《継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》》領地訪問
城を出る前に言われたおじさんの言葉が凄く怖かったから、俺はアンナをにつけて、周りを監視してもらいつつ、馬車の中で皇帝に渡された書類を読んでいた。
(ねえ、本當に周りに怪しい人とか、魔とかいない?)
(はい。今のところはそのような人や魔は見當たりません)
(そうか……。引き続き監視お願い)
(かしこまりました。何かありましたらお伝えします)
(うん、お願い)
こんなやり取りを何度もしつつ、二時間ぐらいかけてようやく皇帝に貰った書類を読み終えることができた。
「ふう、やっと読み終わった」
「お疲れ様。不安な顔をしていたけど、何が書いてあったの?」
「え? 不安な顔してた? そんなつもりなかったんだけどな~」
顔に出てたのか……。
どうしよう……二人を不安にさせたくないし……。
「その反応が怪しいです。それで、どんな領地だったんですか? もしかして何か問題でも?」
流石リーナ……隠し通すのは難しいかな。さて、どう誤魔化そう。
「えっと……前の領主は、五十年くらい前に橫領罪で領地を剝奪されてしまって、もういないみたい。それからは、ずっと國が運営しているらしいよ。なんでも、フィリベール家とボードレル家にとって超重要な場所だから、公平な立場の帝國しか運営が出來なかったみたい」
「なるほど……それは、隨分と大変な場所を貰ってしまいましたね」
そうなんだよね……。もしかすると、権力爭いに巻き込まれてしまう可能もあるからな……。
「まあ、そこまで心配する必要もないんだけどね。不安要素はそれだけだし、帝國が運営していただけあって、管理が行き屆いているいい場所だよ。それに、教國と王國から輸したものがそこに集まるから、世界中のがミュルディーンに集まると言われているくらい、商業が発展している街みたいだよ」
「そうなの? それは楽しみね」
「うん、俺も楽しみだ」
よし、上手く誤魔化せた。
それから二日間馬車で移して、ようやく目的地のミュルディーン市街に到著した。
綺麗な街並みで、いかにも金に余裕がありそうな街だった。そして、一番凄いのが、帝都の商業區に負けないくらい人や馬車の行き來が盛んなことだろう。
行き來する人は、見たじ商人だけでなく冒険者も多かった。
たぶん、國をいで依頼をこなす冒険者たちなのだろう。
先に貰っていた報通りの街……それが、馬車の中から見た自分の領地の想だった。
「綺麗な街ね。將來、ここで暮らすのか……」
「そうでした。私たちもあと數年したらここで暮らすことになるんですね」
「そうだよ。それまでにもっといい街にしておくよ」
魔法學校を卒業してからだろうから……あと六年後くらいだな。
それまでに、出來る限りのことはしておきたいな。
「それは楽しみです。それで、今日はどこに泊まるのですか? 流石に、まだレオくんの家はありませんよね?」
あ、そういえば、まだ教えてなかったんだっけ。
「あ、見えてきた。あれだよ」
俺がそう言って、外に向かって指さすと二人はそっちの方向を向いた。
「「え?」」
俺が指した方向を見て、二人は思わず驚いて聲をだしてしまった。
それはそうだろう……
「噓ですよね? だってあれ……」
俺が指さした方向には、立派な城が建っているのだから。
「そう、ここには城があるんだ。前の領主は、よっぽど馬鹿だったみたいで、有り余る金を使って自分の家を城にしてしまったらしい。これがあったからってのも、貴族にこの領地を渡すことが出來なかった理由の一つなんじゃないかな?」
もし、皇帝に反抗的な貴族がこの領地を手にしてしまえば、帝國と戦うのにいい拠點になってしまうからね。
その分、シェリーと結婚することが決まっている俺はみたいなものだから、この土地を貰うことが出來たのかな、と勝手に推測している。
「ここまで散財していれば橫領がバレてしまいますね」
「逆に、どうしてここまでほっといたのか不思議だわ」
「ちょうど魔王の出現で騒がしかった時期だから、それどころじゃなかったのかもね」
そんな時代でも、これだけ領主が散財することが出來るような領地が俺のになってしまったわけだけど。
「なるほどね……。まあ、結果として、私たちが使えることになったんだから謝しないとね」
「確かに、それは謝だな」
それから城に到著すると、馬車の扉が開いた。
扉を開けたのは、皇帝が先に手配しておいてくれた執事だ。
「はじめまして。あなたが、執事長?」
「はい。執事長のエドワンと申します。これから、どうぞよろしくお願いいたします」
