に向かう途中だったな。
「そんなに前でしたっけ?」
「そうだよ。あ、そうだ、あの約束覚えてる?」
「約束? 何か約束しましたっけ?」
「忘れちゃったの? ほら、リーナを故郷に連れて行くって約束」
確か、故郷に帰ることが出來なくなっちゃったリーナを元気づける為に約束したんだよな。
「そういえば……そんな約束しましたね。覚えていてくれたんですか?」
「もちろん。絶対に連れて行くよ」
約束は守らないとね。
それに、リーナの故郷も見てみたいし。
「ありがとうございます。期待していますね」
リーナはそう言って、ニッコリと笑ってくれた。
「うん、期待して。あ、そうだ。初等學校を卒業した時にでも行こうよ。Sクラスで卒業できれば、魔法學校の試も免除だし。その間に行ってしまおうよ」
確か、半年ぐらいは休みだった気がする。
帰りは転移を使えばいいし、なんとかなりそうだな。
「え? そんなにすぐですか? どうやって?」
「それは、これから考えるさ。その前に、Sクラスで卒業しないとだけどね」
Sクラスで卒業出來なかったら、半年間験勉強だ。
「そうですね。わかりました。頑張って勉強します」
それから城に到著し、久しぶりに皇帝の部屋に案された。
今日はおじさんはいなく、エリーゼさんが部屋にいた。
「久しぶりだね。元気にしていたか?」
「はい。元気にしていました」
皇帝も元気そうだ。
「それは良かった。リアーナちゃんも元気にしていたかい?」
「はい。私も元気にしていました」
「そうか。それじゃあ、本題にらせてもらおう。まずは、レオ君に渡す領地だ。なかなか、レオ君の功績に見合う領地が見つからなくてね。レオ君が十歳になった時にでも渡そうと思っていたんだけど、結局今日になってしまったよ」
そうだったのか。まあ、いきなり子爵に與えるような領地を確保するなんて難しいよな。
「そうだったのですか。それで、僕の領地はどこですか?」
「ああ、場所は、帝國の南西側。丁度、南のボードレール領、西のフィリベール領と帝都との中継地點になっている場所で、帝都有數の商業都市だ。人の出りが盛んな街で、旅人が集まる街だぞ」
なんか、思っていた以上に凄い領地を貰えてしまうらしい。
「そんな凄い場所を本當に貰えるんですか?」
「ああ、その代わり、子爵の領地としてはし狹いがな」
狹い分、質がいい場所を選んでくれたってことか。
「そういうことですか。それなら納得です」
広くても、俺には管理できなそうだから、むしろそっちの方がいいかな。
「それと、領地に手を加えるかどうかは、レオ君に任せる。何もしなくても、あそこなら大金がレオ君のところにってくると思うぞ」
不労所得……。
「そうですか。正直……金には困っていませんし……」
エルシーさんの店から、毎月とんでもない大金がってくるんだよね。
しかも寮生活で、使う機會がないし……。
「そういえば、あのフェルマー商會を乗っ取ったらしいな。確かに、金は有り余っていそうだ。それなら、失敗しても怖くないだろうし、何かしらやってみろ」
乗っ取ってはいないぞ!
いろいろやっていたら、いつの間にかトップが変わってしまっただけだ。
何かやってみろか……。
まあ、二カ月間で出來る限りのことはやってみるか。
「そうですね……わかりました。何をやるかは、あっちに著いてから考えてみます」
「ああ、期待しているぞ。後で、どんなことをしたのか聞かせてくれ」
「わかりました。楽しみにしていてください」
「あ、それと、領地の名前なんだが、好きにしていい。ただし、領地の名前がレオ君の家名になる。ちなみに、ミュルディーンが今の名前だ」
領地の名前?
どうしようかな……。
「領地の名前ですか? 前と同じでもいいんですよね?」
「ああ」
「それじゃあ、ミュルディーンでお願いします」
「いいのか? それが、一生の家名になってしまうんだぞ?」
「あ、それもそうですね……。でも、街の名前を急に変えてしまったら、領民たちが混してしまいそうですし。それに、ミュルディーンがかっこいいと思ったので」
レオンス・ミュルディーン……まあ、大丈夫だろ。
「そうか。まあ、レオ君がいいならいい。後で、正式な書類を送るから、そこにサインしてくれ」
「わかりました」
「あと……娘を二カ月だが、頼んだぞ」
あ、そうだ。よく考えたら俺、姫様の護衛も兼任だった。
「はい。何があっても守り通します」
男なら、これくらいは誓ってみせないと。
ドラゴンの群れが襲って來たとしても、絶対に守ってみせるさ。
「それは頼もしいな。まあ、安全な場所だからそこまで心配する必要はないと思うがな。あ、そうだ、これを渡しておかないと。これに、領地について詳しい報が書かれている。領地に著くまでに目を通しておけ」
そう言って、皇帝に分厚い書類の束を渡された。
うん、移時間の暇潰しにはちょうどいいな。
「わかりました。それじゃあ、行かせて貰いますね」
「ああ、領地経営を頑張るのもいいが、せっかくの休みなんだから楽しんで來いよ」
「わかりました」
「シェリアは、レオ君に頼り過ぎるんじゃないぞ」
「わ、わかったわ」
別に、頼ってくれていいからね?
「それじゃあ二か月後、いい結果を報告しに戻ってきます」
「ああ、楽しみにしているぞ。それじゃあ、行ってこい」
それから皇帝と別れて、城の中を歩いていると前の方からおじさんが歩いてきた。
「あ、レオくん。久しぶりだね。ちょっと大きくなったんじゃない? 領地を貰いに來たんでしょ?」
「うん、そうだよ。これから、そこに行くところ」
「そうか、またしばらく會えなくなるね。それは寂しいな~」
そんなことを言いながら、おじさんが抱きしめてきた。
あれ? おじさんって、そんなキャラだったっけ?
そんなことを思っていたら、おじさんが耳元でぼそっと呟いた。
「今、君には敵が多い。これから二カ月間、絶対に油斷しないこと」
「へ?」
急だったせいで反応できず、変な聲しか出なかった。
「おっといけない。これから、皇帝陛下のところに行かないといけないんだった。じゃあ、リアーナちゃんと姫さまも楽しんできてくださいね」
「「はーい」」
「じゃあ、また」
おじさんは俺に気にすることなく、二人と話したら行ってしまった。
俺に敵が多い? 二カ月間油斷したらダメ?
これから領地に行くのに怖すぎるんだけど。
やっぱり行くのやめようかな……。
まあ、そんなわけにもいかないし……。
「とりあえず、向かうか」
これからのことは……うん、その時の俺に任せよう。
きっと、なんとかしてくれるはずさ。
俺は、現実逃避することにした。
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