「うん、よろしく。それより、人手は足りてる? この城、広いから管理が大変でしょ?」
「執事、メイドは、今のところ大丈夫です。ただ、料理人があと二、三名しいそうです」
「わかった。後で、帝都の家から連れて來るよ。他に何か困ったことは?」
料理人は転移を使えば、今日中には連れて來られるかな。
人選はサムさんに任せよう。
「いえ、特にありません」
「わかった。それじゃあ、中を見させて貰おうかな」
「はい。案させて貰います」
エドワンさんに案されながら、俺たちは城にった。
この城、外からの見た目だけでも凄かったが、中も凄かった。
もしかしたら、帝都にある城に劣らないくらい綺麗に裝飾されていた。
前の領主はいくらこの城に使ったんだろう……。
「こちらが、レオンス様のお部屋となっております」
俺がこれから使っていく部屋は、一段と豪華に裝飾されていて、いかにも領主の部屋ってじがする。
「うわ~広いわね」
「見てください。眺めが凄くいいですよ」
リーナに呼ばれて、部屋にある窓から顔を出すと、綺麗な街並みを一することができた。
「本當だ。領地を見渡せるね。それにしても、こんな凄い場所を貰ってもいいのだろうか……」
俺、そこまでの功績をあげたつもりはないんだけどな……。
「まあ、貰えるものは貰っておきなさいって。その分、帝國の為に働いてくれればいいから」
俺がし悩んでいると、シェリーがそう言いながら、背中をバンバンと叩いてきた。
「な、なるほど……」
今回の報酬に見合う、これからの活躍に期待しているってことか……。
どうしよう……とりあえず、領地経営を頑張るか。
「ふふふ、シェリーがお姫様の仕事をしていますわ」
「シ!」
「ん? 何?」
「なんでもありませんわ。それより、私たちの部屋も案して貰えますか?」
「はい。こちらの、向かい側にございます部屋が奧様方のお部屋になっております」
奧様方……。
まだ、結婚してないから違うんだけどな……。
まあ、二人は部屋に夢中で気がついていないみたいだから指摘しないでおくか。
「わあ、ここも広いわね。レオが仕事中は、ここでリーナとお話しでもするしかないわね」
あ、そういえば……。
「えっと……仕事中でも、近くにいてくれない?」
「い、いいけど……邪魔にならない?」
「ならないよ。始めの二カ月で出來ることは限られているだろうし、そこまで気にしなくていいと思うよ」
本音としては、おじさんに油斷するなって言われているのに、二人が目の屆かない所にいるのは怖すぎるからね。
「わかりました。邪魔にならない範囲でお傍にいさせてもらいますね」
流石リーナ、細かいことを聞いてこなくて助かる。
もしかすると、リーナなら俺が何を考えているのかバレてしまっているかもしれないけど。
「そこまで気にしなくていいよ。それじゃあ、次の部屋に行こうか」
これ以上この話をしていても、二人を不安にさせるだけだからやめておこう。
後で、おじさんが言っていた『敵』を探し出さないとな……。
「わかりました。次は、寢室です」
それから、エドワンさんに案された寢室は、これまた豪華に飾られた大きなベッドがあった。
なんか、落ち著かなくて寢られなさそうだな。
「こちらが、レオンス様と奧様方が使う寢室となっております」
「わあ、大きなベッドですね。三人で寢ても広いですよ」
「三人で……」
それについては……ノーコメントってことにしておこう。
「えっと……とりあえず、他の部屋も見に行こうか。あ、そうだ! 浴室を見せてよ」
何だかんだ風呂が一番重要だよね。
「わかりました。浴室はこちらの階段で下りた場所にございます」
そう言って、案された浴室はやはり豪華で、とても広かった。
「おお、やっぱり広い! それと、後で改造しないとだな」
ここの風呂も、使い捨ての魔法を使って浴槽にお湯をれているみたいなので、改造が必要だろう。
「あ、溫泉にしてしまうあれですか?」
そう。帝都にある家でもやったあの改造だ。
「あれ? なんの話?」
そういえば、あの時シェリーはいなかったな。
「レオくんの創造魔法で、溫泉が流れるお風呂にしてしまうことができるんです。疲れが取れたり、魔力が回復したり、効果があったり、凄いんですよ」
「効果!? それは凄いわね。お風呂が楽しみだわ」
「改造するのに魔石が必要だから、後で料理人を連れて來る時にでも家から持って來てからだよ?」
「それじゃあ、今日の夜までには出來るのよね?」
まあ、一瞬で移できるからね。
「うん、出來ると思うよ。それじゃあ、午後にでも一回帰るか」
てことで、午後は城の改造をしようかな。
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